シリアの地政学的リスク

・標準偏差

アサド政権が自国の一般市民に対して、化学兵器を使用した確率はゼロではない。しかし、イスラム諸国で水着審査を含むビューティー・コンテストを企画するようなもので、膨大なリスクを考えれば偏差値の両端ぐらいの確率でしか起こらない。一方、「アサド政権による化学兵器の使用は、英米仏に対する事実上の宣戦布告に等しい」ことを利用したい勢力が化学兵器を使用した確率は常識的にははるかに高い。偏差値的にはど真ん中に近い。

例えば、反政府軍が使用して政府のせいにすれば、米軍を味方につけることで形勢は一挙に逆転し、自らが政権を担う可能性が高まる。このことは、仮に政府軍が使用したとすれば、政府軍の中に政権を狙う反アサド政権勢力がいる確率が高いことを意味する。仮にアサド政権が使用したとすれば、政権内に反アサド大統領がいる確率が高い。つまり、アサド大統領本人指示による化学兵器の使用は、自国民を含め全員を敵に回す自殺行為なのだ。あり得ない程の確率でしか起こらない。

一方で、私などはなぜ米軍がこれまでアサド政権を「放置」してきたのか、今までは「謎」だった。シリアのアサド政権はバアス党による政権だ。イラクの前フセイン政権もバアス党だった。米軍が事実とは異なる「フセイン政権による大量破壊兵器所持」の理由でイラクに侵攻し、大量破壊兵器を発見できないにもかかわらずフセイン大統領を処刑した時に、イラクを支援し続けたのがシリアのアサド政権だった。従って、今回の「アサド政権による化学兵器の使用」を米国が発表したことは、私にとっては「謎が解けた」思いだ。米国は時期が来るのを待っていただけというのが、私の印象だ。

上げ下げの材料を市場で言われているそのままに受け入れる人は、おそらく相場が分からなくなるかと思う。同じように、メディアの報道などで言われていることをそのまま受け入れていれば、ますます世界は分からない。特に、英米メディアが好意的でない、アラブ人が何を考えているかは全く分からない。

もちろん、私にもアラブ人だけでなく、世界も相場もある程度しか分からないが、どう考えても理屈に合わないことは分かる。標準偏差の両端のことは分からないが、真ん中辺りのことは分かる。私の理解では、有史以来、古今東西、人間はあまり変わらない。いまだに古代の数式や哲学を用い、文学に感動する。おそらく、有史以前から、人間の感情や行動は本質的には変わらないのではと疑っている。哺乳類も、動物としての標準偏差のど真ん中辺りのことでは、あまり変わらないかもしれない。痛みや悲しみ、恐怖などは共通ではないかと思う。

米軍によるイラク攻撃を、大量破壊兵器がでっち上げだったにも関わらず支持する人々は、それでもフセイン大統領は専制君主だったと言う。しかし、民主化された今のイラクは、もはや国家の体をなさず、毎日のように爆弾テロで多数の死者がでている。イラク国民にとってどちらが幸せだったのかは分からなくても、イラク国民が自身で現状を選び取ったのではないことは明らかだ。

同じように、米軍によるシリア攻撃は、内政干渉でしかない。私には誰がシリアで化学兵器を用いたのかは分からないが、米国は内政干渉をより効果的に、大義名分を持って行うために、それを利用しようとしているのだ。

・フラクタル

相場で利用するチャートは、フラクタルな性質を持つ。フラクタルとは自己相似形のことで、年足チャートも、月足チャートも、週足、日足、時間足、分足も、フラクタルに上げ下げし、同じようにトレンドをつくる。

国の行動は、人間の集団の行動だ。その行動の意味が分からない時、フラクタルにズームイン、ズームアウトさせることで、行動の理由や対処法が分かる場合がある。

人は他人の行為が気にかかる。自分の価値判断に他人が合わないことをしていると不愉快で、しばしば忠告や矯正したくなるものだ。この場合の他人は自分以外のすべての人々。家族や友人、知人、上司、同僚、部下、隣人、道を歩く人、運転する人、電車に乗る人などすべてを含む。人は善意であれ悪意であれ、他人に干渉するのが好きなのだ。私自身は処世のために、他人の良いところを見るように努めている。私に他人を変える力などないので、すべてを受け入れ、良いところを見ることで、不愉快さが減る。自分の悪いところを知っているだけに、感謝の気持ちすら起きてくるのが不思議だ。

同じように、どの国も多かれ少なかれ他国を干渉する。強国は強く干渉する。最強国は最も強く干渉する。個人と違うのは、ほとんどの場合そこには善意も悪意もなく、利害だけが存在する。最強国の干渉に反対する国々も、追随する国々も、それぞれが利害を抱えている。

時には政府が考える自国の利害と、国民が考える自国の利害とはすれ違う。英国政府は望んでいたシリア攻撃を議会に否決され、国民の意思を尊重すると発表した。

ロイターとイプソスが30日公表した調査によると、米国でも半数以上がシリア内戦への介入に反対している。それでもアサド政権の化学兵器使用疑惑が明るみに出た後では、介入への支持が増えた。

シリア内戦に米国は関与すべきでないとの回答は約53%と、先週の60%から低下した。行動を起こすべきとの主張は20%にとどまったが、先週の9%から大幅に増加した。アサド政権が市民に対して化学兵器を実際に使用したなら米国は介入すべきとの回答は26%と、先週の25%から増加した。また、44%が化学兵器の使用が事実でも介入すべきでないとした。先週は46%だった。

一方フランス政府は、英議会の動議否決を受けた後も、シリア攻撃に参加する可能性を示唆した。

・地政学的リスク

私がここで言う地政学的リスクとは、先進国の証券市場における価格の上げ下げに関するリスクだ。「426人の子どもを含む1429人の市民が死亡」している時に、善悪ではなく、利害を語ろうとしている。そう自分で認識することは辛いが、プロとして前に進む訓練を受けてきた。ご容赦願いたい。

どんな些細なことにでも、そこに深刻な事情を抱えた人がいる。人の生死に関してはなおさらだ。とはいえ、誰しも身近な人の死を乗り越え、来るべき自身の死を覚悟して生きていくしかない。

私は、あえて、偏差値やフラクタル、水着審査を含むビューティー・コンテストなどという例えを持ち出して、メディアでの痙攣している映像と、アサド政権を結びつける「操作」から離れ、事を客観視しようとしている。情に流されると、真実を見失う。

総合的にみて、北アフリカから中東にかけての、米国の戦略が破たんしているとは思えない。むしろ、エジプト、シリアなど、米国の思惑通りに事が進んでいるようにさえ思える。つまり、証券市場が地政学的リスクで上下している部分は、ごく表層の部分だけなのだ。夏休みの薄商いが上げ下げを増幅しているかと思う。

私は米株、日本株の上昇トレンドは変わらないと見ている。

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