ユーロ危機の終息~欧州が先進国主導世界経済回復の機関車に~

(3)政治はユーロ遠心力から求心力へ

以上の変化は政策の大転換によってもたらされた。2010年ユーロ危機勃発時から、ドイツ・北欧諸国と南欧諸国の双方で著しい変化が起き、ユーロ圏内で決定的に高まっていた遠心力が求心力に変わった。PIIGSと言われた南欧諸国は2009年までのユーロプレミアムの存在(低い実質金利、ユーロ圏という信用とプレゼンス)、域内市場の利用により、刹那的好況を享受してきた。しかし危機の勃発で資金調達が困難となり、財政改革とリストラが不可避となった。南欧諸国では軒並み政権が交代し、放漫経営から改革緊縮へと政策のかじ取りが転換した。

南欧諸国の政策転換によりドイツ・北欧諸国の態度も大きく変わった。改革なくしては支援なし、ギリシャ等脆弱国のユーロ離脱もやむなしとの姿勢から、ユーロ維持が最優先との姿勢に変わった。元々ドイツはユーロ圏体制の最大の受益者でもあった。ドイツ企業はユーロ全域に商圏、金融支配権を拡大させ、またユーロという割安な通貨により対外競争力を強化させてきた。ユーロが崩壊すれば経済成長の屈折と膨大な金融不良債権と財政コスト負担を余儀なくされる。したがって冷静に考えれば、ユーロ強化がドイツの国益であったわけで、当初国民を支配したポピュリスト的反ユーロ主張がメルケル政権の忍耐強い対応により一掃された。

こうした展開は1992年のポンド危機と著しく異なっている。ポンド売り投機に勝利し、英国のEMS(欧州通貨制度)からの離脱を誘導したジョージ・ソロス氏など多くの投機家は、今回もユーロ崩壊不可避とユーロ売りを仕掛けたが、柳の下にドジョウは二匹はいなかった(今回は失敗した)。今回なぜ投機家は負けたのだろうか。英国とPIIGSの相違が指摘される。英国は十分なる産業基盤を持ち、米国という価値観を共有する同盟国も存在している。ユーロ結束か米英の大西洋同盟か、コウモリ的存在の英国には、EMS離脱のメリットが存在していた。しかしPIIGSの場合、ユーロの一員というプレミアム・ステイタスを失うことは、致命的経済悪化をもたらす。痛みを甘受して財政再建と改革を推進し、ユーロに残留する以外の選択肢はなかったと言える。それは支援するドイツにも言える。それは通貨同盟としてのユーロがすでに十分なる経済実態を構築していたことの証左と言えるのではないか。

(4)ユーロ危機終息の必然性

こうした安定化は一時的なものであり、手綱が緩められれば再度危機が再燃する、との警戒論が根強い。しかし危機再来の可能性はまずなくなったのではないか。ユーロ危機を引き起したメカニズムが大改革されたからである。2009年までのユーロは不均衡の拡大発散を余儀なくさせるメカニズム(ブレーキ、規律が働かないメカニズム)であった。現在は、不均衡は自動的に調整され収斂するメカニズムとなっている。新しいメカニズムのカギは①金利格差の導入による市場圧力、②ECBを経由した公的セーフテーネット(金融チャンネル)の創設である。

先ず、第一の変化について。図表6に見るように、2009年まではユーロ圏各国の長期金利は主要国の物価上昇率の著しい格差にも関わらず、一律だった。体質の悪いインフレの南欧諸国では実質金利が著しく低くなり、その低い実質金利により過剰な投資が行われ、さらに債務を拡大させながら経済を成長させるという不均衡拡大の悪循環が続いた。しかしギリシャショック勃発により、各国の長期金利がばらばらになり、南欧諸国(ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア)の金利が急上昇、それらの諸国の実質金利が著しく高くなった。図表8はドイツと南欧代表のスペインの実質金利推移を見たものであるが、2009年を境に立場が一変していることがわかる。2009年以前はドイツの実質金利は著しく高く、スペインは著しく低かったが、2010年以降はスペインの実質金利が急上昇し、ドイツはマイナスまで低下した。PIIGSは高実質金利⇒資金調達難⇒金融危機の勃発、という経路を経て財政赤字の削減とリストラを余儀なくされたのである。

★図表6-7

★図表8

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