第9回 パッシブ運用について

 話が逸れるが、これを一般消費財と比較してみよう。筆者は、この投資信託のビジネスモデルは車に似ていると思う。まず最初の購入時にお金がかかり(販売手数料)、継続的に使うのに別途ガソリン代・車検代などのお金がかかる(運用報酬)。「投信のコストが車のコストに似ているなら良いんじゃない?」と思われるかもしれないが、そうではない。車の場合、事前にディーラーで聞き、自分でも調べた車の性能やそのブランド価値が裏切られることはあまりないだろう。ガソリン価格の多少の変動は投資家が納得済みだし、安いガソリン・スタンドも増えている。だが投信の場合そうではない。あなたが事前に聞いていたファンドの特徴、過去の成績、評価機関の評価(星の数など)は、あまり当てにならない。米国の金融研究では、アクティブ運用の成績の良さはほぼランダムであると結論付けられている。もちろん、腕の良いファンドは存在する。古くはマゼラン・ファンドであり、畑は違うがウォーレン・バフェットも同じである。そのようにごく一部の例外を除くと、過去成績の良かったファンドが来年も成績が良いとは限らないことが知られている。
 つまり、投資家は期待通りになるかどうか分からないファンドに対して高い報酬を支払っているのがアクティブ運用の世界なのである。先ほどの車のたとえで言うと、中古車のようなものだろう。中古車の場合、前の所有者がどのような乗り方をしていたのか分からないので、パンフレットや走行距離、セールスマンの言うとおりのパフォーマンスを上げられるとは限らない。(これは中古車セールスにおける情報の非対称性という非常に有名な問題であり、この研究はノーベル賞を受賞したほどである。)
 やや脱線してしまったので話を戻すと、パッシブ運用とは、投資家に対して課されるコストを下げることを最大の目的にしていると言って良い。運用手法は極めて一般的な指数連動型というもので、タイミングを逃さない・先進的な運用手法などの特別なスキルは要求されない。乱暴な言い方をすると、パッシブ運用には、対象にする株価指数の構成銘柄データだけが必要である。株価指数において銘柄Aが1%、銘柄Bが0.8%、銘柄Cが0.1%・・・というウェイトになっていれば、パッシブ運用ポートフォリオも銘柄Aが1%、銘柄Bが0.8%、銘柄Cが0.1%・・・と構築すれば良い。そうすると、ポートフォリオの動きは指数の動きと同じになる。(もちろん、そう簡単には行かないのだが、概念的には非常に単純である。)従って、パッシブ運用には銘柄調査のアナリストも不要であり、機動的に売買するファンド・マネージャーも不要である。多少のマーケティングは必要だが、例えば「日経平均連動型投信」というような極めて一般的商品であれば、そもそもエッジの効きようがない。従って、マーケティング費用も極力抑えられる。となれば運用報酬を相当安く設定しても、運用会社としての経営も成り立つ。こうしてパッシブ運用の投資信託の低コストが実現し、投資家の負担が減る。投資家にとっては非常に良いことである。
 では、素朴な疑問として、なぜパッシブ運用ファンドが「売れ筋一番ファンド」にならないのだろうか?実は、意外に思うかもしれないが、既にパッシブ運用ファンドは充分に売れ筋一番である。海外ではパッシブ運用の進化形であるETFが圧倒的勢いで資金を集めており、伝統的投資信託からは資金流出が続いている。また、日本でも年金基金などの機関投資家は平均すると半分以上の資金をパッシブ運用している。パッシブ運用が売れ筋になっていないのは、日本の個人投資家の世界の話なのである。
 既述した通り、現在の投信業界では販売会社が非常に大きな影響力を持っている。仮にパッシブ運用ファンドを販売した場合、元々安い運用報酬の半分を販売会社がもらったところで、販売会社にとっては大きな収入にならない。ましてやパッシブ運用ファンドに販売手数料3%を課そうものなら、それだけで運用報酬数年分になるため、低コストという商品性に合わない。こうした理由で、現在窓販などでパッシブ運用ファンドを目にすることは極めて少ないはずである。要するに、販売会社にとってパッシブ運用ファンドは儲からないのである。他に売るものがなければパッシブ運用ファンドも売られるだろうが、アクティブ運用ファンドが売れる中ではパッシブ運用ファンドも売るインセンティブはない。販売会社も商売なので、利益の大きな物を売るのが正しい行動なのだ。
 本来であれば手軽に低コストで株式投資ができるはずなのに、現実には高コストでしか株式投資ができないのが、現在の投信の対面販売での姿である。これがネット上では異なるはずだ。ネットで投資をする投資家は金融商品を比較して探す能力に長け、コストにも非常に感度が高いため、ネット上ではかなり多くのパッシブ運用ファンドが提供されている。このように、現在の投信を取り巻く環境は、チャネルによって様相が大きく異なるのが現実である。そして、そのような状況を作っているのは私たち投資家に他ならない。(窓販でも、投資家が運用報酬や販売手数料の高いファンドを買わなければ、コストの安いパッシブ運用ファンドが中心になるだろう。)

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