転機に立つ中国経済~異常投資の清算を迫られる~

第四章 投資を支えた外貨準備

中国における最も大きな投資モチベーションとなってきたのは、経済の規模を拡大するための、潤沢な投資資金があったことだ。この金融環境を可能にした背景が、膨大な外貨準備である。2000年代の競争力の高まりや輸出の急増によってもたらされた、中国の外貨準備は膨大であった。しかも、2007年頃までは、外貨の個人保有を認めていなかったため、獲得した外貨は全て銀行に預けなければならなかった。銀行は外貨を受け入れると同時に人民元を供給するので、外貨の蓄積は直ちに中国国内のマネーサプライの増加につながる。中国の膨大なマネー供給は、この著しい外貨の積み上げによって裏付けられた。

しかし、中国における潤沢な投資資金の源泉となってきた外貨事情が大きく変化している。中国の外貨準備高の対GDP比率は、1990年代0%、2000年13%、2010年49%と急上昇し、野放図とも思える高投資の源泉となったが、2012年は40%へと急低下し2013年前半では38%程度である。国内通貨発行の源泉たる外貨準備高が頭打ちから減少に転じているからである。①高騰する賃金により中国の競争力は低下し、巨額の貿易黒字がピークアウトしてきた。②外国人による対中証券投資、直接投資もピークアウトしつつある。2012年前半までは主要国中唯一日本の対中直接投資が増加していたが、尖閣騒動以降それも減少に転じている。③対中証券投資の規制が緩和されてはいるものの、世界で最悪の株価かつ、経済減速が心配されている中国への証券投資が増加するとは思われない。中国強気派フィデリティ投信のアンソニー・ボルトン氏は対中投資から撤退した。加えて④中国人による海外資金避難が起きる可能性がある。当局による懸命の為替管理にも拘わらず、本質的には、外貨準備高は減少傾向を辿る趨勢にあると言える。それは一段の信用収縮をもたらす可能性が高い。

まだ外貨準備は大きく減少していない。しかし、中国の外貨需給トレンドは、この2~3年で劇的に変わっている。外貨準備がピークアウトして下落してくると、これを根拠とした通貨発行は著しく困難になってくる。これが、今の中国が直面している大きな問題である。今後、破局的になるかならないかは別として、GDP成長寄与の6割にもなる異常投資に依存する成長は、もはや不可能となってくる。経済の牽引車であった投資に替わる役割を、果たして消費が担うことができるか、疑問である。

★図表14
 

第五章 投資から消費への転換に成功した日本

経済が発展する局面で、投資を増やすことは当然であるが、成熟するにしたがって、消費が牽引する経済の姿に転換してくる。全ての先進国が経験してきた道だが、中国にも可能なのかどうか。消費が増えるためには、消費する力、すなわち賃金が増えなくてはならない。この賃金が増え、消費が伸びる仕組みが、今の中国で実現しているかについては、疑問を抱かざるを得ない。

日本が投資から消費へ牽引車を転換し、持続的な高度成長を実現した大きな転換点(ルイスの転換点)は、1960年であった。それ以降日本の物価は、4%の上昇率がほぼ20年にわたって定着した。これは毎年、生産性上昇+4%の賃金上昇があったことを意味し、労働分配率が急速に高まった(1960年代の50%弱から1980年代の65%前後へ)。この著しい賃金上昇と、それに伴う物価上昇が、日本の大きな国内需要を創出した。その結果、1960年代以前にあった都市と農村の格差や、熟練工と単純労働の賃金格差などを解消し、1970年代半ば以降、日本はたぐいまれな平等国家になった。賃金インフレによってもたらされた購買力が、農村や単純労働者の生活水準を大きく押し上げた。つまり、ルイスの転換点とは、賃金決定で市場メカニズムが働き始める臨界点なのである。

1960年以前の日本は、農村に多くの余剰労働力があったことから、好景気で企業がいくら利益を上げても、労働賃金は上がらなかった。つまり、賃金決定にマーケットメカニズムが働いていなかったのである。安い賃金の労働力を使って企業は大きな利益を上げ、投資をすることで、日本経済の成長土台が作られたが、人々はそれによって豊かにはならなかった。1960年は、日米安保条約が改定された年でもあり、政治的にも大きな転換点であったが、国民の間には貧富の差による不満が鬱積していた。しかし、1960年以降、池田内閣が寛容と忍耐による「所得倍増計画」を打ち出し、賃金インフレが定着する環境をつくったことから、日本の労働需給は劇的に変わってくる。それまで1以下だった有効求人倍率が、それ以降、1以上となり、農村の余剰労働力はなくなって、都市との賃金格差は急激に縮小してくる。

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