[サラワク訪問記]日本に直結した経済発展と環境問題

3、環境クズネッツ曲線

◇クズネッツの研究
 発展途上国では、一般に所得格差は拡大する。農業社会では往々にして「皆、等しく貧しい」ので、格差は小さい。工業化が始まると、工業部門に雇用される人々の所得が高く、農業従事者との間に次第に格差が発生する。つまり、経済発展が進むに連れ、格差が拡大する。しかし、中進国から先進国に移行する頃、格差はピークになり、やがて格差は縮小に向かう。低生産性の農業部門が縮小し多くが都市化する。経済発展で雇用が増え労働市場が過剰から不足に転換すると、全部雇用になったり、ルイス転換点を超えると農業部門でも所得が増える。累進的税制や、高所得者から低所得者への再配分政策もある。こうしたことから、経済発展がある段階に来ると、格差は縮小に向かう。
 1971年ノーベル経済学賞を受賞したS.クズネッツ(米国)は、各国の国民所得統計などを使った膨大な資料分析に基づき「経済の法則性」を発見したことでノーベル賞受賞に至るのであるが、上述のようなパターンの存在を発見したのも彼の仕事であった。不平等度と経済発展の関係をグラフ化するとローマ字のUの字を逆さにした形をしているので、「クズネッツ逆U字型仮説」とよんでいる。(注、クズネッツ仮説が検証されるか否かについては論争がある。なお、米国、日本とも、1980年代から再び所得格差が拡大し注目されている)。

◇世界銀行の「環境クズネッツ曲線」と筆者仮説
 環境問題も似たところがある。経済発展と環境の悪化はパラレルではなく、どこかで分岐する。グラフの縦軸に環境負荷、横軸に経済発展度(所得水準)をとり両者の関係を見た場合、経済発展が進むにつれ環境汚染が進むが、両者の関係は無限にパラレルではなく、途中から乖離する。
 
 経済発展がある段階まで来ると、所得水準の向上に伴い環境を守りたいという考えが増え、経済成長至上主義から環境重視への転換、公害防止技術の開発、等々から、やがて環境負荷もピークアウトする。経済発展に伴い無限に環境が悪化する訳ではなく、経済発展と環境悪化の関係は逆U字型である。世界銀行は世界各国のデータからこの経験法則を発見し、S.クズネッツにちなんで「環境クズネッツ曲線」と名付けた(1992年)。

 逆U字型になるのは、通常、公害防止の技術開発、設備投資、環境教育などに理由を求めるが、筆者は説明要因に産業構造要因を追加したい。つまり、逆U字型は、経済発展が人的資本(Human capital)に立脚した製造業型の産業発展であるということにも起因していると考える。この場合、経済発展が進行しても、ある段階から環境破壊は増えない。しかし、Human capitalではなく、サラワク州のように資源依存型産業構造の場合、屈折点を迎えにくく(生産要素としてのHuman capitalの比重が小さいため)、経済開発は環境破壊に結びつきやすい。これは筆者の仮説である。

 マレーシア政府はサラワク工業開発計画を推進している。豊富な水力を利用した電力多消費・資源加工型製造業を重点産業に指定している。石油、アルミ、鉄鋼・金属、ガラス、造船などである。資源加工型産業の場合、経済発展と環境汚染はパラレルになる危険が大きい。公害防止技術の適用と環境保全活動の一層の努力が求められよう。

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