2013年1月4日時点での主要市場見通し

(図表1)

・なお、米国がシェールガスの輸出を積極化するかどうかであるが、輸出にはパイプラインを使う(陸続きでないと難しい)か、液化してLNG(液化天然ガス)船で運ばなければならず(今から液化設備を拡充しなければならない)、すぐに大幅に輸出を拡大できるわけではない。また政治的にも、エネルギーの安全保障を考えて、輸出は控えるべきとの意見が政府・議会等に多いようだ〈※2〉。
・すると、米国が産出量で他国をリードし、かつ輸出に前向きでないとすると、米国内の天然ガス価格と国外のガス価格との差のかい離が、長期的に大きく続く展開が見込まれる(米国が輸出を大きく拡大しないとは言っても、米国へのガス輸入が減るので、世界全体の天然ガス価格に対して、抑制的な要因とはなる)。

・こうしたシェールガス革命が示唆する経済的・政治的な変化は、次のようなものとなるだろう。
①米国経済に対する押し上げ効果:エネルギーコストの低下が、企業や家計の負担を減らす。また、シェールガス開発・産出の拡大が、新しく雇用を産む効果もあるだろう〈※3〉。エネルギーコストの低下において米国がリードを保つことが、オバマ政権の「インソーシング」政策(製造業企業が生産拠点を海外から米国内に移すことを、政府により検討されている法人税減税や、州からの補助金によって、促す政策)の追い風となるだろう。競争力のある製造業は、労働集約的ではない(機械化・合理化が進んでいるので、生産量に対する雇用数が大きくはない)ため、インソーシングが雇用に与える影響は限定的だろうが、それでも経済に対する効果はプラスだ。
②米国の国際収支の改善と米ドル高:米国のエネルギー輸入の減少や、インソーシングによる製品輸入の減少(場合によっては米国からの製品輸出の拡大)は、米国の貿易収支を改善する。それは米ドル高要因となる〈※4〉。
③国際政治バランスの変化:米国のエネルギーにおける中東依存度が低下することで、米国は中東地域に対する軍事的な関与を低減させるだろう(とは言うものの、イスラエルの存在や、イランの核開発など反米的な動きの抑制のため、軍事的に完全に引き揚げるわけではない)。これが米軍事費の縮小により米国の財政赤字を改善する方向で働くと期待されるが、中東地域の政治情勢が不安定化するリスクもはらむ。一方、米国のエネルギー輸入減少による石油・天然ガス価格の抑制効果は、ロシアに対する政治的牽制として作用すると考えられるうえ、インソーシングの進展は中国に対する政治的カードとなると見込まれる。また、もしシェールガスを輸出する場合に、同盟国・友好国に限る、という形をとれば、外交交渉上有利となるだろう。
④エネルギー産出国の没落:米国のエネルギー輸入の減少に加え、世界的に太陽光、風力などのクリーンエネルギーや、他の代替エネルギー(バイオマス、メタンハイドレートなども含めて)の開発は一段と進むだろう。省エネルギーに対する取り組みもあって、ロシア、中東などのエネルギー産出国の経済には、逆風となるだろう(決してそういった諸国の経済が、短期的に景気後退に陥る、と考えているのではなく、長期的に世界における地位が徐々に低下していくだろう、と見込んでいるのである)。

※2 もちろん、ガス輸出の積極化による経済的な恩恵を享受すべきであるとか、ある程度のガス量を確保できれば、残りは前向きに輸出して良いのでは、との意見も多く聞かれる。
※3 シェールガス革命の米国経済に与える効果については、種々の試算はなされてはいる(IHSコンサルティング社の2012年10月時点の試算によれば、シェールガスを含めた非伝統的なエネルギー産業は、既に180万人の雇用を産んでおり、2020年末には300万人の雇用に拡大している、とされている)。ただし先行きは極めて不透明であり、数値的な試算は余り意味をなさないと考えるべきだろう。
※4 米国政府が輸出拡大や国際収支改善の意向を表明すると、すぐに「米国は米ドル安政策を目指している」と、既に陳腐化した主張を繰り返す向きが多い。しかしこれまで米国政府によって打ち出された政策を並べてみれば、為替以外の方法で輸出増・輸入減を図るものばかりである。その帰結は、当然米ドル高だ。

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