貯蓄から投資へ:NISAの概要と、活用法

・量的緩和で起きること

黒田日銀総裁は先週開かれた全国信用組合大会で、「量的・質的金融緩和の効果はしっかりとあらわれてきており、金融市場や経済・物価には前向きの動きが広がっている」とし、「予想物価上昇率が上昇しているので、実質金利が低下、民間需要を刺激している」との見方を示した。金融市場ではこの間、「株高や円高修正の動きが顕著になったほか、日銀による巨額の国債買い入れによって長期金利が強力に抑制されている」と語ったようだ。

また、「家計・企業の両部門で所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働く下で、景気は緩やかに回復している」とし、「生鮮食品除く消費者物価指数が6月にプラス転換した後も伸び率を高めており、個人消費が底堅く推移する下で、幅広い品目に改善の動きが見られるようになっている」、「2%の物価安定目標の実現を目指し、必要な時点まで緩和政策継続する」と述べた。

大量の通貨供給で間違いなく起きることは、その通貨の価値が下がることだ。ところが、価値とは相対的なもので、何に対して安くなるかは分からない。通貨安を反対から見ればインフレだが、何がインフレになるかは分からない。

はっきりしているのは、通貨安はその通貨での資産を持つ者にはネガティブで、負債を持つ者にはポジティブなことだ。貸し借りした時の通貨価値よりも、返済時の通貨価値が低いからだ。つまり、国債の発行者には有利で、保有者には不利となる。

大量の通貨供給のよる円安で、ドル建てで見た日本の個人の金融資産の2割が失われた。もっとも、円を国内だけで使うならば問題はない。そこでの問題はインフレ率を見ればいい。つまり、日銀の金融緩和により、円建て金融資産の価値は少なくとも2%減価する。消費税率引き上げを加味すれば、金融資産の価値は更に低くなる。これは今後、間違いなく起きることだ。

ここで、金融資産の減少を防ぐには、2%のインフレ率を超えるリターンが望める資産を持てばよいことになる。もっとも、未曾有の金融緩和に警鐘を鳴らす人々はハイパーインフレを危惧しているので、2%のリターンでは心許ないかもしれない。増税もある。そう考えると、円建て債券など確定利付き商品や、預金では、資産の減価を食い止めることはできない。数パーセントの減価など関係ないような資産家ならば問題ないともいえるが、数パーセントの減価が生活を脅かす人ほど、真剣にリターンを求める必要がでてきたのだ。

金融緩和の意図は、雇用拡大を伴うような景気拡大だ。通貨安をつくれば、何かの価格は上がる。低利の資金とインフレ期待が景気拡大に結び付く可能性は無きにしも非ずだ。だが、そのためには、企業がその気にならないと駄目だ。

一方、通貨安をつくれば、何かの価格は上がる。ここまでは間違いがない。その時、株式や不動産などの資産価値が上がれば、資産効果で景気拡大に結び付き、雇用拡大、給与増につながるかもしれない。そこまで待ってもいいが、資産価値の上昇をそのまま享受してもいいのだ。

先週の木曜日、金曜日と連日で最高値を更新したS&P500株指数などの実例が示しているように、量的緩和が株高に結び付く可能性は極めて高い。

・貯蓄から投資へ

NISAは諸官庁や金融機関の各業態の意向を反映した玉虫色の制度で、当局、業者、投資家のすべてにとって中途半端なものに見える。制度の狙いは、インフレ政策を遂行中の政府が、諸外国に比べて大きく貯蓄に偏った家計の金融資産を、少しでも株式に振り向けようとするものだ。
参照:家計に占める現金・預金の国際比較
図

投資家にとっては、新規投資上限100万円で、再投資不可という使い勝っての悪いものとなった。投機は駄目、長期投資のみ、しかし、貯蓄商品を脅かさない金額でということだろう。あるいは、数パーセントの減価が生活を脅かす人への、天から降ろされたせめてもの蜘蛛の糸とも考えられる。

一方で、非課税となる配当や譲渡益に上限額がないのは大きなメリットだ。高配当を続けながら、値上がり期待の持てる銘柄なら楽しみが増える。
参照:ヤフー・ファイナンス配当利回りランキング
http://info.finance.yahoo.co.jp/ranking/?kd=8&mk=1&tm=d&vl=a

スタートが来年、最大のメリットを享受するには、最長14年間保有ということなので、現時点で固有銘柄の推奨は差し控えたい。ここでの注意点は財務内容かと思う。長く持てる銘柄を探すことが肝要だ。投機とは別勘定で、積極利用したいものだ。

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