ポスト・リーマンショック環境の終焉-1-

・金利上昇は銀行収益にプラス

米連銀の「量的緩和の2013年内縮小、2014年半ばにも終了」を受けた米長期金利の上昇を、株式市場はネガティブに捉えているようだ。一方で、低利調達、高利運用を望む金融機関にとっては、利ザヤの幅が取り易い高金利環境は収益によりプラスだといえる。

銀行は預金などで調達した資金を、貸出などで運用する。仮に2%で調達し、2倍の4%で運用すると2%の利ザヤが取れる。この差の基になるものは、信用スプレッドと、長短スプレッドだ。通常、信用力があればより低利、期間が短ければより低利となる。信用力に勝る銀行が、短期で調達し、長期で運用すれば、それなりの利ザヤが取れることになる。

この時、全体的な金利水準の数値が大きいほど、こういった純金利マージンは確保しやすいといえる。逆に運用金利が1%台だと、どんなに頑張っても2%の純金利マージンがとれない。そこから人件費や様々なコストを差し引くことを鑑みれば、金利上昇は銀行の収益環境にプラスだと、ご理解頂けるかと思う。

ところが、金利が上昇していく過程では、しばしば損失を計上することになる。長期固定の運用金利が4%の時に、短期での調達金利が急上昇すれば、逆ザヤにもなりかねない。また、債券利回りの上昇は、債券価格下落の意味なので、保有債券の評価損が膨らんでしまう。

つまり、金利上昇の時期をつつがなく乗り切れば、その後の環境は低利時代よりも、明るいものとなる。つつがなく乗り切れるように、連銀は今後1年くらい債券の売り場を提供してくれる。高金利環境の方が資金運用しやすいのは、年金や保険会社などにも言える。あるいは、老後資金を銀行預金や国債で運用して、利子で食べて行こうと考える人たちにも言えるのだ。

超低金利の長期化は、様々なところに歪を生んできた。年金や社会保障制度が立ち行かなくなった大きな原因の1つでもある。メリハリのない金融政策は、恩恵よりも弊害の方が大きいという一例だ。

・サブプライム、リーマン・ショック後の銀行救済

米国の金融緩和は、サブプライム・ショック直後の2007年9月の5.25%から4.75%への利下げに始まり、2008年12月に現状の超低金利0.25%に到達した。また、最初の量的緩和QE1が2008年11月26日に発表された。ちなみに、リーマンブラザーズは2008年9月15日に連邦破産法第11章の適用を連邦裁判所に申請、破たんした。

サブプライム問題については、様々な角度からの解説が可能だろうが、住宅バブルを故意につくった、一種の相場操縦の観点から見れば、銀行が個人という他人名義で住宅を買い上げ、住宅バブルをつくり、そのバブルが自律的に崩壊したことが本質だといえる。

当初は返済能力のある買い手がいた。やがて持ち家比率の飽和状態に近い上昇と、住宅価格の上昇で、そういった実需の買い手が枯渇した。それでも住宅は建てられ続けた。そこで銀行は返済能力のない人たちに購入予定の住宅を担保に資金を貸し付け、高値の住宅を買わせた。資金は銀行が出し、返済は(予測通り)できないので、銀行は担保の住宅を手にした。つまり、実際に資金を出して住宅を手に入れたのは銀行で、資金もなく購入者となった個人は、銀行の購入時に名義を貸し、一時的に居住しただけなのだ。これは仮需で相場をつくるという、典型的なバブル形成のパターンだ。

それにより、住宅産業と金融機関は何年間か目先の利益を享受した。資金もなく住宅所有者となった人たちも、初期の住宅価格の上昇期には、うまく売り逃げて、それなりの利益を出した。双方に旨みのある時期があったので、こういった仕組みは成立した。仮に、永遠に住宅価格が上げ続けるのなら、すべての人がハッピーになる、ねずみ講に似た仕組みだ。そして、後期にバブルに乗り、最後まで付き合った人が大損した。これも典型的なバブル崩壊のパターンだった。

この2年間ほど私はここで、債券バブルの崩壊を警告し続けているように、当時の私は米住宅バブル崩壊に先立つ2年間ほど、バブルの崩壊を警告し続けた。米人口の動向と、所得、持ち家比率、住宅販売、住宅着工、住宅価格などの関係を見ていれば、バブルの形成と崩壊は十分に予想できたからだ。

参照:「第二章 サブプライム・ショック」
http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-11163107032.html

私はこれらの数値を20年以上毎日のように追いかけているので、バブル崩壊の半年ほど前にサブプライム・ローン関連商品を売り払った日本の信託銀行などの存在を知っているが、米銀は大手を中心にほぼ全滅した。もちろん、全滅などさせれば米国の金融システムは成り立たないので、リーマンブラザーズなど一部を除き、政府・連銀が救済した。それでも、ウォールストリート・ジャーナルの資料によると、2008年1月から2011年8月までの間に、386の銀行や地方の金融機関が潰れている。私が米銀や大手投資家など大したことはない、相場なら私の方が詳しいと豪語するのはこのことも一因だ。

参照:Tracking the Nation’s Bank Failures
http://s.wsj.net/public/resources/documents/info-Failed_Banks-sort.html

米当局の動きは迅速かつ、徹底的だった。銀行が主導したという事の本質をよく見極め、銀行本体による過剰な投機を規制したボルカー・ルールなども提案した。一方で、欧州中銀は2008年7月には利上げし、利下げはリーマン破たん後の2008年10月まで行わなかった。このことが、ユーロ危機、特にスペインやアイルランドの危機につながったことは、何度も繰り返しているので、今回は述べない。

1つの主要産業が壊滅的な危機を迎えていたなら、政府はどんな手を使ってでも救済するべきかと思う。そうしないとどうなるかは、ユーロ周辺国が見せてくれている。まず行うことは支援金だが、収益が上がる環境整備も重要だ。銀行の場合には低利調達、高利運用の環境をつくれば、それだけで収益が上がるようになる。金融緩和をして、中長期の国債を買わせればいいのだ。

ところが、何にでも作用だけでなく、副作用や反作用がある。超低金利の長期化は、様々なところに歪を生んできた。年金や社会保障制度が立ち行かなくなった大きな原因の1つでもある。

国債は資金運用の大きな柱だ。国債が年金や社会保障制度に維持に十分な利回りを提供できれば、運用者はそれほどリスクを取らずとも、成り立っていく。あるいは、国債の利回りが十分ではなくても、低下局面であれば、値上がり益を総合リターンに組み込むことで、それなりに成り立っていく。問題は、利回りがこれ以上低下する余地がなくなった時だ。(次回に続く)

1 2

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 

[PR] クレジットカード比較ランキング

んかぶピックアップ
ネット証券口座比較 ネット証券口座比較
証券口座選びを完全サポート
総合ランキング1位はこちら!
FX比較ランキング FX比較ランキング
みんためスタッフが独自調査で
おすすめのFX会社を紹介!
クレジットカード比較 クレジットカード比較
おすすめのクレジットカードを
ピックアップしてご紹介!
【株式投資初心者ガイド】 ネット証券会社選びお役立ち情報!
投資家に役立つ情報が満載
【株式投資初心者ガイド】
みんかぶマガジン> 全ての記事> その他> ポスト・リーマンショック環境の終焉-1-