超金融緩和の目指すもの~BRICsの数量から先進国の質へ~

量的金融緩和の歴史的意義

量的金融緩和は、リーマンショックによって陥った米国経済の病の根本的治癒を可能にする政策と考えられる。以下その根拠を説明する。

何故バブルが崩壊し、世界的金融危機が起きたのだろうか。リーマンショックの原因は重層的である。直接的な原因は市場の崩壊・ミスプライシングの発生であったが、その元の原因は、住宅バブルの生成とそれを支えたモラルなき金融であった。しかし更なる底流には、より重要な根本原因、2000年ITバブル崩壊以降の人余り(失業の増加)、金余り(空前の金利低下)があったと考えられる。ITバブル崩壊は大規模な労働と資本の余剰を発生させたが、それは2007年まで、住宅バブルに吸収され、更に経済を成長させていた(図表3参照)。しかし、住宅バブル崩壊が起こり、住宅部門に一時的に吸収されていた余剰労働力、余剰資本が再度顕在化した、というのが危機の本質である。つまりリーマンショックの根源は、資本と労働の余りにあったのである。

図表3-4

そして人余り、金余りをもたらしたものは、新産業革命とグローバリゼーションによる空前の生産性の上昇である。1時間で、より多くのものが作り出せるようになったのだから、それだけ省力化でき、製造コストも下がる。つまり、企業利益が増大する一方で「人手と資金が余る」ことになる。資本主義のみならず人類の歴史においては、生産性の向上こそが経済を発展させる原動力であった。だとすれば、バブルの生成と崩壊は、生産性が高まっていることの傍証とも言え、経済がさらに発展していくうえでの一里塚とも考えられるのである。

ここで大きな問題が浮上する。それは、生産性が向上しているセクターほど需要限界が存在しているということである。スマートフォン、あるいはテレビなどの製造業製品の多くは、1人で2台、3台も持つ必要がない。生産性が向上して価格がどんどん安くなったとしても、一定水準以上の新たな需要が生まれない。これに対して、教育、医療、娯楽、観光などの内需サービスセクターは、消費者に購買力さえあれば、青天井で需要が高まっていく。人々は購買力がありさえすればより良い医療、より贅沢な娯楽、より高度な教育を際限なく求めるはずである。しかし生産性が上がらないので需要増に対応するためには雇用を青天井で増加させなければならない。

不可欠な「所得移転」、量的金融緩和はその為の触媒である

ここで必要なのは、生産性が向上しているセクターから、生産性が向上していないセクターに、うまく所得移転を進めることである。需要に限界があるセクターに労働力や余剰資本が大量投入されても、経済にとってプラスにはならない。単に過剰生産につながるだけだ。しかし、潜在需要があるセクターに労働や資本を適切に配分するメカニズムが存在し、機能していれば過剰生産を回避し、より高次元の経済拡大が可能となる。その所得移転を推進する力こそ、市場メカニズム=プライスメカニズム、そのものである。市場の機能によって人やカネが適切に配分されていく。多くの人が必要としているものであれば価格は上昇し、誰も必要としないものであれば価格は下がるといった価格変動を通じて、資源が最適に配分されていく。生産性が向上している製造業、あるいは情報産業では今後、人が余っていくので、余剰人員や余剰資金を医療や専門サービス、娯楽、観光といった内需型のサービス産業にシフトさせる必要がある。そのためには、製造業や情報産業の販売価格が下落する一方、内需型サービス産業の販売価格が上昇しなければならない。そうなって初めて製造業や情報産業から、内需型サービス産業に人やカネがシフトしていくのである。

量的金融緩和によるサービス価格インフレの維持は、そうした所得移転を可能にする唯一のチャンネルである。このように考えると、一見錬金術に見える量的金融緩和は、

余剰労働(LS)+余剰資本(CS)⇒ 新規需要創造(⊿D)

という化学反応を促進する触媒としての大きな意義があると言える。金融緩和それ自体は富を生まないのは、周知のとおりである。しかし富を生む化学反応を大いに促進するのである。

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