アベノミクスで農家倒産の危機-円安は大型酪農を経営破綻させる-

◇流通と価格支配力
 もちろん、円安に伴うコスト上昇分を価格転嫁出来れば、問題はない。ところが、乳価引上げは難しい。牛乳の価格支配力は、明治、森永などの乳業メーカーと流通業界(スーパー)が持っている。

 牛乳は、スーパーの店頭で重要な品目である。いま、スーパー業界は長引く景気低迷で消費者の低価格志向に直面し、“消費税”の引上げ分さえも価格転嫁できないと言っている。そういう状況にあるとき、酪農家のコストが上がった分、牛乳の価格を引き上げることはしないであろう。スーパーが牛乳の販売価格を上げない限り、明治・森永などの乳業メーカーが牛乳の出荷価格を上げることはできない。そのとき、酪農家からの生乳の購入価格を引き上げることは出来ないであろう。

 つまり、酪農家は円安に伴うコストアップ分を価格転嫁できない。酪農業界は価格支配力がない、と言って過言ではない。業界団体が乳業メーカーと価格交渉するのであるが、円安に伴うコストアップ分の数分の一しか値上げを認められないであろう。酪農業界は“プロフィット・スクイズ”(利潤圧縮、profit squeeze)の状況に陥っている。

 輸入飼料への依存度が大きい大規模なメガファームほど、“利潤圧縮”が大きい。繰り返しになるが、大規模なメガファームほど、円安に伴い経営が圧迫される。酪農は円安の被害が大きい。このままでは、倒産、離農が加速するかもしれない。

 電力やガス産業は、原燃料価格が上昇すれば、電気料金を値上げすることが出来る(法律)。しかし、酪農業界にはそうした仕組みはない。

◇円安はメリット、デメリットの両方がある
 円安を喜ぶ見方が多いが、円安はメリットばかりではない。輸出産業にとっては、円安は利益向上要因である。しかし、円安に伴い輸入価格が上昇するので、多くの輸入産業では利益が低下しよう。円安はメリットもあるが、デメリットもあり、相殺し合う矛盾を持っている。(これは何処にでもある話)。

 しかし、酪農業界の実情はそれを超えた矛盾を見せている。円安が輸入価格を高めコスト上昇要因になっているだけではなく、育成すべき効率的な農家の経営危機をもたらしているのだ。円安は「強い農家」を殺してしまう。政策目標との矛盾である。酪農業界においては、円安はコスト上昇、育成すべきものの倒産という、二つの矛盾が重なっており、“大矛盾”である。「アベノミクスの大矛盾」といえよう。

 成長戦略は、酪農の国際競争力をめざし、規模拡大を追求することであろう。規模拡大が円安のデメリットを受けないための方策が必要だ。円安にも耐えられる体質をつくることだ。そのためには、粗飼料の自給率を高めればよい。水田裏作として、ライ麦を栽培すれば自給率を向上できる。それを可能にする制度設計が必要だ。水田裏作のライ麦栽培は“1石5鳥”である(雇用創出、飼料コスト引き下げ、自給率向上、循環型農業、コメ農家所得対策)。この点については、別稿を予定している。

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