転機に立つ中国経済~異常投資の清算を迫られる~

もう一つが単純労働と熟練労働の賃金格差の縮小である。農村から供給される労働力は単純労働であり、当然、何のスキル(技能)も持ち合わせていない。そのような労働者の賃金も、労働需給によって大きく上昇してきた。

現在中国は、この1960年の日本と類似した経済状況にあるが、投資から消費への転換、国民の賃金上昇が、持続的な消費を可能にすることができるかどうかの分岐点に立っている。

★図表15-16-17
 

第六章 転換を阻む前近代的な仕組み

その判断基準となるのが消費者物価である。日本と同じように4%の物価上昇率が定着すれば、中国の賃金上昇がそれだけあり、国内の消費需要が上昇する期待が持てる。そのような期待を抱かせたのが、3年前までの賃金の急上昇であった。いよいよ中国でも、賃金上昇で企業のコストは高くなるものの、中国の人々が豊かになる環境が整うかと思われた。しかし、その物価上昇率も急速に低下し、このところ2~3%で推移している。農民工の不足から沿岸都市部での賃金が上昇し、企業の採算が悪化しているにもかかわらず、なぜ日本のように4%の物価上昇が定着しないのか。そこには、中国特有の労働資源配分の大きなミスマッチがある。都市の単純労働者は不足しているのに、戸籍制度が障害となって、農村からの単純労働者が都市に入ってこられない。この結果、都市では賃金上昇が起こる一方で、農村では依然として労働力余剰が続いているのだ。

戸籍制度に代表される、中国に残された前近代的な仕組みによって、有効な労働力の活用ができないまま労働分配率も上昇せず、都市と農村の格差も縮小しない。こうなると湾岸部では賃金上昇により競争力が急速に落ち、貿易黒字が減少する局面になってくる。当然、企業も湾岸部ではなく、投資先を内陸部か他の国へとシフトせざるを得なくなってくる。ただ、いくら内陸部に投資を呼び込んでも、湾岸部とは違い、加工貿易や海外市場への輸出チャンネルの建設は容易ではない。内陸部では、輸出主導の経済成長は難しく、投資に依存する経済成長にならざるを得ない。しかも、その投資の原資は、湾岸部の経済成長の成果を、内陸部にシフトする形で行わなければならず、明らかな利害対立も起こってくる。かつての日本のように、投資主導の経済から消費主導の経済へと、簡単にはシフトすることができない。それが、今の中国の実態であり、時間をかければ何とかなるという問題ではない。

投資主導経済の成長が落ちると、GDPのパイが小さくなるため、労働者への分け前を増やすことは不可能となる。むしろ、国際的な供給過剰局面からすると、中国は今後ダンピング輸出が必要になってくる可能性が強く、さらに賃金への下方圧力が働いてくる。かつての日本のように投資主導から消費主導へと経済転換を図り、内需主導型の長期的な経済成長を実現する姿を描くのが、困難な状況になりつつある。
 

第七章 通用しなくなった鴻海モデル

湾岸部の賃金上昇が中国の国際競争力の顕著な低下を招くとともに、これと連動するように、ASEAN(東南アジア諸国連合)やメキシコ経済が活気を帯びてきた。メキシコと米国の製造業の連関性を見ても、中国経済が離陸した2000年以降、米国を下回っていたメキシコの生産が、ここにきて米国をはるかに上回ってきた。明らかに、生産拠点の中国からメキシコへの移動が起こり始めている。中国とメキシコの製造業の平均賃金を比べても、2000年代初頭にはメキシコの5分の1から7分の1にすぎなかった中国の賃金が、今では差がなくなりつつあり、輸送コストなどを考慮すればメキシコの方が優位である。このような中国からの生産拠点の移動は、メキシコだけではなく、ASEAN諸国に対しても展開されている。

★図表18-19-20

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 

[PR] クレジットカード比較ランキング

んかぶピックアップ
ネット証券口座比較 ネット証券口座比較
証券口座選びを完全サポート
総合ランキング1位はこちら!
FX比較ランキング FX比較ランキング
みんためスタッフが独自調査で
おすすめのFX会社を紹介!
クレジットカード比較 クレジットカード比較
おすすめのクレジットカードを
ピックアップしてご紹介!
【株式投資初心者ガイド】 ネット証券会社選びお役立ち情報!
投資家に役立つ情報が満載
【株式投資初心者ガイド】
みんかぶマガジン> 全ての記事> 市場解説・相場展望> 転機に立つ中国経済~異常投資の清算を迫られる~