2013年9月2日時点での主要市場見通し

シナリオの背景

・8月は、新興国に対する懸念がさらに進み、シリアに対する米国による軍事介入の可能性も強まったため、新興国市場で、株価の下落や通貨の下落が進んだものが多かった。
・8月月間の株価指数騰落率ランキング(現地通貨ベース、7/31に対する8/30の騰落率)をみると、ワースト3がトルコ(イスタンブールナショナル100、9.52%下落)、タイ(SET指数、9.05%)、インドネシア(ジャカルタ総合、9.01%)であった。同様に外貨の対円相場の騰落率ランキングをとると、ワースト3はインドネシアルピア(8.02%下落)、インドルピー(7.84%)、トルコリラ(4.82%)となる。

・その一方で、国内株価は、日経平均が月間2.04%下落はしたが、悪材料が目白押しの割には底固かったとも言える。また通貨については、英ポンドが上昇率トップ(対円で2.26%上昇)で、米ドルも0.3%上昇した。ブラジルについては、ブラジルレアルは騰落率ランキングでワースト10に入っている(4.28%下落)が、ブラジルボベスパ指数はベスト10入りしている(3.68%上昇)。世界の全ての市場が混乱のなかにあったとも言い難い。

・このように、新興国中心の株価・通貨の下落となった理由は、
①タイの実質経済成長率(前期比ベース)が、1~3月期に続き、4~6月期もマイナスになるなど、新興国の経済成長が、期待したほどではなさそうなこと(とは言っても、新興国は、先進諸国より経済成長率は全般的には高い)と、
②エジプトの政情の不安定化やシリアに対する米国の軍事介入の可能性などにより、新興諸国ならではのリスクが再認識されたことであると考えている。こうして、リスクはやはり高いが、期待したほどリターンがなさそうだ、となって、世界の投資家が新興国から資金を引き揚げ始めた(少なくとも買いを減らした)わけだ。

(図表1)

・こうした新興国に対する投資意欲の減退を、全て米国の量的緩和縮小で説明しようとの論が多過ぎる。当レポートでは何度も述べているが、経済に出回っている資金量を測るM2を、中央銀行が散布した資金量であるベースマネーで割った比率は、(日本もそうだが)米国で大きく低下している(図表1)。すなわち、米連銀が資金をばら撒いたほどは、米国はカネ余りにはなっていないのである(※1)。こうした事実に反し、米連銀がばら撒いたお金が米国内であふれかえり、投資先を求めて新興国になだれ込んでいたが、米連銀が量的緩和を縮小するので、米国内で資金があっという間に蒸発し、新興国から米国に資金が逆流する、とでも言いたげな議論を展開するのは、極めて疑問だ(※2)。

・米国の量的緩和の縮小(米連銀が購入する債券の金額の減額)自体については、9/17(火)~18(水)のFOMC(連邦公開市場委員会)から開始されるかどうかは、予測しにくい(五分五分より可能性が高いとは予想している)。しかし9月からの減額開始とならなくても、10月(10/29~30)あるいはその次の12月(12/17~18)から減額開始となる可能性は極めて高い。9月か、10月か、12月かによって、新興国や米国の株価、債券価格、米国経済の方向性が異なることはありえないだろう。いずれは量的緩和を縮小するのだ、と見込めば、FOMC毎にいちいち右往左往するのは、滑稽だ。
・また、そもそも米連銀は、量的緩和自体はしばらく継続するのであって、その金額を徐々に減らすに過ぎない(資金は引き続き散布し続けるが、散布する額を絞って行くに過ぎない)。バーナンキ議長のたとえを借りれば、車のアクセルを緩めるだけであって、ブレーキを踏むわけではない。この点からも、新興諸国市場の軟調展開の主要因を、米国の量的緩和縮小である、とするのは、おかしな議論であると言えるだろう(ただ、それでも、量的緩和縮小は新興諸国株・通貨の下落の「口実」にはされ続けるだろう)。

※1 M2はマネーストック統計の一種で、現金+当座預金+普通預金+定期預金。現金や預金の形で、経済全体に出回っているお金の量を測る。ベースマネーは、中央銀行が撒いたお金の量を測る統計で、銀行券(中央銀行が発行した紙幣の残高)+民間銀行が中央銀行に保有している当座預金の残高。
ちなみに日米のマネーの前年比伸び率(2013年7月時点、カッコ内は6月時点)は、
日本~ベースマネー:37.6%(35.9%)、M2:3.7%(3.8%)
米国~ベースマネー:24.3%(22.3%)、M2:6.9%(6.8%)
※2 先日、あるセミナーで、参加者の方から、「米国の投資家は、新興諸国が魅力的で投資をしたくて仕方がないのに、連銀に資金を吸い上げられてしまうので、泣く泣く新興諸国株を売っているのですよね」という質問をいただいた。こうした誤解が生じてもしかたがないような、「カネ余り中心主義」的な報道が多過ぎると言えよう。

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