ユーロ危機の終息~欧州が先進国主導世界経済回復の機関車に~

次いで第二の変化について。PIIGSの金利急上昇により民間資金の還流が停止、その結果、南欧諸国の財政は破綻し、ユーロが崩壊するという可能性もあった。そのような中、欧州中央銀行を介在とした公的ファイナンスの仕組み(セーフテーネット)が整えられたことよって、ユーロ危機が食い止められた。ヨーロッパにおいて、ターゲット2(Trans -European Automated Real-time Gross Settlement Express Transfer System)と呼ばれる銀行間の決済システムが完成し、民間資金の南欧に対するファイナンスが滞った場合、ECBを経由したユーロ加盟国の中央銀行間の短期債権のやりとりを通して、北から南へ融通する公的ファイナンスが代役を果たした。図表9は停止した民間の対南欧融通に代わって、ドイツ連銀が一手に南欧融通を肩代わりしたことがわかる。こうして短期の南欧への流動性供給はターゲットでなされたが、南欧からの本格的な資金逃避(南欧国債の売り崩し)が起きればそれは困難になる。そこで長期ファイナンスの保障により市場心理を鼓舞する必要が生まれる。EFSM(欧州金融安定化メカニズム)、EFSF(欧州金融安定ファシリティー)、ESM(欧州安定化メカニズム)はその目的のために創設された。特に2012年のECBによる南欧諸国国債の無制限買い入れレプログラムOMT(Outright Monetary Transaction)の創設が劇的に市場心理を転換させた。OMTは未だ発動されていないが、抑止力を発揮し、発動せずとも畏怖することで政策目的が達せられている。今や、長期金利が低下し、南のリストラ財政再建も進展したため、民間の資金チャンネルが復活してきた。今後は南欧諸国独自のファイナンスも可能になるのではないか。

★図表9

このように見てくると、ユーロ体制は大きく変革強化されてきていることがわかる。欧州問題の権威田中素香中央大教授がかねてから指摘してきた、ユーロ体制の二つのアキレス腱、①垂直通貨統合の問題(二極分化を推し進めるメカニズム⇒破綻必至のメカニズム)、②セーフテーネットの不在、が大きく是正されたのである。もちろん今後も以下に述べる危機要因は消滅しない。しかし、各国の改革弛緩や財政悪化があれば直ちに長期金利が上昇し、各国に政策変化を求める圧力が生じる。その結果失われる民間の資金融通は、ECBを通じた公的セーフイネットに代替される(改革の約束を前提として)。かくしてユーロ体制は均衡回復のメカニズムを内在化したと言えるのである。

(5)欧州連合の展開、欧州合衆国への道のり

欧州統合の歴史は大戦の悲劇に対する反省から出発している。過去60年の歩みを振り返れば着実に前進してきたことがわかる。①1951年・・・欧州鉄鋼石炭共同体、②1957年・・・EEC(欧州経済共同体)、③1979年・・・EMS(欧州通貨制度)トンネルの中のへび±2.25%、④1993年・・・EU(欧州連合)発足(1992年マストリヒト条約)今年クロアチア加盟で現28か国、⑤1999年・・・ユーロECB(欧州中央銀行)発足、今年ラトビア加盟で現18か国、等が画期であった。

今後の展望としては、①欧州銀行同盟創設⇒SSM(Single Supervisory Mechanism・・・単一監督メカニズム)決定、SRM(Single Resolution Mechanism・・・単一破綻処理メカニズム)も合意、②財政同盟締結、を通して最終的には完全なる国家統合、③ヨーロッパ合衆国United States of Europeを目指している。今回のユーロ危機の経験は更なる一体化に向けての大きなステップボードとなるだろう。

もちろん常に危機の種は存在し続けている。①改革遅延するフランス⇒ 不均衡拡大、負け組なのに有利な金利、②政治不安のイタリア、③ドイツの反成長メンタリティー⇒ 低実質金利、有利な通貨、流入する資金、改善する財政を活用し成長、ユーロ全域に需要を提供できるか、など。ユーロの最大の受益者であり豊富な成長余力を持つドイツが、一段と指導力を高めたメルケル政権の下で機関車役を果たすことが期待される。

(6)市場の欧州評価は依然危機メンタリティー=再評価の余地、投資チャンス

マーケットはまだ、ユーロ危機が再燃するのではないかと懸念し、ヨーロッパ諸国の株式に対しては懐疑的な見方が根強い。しかし、ドイツ、フランス、イギリスなどの株式は、米と比べたら株価は割安に放置されている。主要国のPBR(8月末)を比較すると米国の2.4倍に対して英国1.8倍、ドイツ1.6倍、フランス1.3倍、イタリア0.9倍、日本1.2倍と割安さは顕著である(図表10)。株式益回りマイナス実質金利でリスクプレミアムを比較してみても(8月末)、米国の5.9%に対してドイツ8.5%、英国8.4%、フランス7.1%、日本7.5%と割安感がある。

よって、ユーロ危機が完全に過去のものになったということが市場のコンセンサスとなれば、ユーロとヨーロッパの株式の再評価が行われる可能性があり得るだろう。

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