[ラオス訪問記]資源輸出立国の経済と環境の両立は可能か

4、貧困からの脱却に向けて

 今回のラオス行(2月初旬)は、経団連自然保護協議会(佐藤正敏会長)の現地視察ミッションに参加したものである。経団連自然保護協議会は世界中の自然保護関係NGOに助成金を出しているのであるが、助成金が効果的に使われているかの検証、さらに、どういうプロジェクトに助成金を出せば自然保護に役立つかを発見するために、毎年世界のNGOの活動サイトを現地視察している。

◇資源輸出による環境破壊
 ラオスの1人当たりGDPは1,320㌦(2011年)で、ミャンマーと並ぶアジア最貧国である(IMF,WEO Database,oct.2012)。ラオス政府は2020年までに最貧国から脱却すべく、経済開発政策を推進している。先述したように、ラオスは製造業の発展条件が乏しいため、資源依存型の経済である。そのため、経済開発政策はしばしば環境破壊を伴っている。特に森林環境には脅威を与えている。国土全体に占める森林面積の割合は1940年代の70%から、1987年には47%に減り、現在は40%を切ったようである。

 ラオスでは、多くの少数民族(49民族)が山間地に分散居住しているが、人口の70%が農村の自給自足型生活を営んでいるといわれる。この人たちにとって、森林は重要である。食料や現金収入源を森林に頼っているからだ。主食はコメであるが、多くの家族が半年はコメ不足の状態にある。しかし、飢える人はいない。森の中から、野生動物、竹の子、キノコ、果実など様々な林産物を採集して不足を補っているからだ。ラオス政府の調査では、7割の村民が栄養源として林産物を消費している。

 こうした状況であるから、ゴムのプランテーションや鉱山開発に伴う森林伐採は、環境破壊だけではなく、村人の生活に対する脅威になっている。資源輸出による経済開発と、環境保全および山間地に住む村民たちの生活は拮抗関係にある。

 「環境クズネッツ曲線」というのがある。グラフの縦軸に環境負荷、横軸に経済発展度(所得水準)をとり両者の関係を見た場合、経済発展が進むにつれ環境汚染が進むが、両者の関係は無限にパラレルではなく、途中から乖離する。経済発展がある段階まで来ると、むしろ環境負荷は小さくなっていく(グラフで描くと、逆U字型曲線になる)。世界銀行は世界各国のデータからこの経験法則を発見し、「環境クズネッツ曲線」と名付けた。

 逆U字型になるのは、通常、公害防止の技術開発、設備投資、環境教育などに理由を求めるが、筆者は説明要因に産業構造要因を追加したい。つまり、逆U字型は、経済発展が人的資本(Human capital)に立脚した製造業型の産業構造発展であるということにも起因していると考える。この場合、経済発展が進行しても、ある段階から環境破壊は増えない。しかし、Human capitalではなく、資源依存型産業構造の場合、経済開発は環境破壊に結びつきやすい。この点については、別途、マレーシア(サラワク州)訪問記で詳しく述べる予定である。

◇GPSを利用した土地利用計画で森林保護

 首都ビエンチャンは、14年前の訪問に比べると大きく変化し、近代的な街に変貌していた。瀟洒な感じのする街である。しかし、地方は格差が大きいようだ。人口の大部分が住む山間地は伝統的な生活が続いていた。

 ラオスの南部、サワナケート県ピン郡を訪問した。平野部でありながら、焼畑移動耕作が続いている。さらに、ゴムのプランテーション(ベトナム人経営)、道路等インフラ整備が進み、森林の減少が激しい。この地域で、森林環境の保全と地域住民の生活改善に取り組んでいるのが日本のNGO・日本国際ボランティアセンター(JVC)である。

 村人の主な仕事は、水田、焼畑、野菜作りである。焼畑に植えるものは、陸稲、いも(種類多い)、豆、キュウリ等であるが、これは雨季の仕事。いまの乾季は森に行って食べ物を取ってくるという。

 主食はコメであるが、不足している。現地訪問したピン郡サロイ村(人口373人、62世帯、83家族)の場合、1家族1haの焼畑耕地を持っているが、コメ自給率は50%である。ファイサイ村(人口697人、105世帯、149家族)の場合、コメを売ることのできる世帯は6世帯、コメを自給できるのは16世帯(販売はない)、コメ不足83世帯である。住民にとって、食料を供給できる森林の恵みは重要である。

 しかるに、ファイサイ村は全面積2,636ha、うち720haがゴムのプランテーションに変わった(2009年植林、ベトナム人経営)。村の全面積の27%の森林が一挙に消失したのである。土地は国有である。ベトナム人は軍の許可をもらい、ゴムのプランテーションを開発する。村人に権利はない。ゴム農園は柵もあり、鉄条網で囲んであるため、放牧の家畜も入れない。

 また、森林が減ったため、従来、10年サイクルで焼畑を行っていたのであるが、1haを確保するためには3年サイクルの焼畑になった。これでは、樹木や植生が復活する間もなく利用することになり、地味の肥えない土地で耕作し、収量が減少する。村人の生活を守るには、村人が森林に対し権利を持つことが必要である。

 JVCは参加型土地森林利用計画に協力し、村の境界線の確定、森の区分(利用林、再生林、保護林など)を決め、村人が森に権利を持てる「村有林」を確保した。これ以上のゴム植林は出来ないようになった。(注、土地森林利用計画は森林法に定められてあるが、従来はあまり実施されていなかった。各国のNGOが実施に協力している)。興味深いのは、GPS(全地球測位システム)を使って測量したことだ。ゴム園の開発は、しばしば許可された面積より大規模に森林伐採を行っている。従来、これを知る者はなく、ベトナム人会社の過剰伐採が続いていた。JVCはGPSを使って測量することで、過剰伐採を証明し、許認可の範囲内でゴム園を開発させ、森林の減少を抑制することに成功した。

 ラオス政府はこうした功績を評価し、最近、JVCが活動する地区を増やしてくれたようだ。経団連自然保護基金の支援が森林保全と住民の生活向上の一助になっていることが確認できたといえよう。

◇プランテーションと村人の利益の共存共栄戦略

 資源輸出立国では経済と環境の両立が難しい。ゴム園も、オイルパーム等と同じく、森林破壊のドライバーとして悪者扱いされがちであるが、「やりよう」なのではないか。経済と環境のバランスの取れた地域の持続的な発展に一役買えるであろう。
 第1に、村人による小規模なゴム園開発であれば、ゴム植林の利益はそっくり村に落ちる。さらに、ゴムの樹液を買い集める商人機能が村の中から出現すれば、その付加価値が村に残る。

 第2に、企業による大規模プランテーションの場合であっても、村人の雇用創出に結び付ける仕組みがあればよい。ベトナム北西部の事例であるが、国営ゴムプランテーションで1世帯に付き最低1人は従業員(=社員)として雇用されている。また、土地を提供した村人が株主になるようなイメージで、将来、ゴム生産から利益が出れば応分の配当を受ける仕組みになっている。植えつけてからゴムが採れるまでに5~7年くらいはかかるが、地ごしらえ、苗作り、植林、下草刈り等で仕事がある。

 第3に、木材目的の産業植林の場合、「分収方式」も考えられる。植林経費を企業が出し、村人は土地と労務等を提供することにし、伐採時の利益を半々で分けるという契約を結んで植林を行うことも考えられる。あるいは、会社が苗を無料で配布し、農民に植林して育ててもらい、将来、丸太を市場価格で買い取るという保証をして、植林活動を推進しているケースもある(インドネシアジャワ島)。生産性の悪い農地や遠隔地に木を植えておけば、数年後には子供の学費やバイクを買う金の足しになるのでとても好評のようだ。

 以上のように、村人の利益とプランテーション開発を両立させる工夫は可能だ。ただし、村人が森の権利を持っていることが大前提になる。参加型土地森林利用計画で村人が森の権利を持つことが出来るようにしたNGOの役割は大きい。さらに、上述のような仕組みづくりに役割を果たすことが期待される。

 開発と環境保全の両立については、開発を行う企業の社会的責任(環境配慮、社会配慮)に対する姿勢が問われる。その実効性を担保するためには、地域社会の環境意識の高まりと政府の規制も必要であろう。

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