日中の相互依存 強化か離反か‐対外直接投資の分析から‐

2、ASEAN向けも増加傾向

 ASEAN向け投資も増加傾向にある。日本の対ASEAN投資は60億㌦~80億㌦で推移していたが、2011年には196億㌦に急増した。2012年には107億㌦に大幅減少したが(タイ洪水の影響)、それでも従来より高水準である。

 ASEAN向け投資の拡大は3つの要因がある。第1は「チャイナプラスワン」である。中国の人件費高騰や日中の政治的緊張の高まりによる政治リスクから、進出先を中国以外に分散する企業があり、ASEANはその受け皿になっている。
 第2は「タイプラスワン」と呼ばれる動きである。ASEANの先発国・タイも人件費の高騰がみられ、一方、メコン流域の物流網の整備が進んできたため、タイからラオス、カンボジア、ミャンマーに生産拠点を分散する動きが出ている。
 第3は、2015年のASEAN経済統合をにらんだ動きである。

 いずれにせよ、ASEAN向けの投資は活発化の方向にある。当面のトレンドであろう。この動きは2013年に入って加速気味に推移している。表3に見るように、2013年上期の対ASEAN向け投資は約1兆円と、半期で昨年の1年間の実績を上回った。(注、表1はドルベース、表3は円ベースの表示である)。

 ただし、直接投資の数値は、短期的には不安定、不規則な動きを示すことが多い。表1及び表3に示すように、ASEAN向けは2011年には大幅増を記録し、翌年は反動減もあって減少した。表3に見るように、2013年上期の前年同期比が4.2倍(㌦ベースでは3.5倍)と急増したが、これは2012年上期が2011年の反動減とタイ洪水による減少で大幅に落ち込んだための反動増の側面もある。仮に2011年下期と2012年上期を均したものと比較すると、2013年上期は50%増である。

表3 日本の対外直接投資(2003年上期)

 2013年上期の日本企業の海外投資は、ASEAN進出の増加を印象付ける。今後のトレンドの前兆をなすものであろうか。「脱中国くっきり」(産経)、「ASEANシフト鮮明」(日経)というコメントが多い。
 中国リスクの存在、東南アジアへの投資回帰という底流は確かにある。「脱中国」説は、嫌中論からの“牽強付会”ではなく、客観的なものであろうか。また、日中の相互依存の後退は、果たして日本の利益になるであろうか。政経分離を期待したいところである。

3、撤退企業数 中国vs.ASEAN

 中国からの撤退企業のニュースが多いが、実態はどうか。表4は、経済産業省の調査結果である。日系企業はASEAN諸国からも、NIEs諸国からも撤退が見られ、特に中国からの撤退が増えているという事実はない。市場の見込み違いなどから、企業が進出先から撤退するのはビジネスにとって日常的なことである。

 政治リスクの高まりによる脱中国論の割には、中国からの撤退企業は少ない。むしろ、国の経済規模の割には、撤退数は少ない。企業には冷静な判断があるのだろうか。

表4 日系企業の撤退現地法人数

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