[ラオス訪問記]資源輸出立国の経済と環境の両立は可能か

5、伝統社会vs.近代的思考

 トンシン・タンマヴァン首相を表敬訪問した。国土面積に占める森林の比率を70%に戻す方針という。平野部で米生産を増やせば、焼畑によるコメ作りを抑制できるので、環境にプラスという。つまり、山岳部の住民の焼畑を減らす、平野部のコメを増産する、さらに焼畑しなくて済む職業(雇用)を増やすという。お話を聞いて、問題の所在を適格に把握しており、対策も合理的だと思った。トンシン首相は近代的思考の持ち主と思われる。

 ラオスの経済発展の制約は水がないという事だ。メコン川はあるが、遠い。灌漑工事で水を引いてくれば、ラオス南部は平野であるから、水田を開発できる。また、水と電気が来れば、製造業の発達も可能で、新しい雇用が創出され、農業依存から脱却できる。焼畑卒業プログラムは、灌漑事業で水を引くことである。ラオス政府は灌漑ダム計画を策定しているようだ。

 しかし、焼畑に依存している村人が、こうした近代的思考に反応するかどうか。 何百年来、村人は焼畑を繰り返してきた。焼畑はそれ自体は持続的農業であり、1家族1ha耕し、10年サイクルで焼畑する限り、地味は再生され、村人の生活は維持されてきた。村人にとって、伝統的な焼畑生活と焼畑に代替した近代的職業とは、いずれが「幸せ」を実感させるであろうか。

 また、村で食した地元料理はおいしかった。特に蒸したお米が美味しかった(もち米、おこわ)。焼畑で作った陸稲であろう。香りもよかった。村人は水稲より、香りのよい焼畑の陸稲を好む。近代的農法のコメを主食にして、「幸せ」を感じるであろうか。村人の生活改善という視点に立つ限り、「幸せとは何か」という哲学問答なしには答えは出ない。国(軍)富んで民貧するでは困る。

(注)焼畑の陸稲は生産性が低い。単収は10a当たり籾150~200kgである。これに対し、水田作は10a当たり300kg(雨季)~400kg(乾季)である。水がある時期は水稲も食している。灌漑が利用可能になれば、近代的農法による米が主食になる可能性はある。

 政府は一貫して、早くから焼畑の抑制策を推進してきた。木材は重要な輸出商品であり、外貨獲得の手段であり、国家財政の財源であった。焼畑が続けば、政府の財源が不足する危機が来る。政府の焼畑抑制は環境保全というより、重要な輸出資源の確保を目指したものという理解がある。

 政府は焼畑農民の追い出し作戦で貧困脱却を考えているように見える。しかし、先述したように、プランテーション開発と村人の生活向上の共存共栄は可能だ。また、資源輸出立国を克服しない限り経済と環境の両立は難しいが、その拮抗関係も緩和可能である。せめて初等教育を充実させ、労働力の質の向上を図れば、製造業の立地も増えよう。

 資源依存モノカルチャー経済からの脱却には、製造業の振興が必要である。それには教育の向上が必要だ。ラオスの教育事情の現実は厳しい。ファイサイ村(人口697人)の場合、小学校全校生150人の内、1年生は70人、5年生は3人である。つまり途中のドロップアウトが多く、残存率は5%に満たない。中学校への入学は学齢人口の5%である。中学校まで6kmも離れている。中学校へは行きたい、勉強したいと思っていても、学校は遠く、またお金がなく通わせられないのが原因という。
 初等教育をはじめ、ベーシック・ヒューマンニーズの確保への支援こそ経済と環境の両立につながっていくのではないか。

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