超金融緩和の時代~「最強のアメリカ」復活と経済悲観主義の終わり~

資本主義のみならず人類の歴史においては、生産性の向上こそが経済を発展させる原動力であった。だとすれば、バブルの生成と崩壊は、生産性が高まっていることの傍証とも言え、経済がさらに発展していくうえでの一里塚とも考えられるのである。

つまりバーナンキFRB議長による超金融緩和が成功したのは、生産性上昇により労働と資本の余剰が著しく高まっているという現実があったからである。このような環境では「闇雲な超金融緩和は成功しない」という素朴な一般論は当てはまらないことがわかる。ここに黒田日銀総裁が主導した新次元の超金融緩和が妥当であり、成功するという根拠もある。

リーマンショックが引き金を引いた新時代の輪郭がおぼろげながら見えてきた。それは「最強のアメリカ」が復活することによる新たな世界経済の発展である。バーナンキ議長による米国の量的金融緩和は、余っている人と金を活用して新たな需要を創造し、経済の長期成長軌道を敷設することに成功するだろう。

昨日までのまるで疑う余地のない歴史トレンドであると見られていた「先進国の時代の終わり、BRICSへ」、は、今や過去の話となりつつある。それは、2000年のITバブル崩壊、2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショックと続いた米国経済危機の時代の、幕間劇にすぎなかった。中国の台頭の背景にあるさまざまな異常さ、持続性の困難さは説明するまでもないが、ロシア、ブラジルの隆盛も中国の爆食経済の反映、という面が強かった。中国経済の衰弱とともに起こりつつある資源価格の下落により、経済プレゼンスの低下は避けられない。これからの世界経済の成長でクローズアップされる新興国はBRICsのような世界秩序を主張する大国ではなく、西欧民主主義のグローバル秩序と親和性のある、ASEANなど中小国新興国であろう。

それではBRICsに代わる世界経済の新規需要センターはどこになるだろうか。それは米国など先進国の新たな生活の質の向上に尽きるだろう。先進国は有り余るヒトとカネを活用して一段と豊かな生活水準を楽しむ時代に入っていく。その牽引国は米国、次いで日本、ドイツとなる事を予想しておきたい。

おわりに

私の職業はアナリスト、ストラテジストと称する調査マンであり、現在、過去を分析し、将来を的確に予測することがその職責である。法則、理論の形成に専念する学者や、一般人に情勢を説明する評論家、ジャーナリストとは役割が異なる。学者や評論家、ジャーナリストの予測の的中率が低くても、専門外のことであるゆえに多めに見てもらえるのかもしれないが、私の場合にはそのような甘えが許されないのは当然である。

調査と仮説に基づくことで、将来の予測は驚くほど的中率を高めることができる。1990年代の日本バブル崩壊と経済困難、1990年代の米国経済の復活、2000年のITバブル崩壊については、はるか前から予測することができ(著しい少数意見ではあったが)、著作やレポートで発信してきた。本書で体系的に考察した今回のリーマンショックからの鋭角回復と「最強のアメリカ」の復活への潮流についても、その輪郭は4年前から見えていた。調査と仮説のたまものである。

それでは筆者が最も大切にしている仮説は何かと言えば、それは因果応報である。僥倖も不遇も永遠には続かない。中身のない成功は綻び、中身のある失敗は報われる。中身が伴っていない成功がどこにあり、中身があるのに報われていないケースがどこにあるのかを探すこと、が筆者の役割である。中身と成果のバランスを診るには、経済の2大投入要素である労働の提供者および資本の提供者がそれぞれに、「成果にふさわしい対価を得ているかどうか」で観測できる。成果にふさわしい対価を得ていないとすれば、それは不当でありいずれ是正される。

それを調べるのに最も注目するべきデータは何かと問われれば「単位労働コスト(労働賃金/生産性)」と「リスクプレミアム」と答える。まず労働者が貢献にふさわしい処遇を得ているか、は労働の成果が適切に賃金に反映されているかにほかならず、それは「単位労働コスト」によって観察出来る。

一方、資本の提供者が資本のリターンにふさわしい処遇を得ているか、を診る上での最適な指標は、「株式リスクプレミアム」である。「リスクプレミアム」が高いということは、企業に投下された資本が十分な収益を上げているのに、株価に体現される株主の価値が低く、株主に資本の高リターンがきちんと配達されていないことを示す。そして株価が割安であり、上昇の大きな余地を持っていることを意味する。

「最強のアメリカ」が復活することもデータとしては、単位労働コストと株式リスクプレミアムに「大きく是正される余地がある」ことで証明できる。

さて単位労働コストと株式リスクプレミアムにおいて最も大きく是正される余地があるのは日本である。ゆえに日本経済の顕著な復活が予見される。欧州ではドイツがそうである。ここから数年は米独、そして日本の復活が大きなトレンドとなるだろう。

(日本実業出版社書籍紹介ページ)
http://www.njg.co.jp/kensaku_shousai.php?isbn=ISBN978-4-534-05080-9

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