金融緩和政策のリスクとリターン

・金融緩和政策のリスクとリターン

先週、英中銀は失業率が少なくとも7%に低下するまでは政策金利を史上最低水準に維持すると表明した。米連銀は失業率が6.5%以下、インフレ率が2.5%以上になるまでは超低金利政策を続けるとしている。日銀も異次元緩和継続を表明している。

黒田日銀総裁は8日の金融政策決定会合後の記者会見で、政府が検討している2014年4月の消費税引き上げに関して「必要があれば金融政策の調整はもちろん行う」として、景気が悪化し物価目標の達成が危うくなった場合、追加の金融緩和を実施する考えを示した。

黒田氏は消費税引き上げを見送った場合の影響について、「財政規律のゆるみなどの懸念が長期金利の上昇に跳ね返ると、金融緩和の効果は減殺され、間接的に金融緩和の効果に悪影響を及ぼす」と、指摘。見送り論をけん制した。

景気の現状に関しては「所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働き始めているのは確実」との認識を示した。

私は黒田日銀の異次元緩和を支持するものだが、上記の発言は突っ込みどころが満載だ。財政の悪化とは、歳入に見合わない歳出を意味する。「財政規律のゆるみ」は、政策担当者のゆるみであって、どんなに国民が負担しても、「ゆるみ」は是正されない。他国の財政でも、我々の家計でも、そういったゆるみは、通常、歳出削減によって是正されるものだ。規律と歳入(税収)とは、基本的に無関係だ。

また、これまで「所得から支出へという前向きな循環メカニズム」が働かなかったのは、所得減の環境下で支出増を控えてきた「家計の規律」がゆるみなく働いてきたためだ。若者たちも、安定雇用、所得増が見込めないなかで、結婚や出産を先送りにし、車なども買い控えてきた。マスコミはそういった「規律」を、草食化などとも表現した。

前向きな循環メカニズムは、安定雇用、所得増が達成されて期待できるものとなる。そうでない支出増は「規律のゆるみ」でしかない。規律のゆるみで財政が悪化したように、規律がゆるめば家計も破たんする。ポイントは所得増が達成されるかどうかなのだ。そして、そのカギは政府や日銀の政策が握っている。

名目の所得増を浸食するのはインフレと、増税だ。量的緩和は通貨安を意味するので、相対的に何かの価格は上がる。モノか資産のインフレが来る。当面はどちらも来ている状態だ。つまり、インフレ率を上回る所得増がなければ、「前向きな循環メカニズム」は働かない。この状況下で、予想インフレ率より確実に可処分所得を減少させる増税で追い打ちをかけるタイミングかどうかは、慎重になって当然なのだ。私は経済成長による歳入増で、増税の必要性そのものがなくなることを望んでいる。財政でも家計でも、収入増を図ることが、再建への常道だと思うからだ。

黒田氏の発言を論理的に分析すれば、政府による「財政規律のゆるみ」を国民に負担させ、負担増に苦しむ「家計規律のゆるみ」によって財政再建を図るものと理解することができる。これでは、緩みっぱなしだ。

それでも、私は黒田日銀の異次元緩和を支持している。いったん緩んだ箍を一朝一夕に締め直すことは困難だが、量的緩和(通貨安、円安)による所得増は短期間で達成できる「劇薬」だからだ。低体温症に至っていた日本経済にはこれしかないほどの「良薬」だったかと思う。米英の中銀のように、金融緩和は効くまで続けることが望ましい。

効くまで続ければ、経済成長、業績拡大、雇用増大により、歳入増と社会保障費の削減が同時に達成される。前向きな循環メカニズムが、規律を保ったままで達成される。これがメリットだ。

通貨の過大供給による最大のリスクは、インフレだ。所得増を超えるインフレとなれば、可処分所得が減少し、やがては景気後退に結び付く。資産インフレの場合は、持つ者の所得は増大するが、持たざる者との格差が拡大する。それでも、持たざる者も安定した職と、所得増を得られる可能性が高まるので、低体温症による経済死よりは、余程いいかと思う。

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