安倍政権誕生と東アジア地政学の展開、緒に立つ日本復活

1990年日米安保体制の変質

なぜ1990年に近代日本の4度目の転機が訪れたのかを理解するには、やはり政治の大きな枠組みが変化したという地政学的観点の導入が不可欠である。1990年に起こったことは、日米安全保障条約の変質である。1990年までの日米安保はまさに極東の防共の砦としての役割があった。日本はアジア前線における不沈空母として、政治・軍事・経済の全てにおいて米国の世界戦略の要にあり、その様に育てられた。従って1990年のソ連・共産主義世界体制の崩壊により日米同盟の役割は、一旦は終わった。それにもかかわらず日米同盟が存続し続けたが、その戦略的意義は大きく変質したと考えられる。1990年初頭、米国では安保瓶のふた論が語られていた。なぜ米国は巨額のコストを払って日本に駐留するのかという問いに対してその意義は日本封じ込めにある、と説いたのである。世界第二位の経済強国となった日本が、再度軍国化し対外膨張を始めないとも限らない。日本の核武装、軍事大国化を抑制することがアメリカの軍事戦略上緊要だ、というのである。もちろん1989年の天安門事件で刃を見せた共産党独裁国家中国の存在もあり極東の不安が消えたわけではなかったが、当時の中国は米国の世界戦略にとっては取るに足らない相手であった。

米国の最大の脅威となった日本の産業競争力⇒日本封じ込めへ

このように存続するにはしたものの、日米安保の意義は政治・軍事面では大いに希薄化した。しかし、経済となると話は全く変わってくる。1980年代後半から日本経済脅威論がまきおこった。放置すれば日本経済が米国経済・産業を衰退させるという危機感が米国を捉えた。実際、民生用電気機械、半導体、コンピュータ、自動車などの基幹産業において、米国企業は日本企業に負け続け、雇用にも深刻な影響が表れていた。金融力を飛躍的に高めた日本企業による米国の買いあさりも起きた。そこで日本の経済躍進を食い止め米国の経済優位を維持するというのは、米国の世界戦略にとっても最重要課題の一つとなった。その論理は、日本経済は官僚支配・規制・系列・土地本位制金融などの資本主義とは異質の要素により競争力を強めておりそれは不公正である、日本の異質な部分を変えさせ日本企業を米国企業とおなじ土俵で戦わせることが必要(レベリング・プレイングフィールド)という「日本異質論」である。そして実際日本に膨大な圧力がかけられ、1980年代後半以降日本の経済政策は米国対応に翻弄され続けた。そして米国の要求を大いに受け入れた。日米安保瓶のふた論は米国の対日経済戦略の遂行に当たって、大きな力となったのである。実際日本には市場経済とは相いれない前近代的経済慣行が多く残っており、それがかえって日本企業の対外競争力を高めていた。従って分析論としては「日本異質論」は正当な側面が大きかったが、それを活用した対日圧力は覇権国家米国の経済利害の貫徹そのものであった。

(3) 日本封じ込め体制は超円高により日本にデフレをもたらした

超円高が日本封じ込めの切り札となった

1990年以降20年間の「日本病」と形容される経済停滞はこの米国の経済圧力によってもたらされた、と言える。日本を経済的に封じ込めるプロセスにおいて、決定的だったのは、異常な円高であった。大幅黒字国の日本の通貨が強くなるのは、変動相場制のもとでは当然である。しかし日本の円高の場合、通貨の購買力から見て異常であった。普通は各国通貨の変動は購買力平価(購買力で計測した通貨の実力)に比べてプラス・マイナス30%が限度なのに、日本円の場合には一時2倍という異常な過大評価が与えられた(図表5参照)。それにより日本企業のコストは一気に国際水準に比べて2倍となり、日本の労働者の賃金も国際水準からみて2倍となったために、企業は雇用削減、正規から臨時への雇用シフト、海外移転などを実施した。この結果企業にとっての単位生産物あたりの労働コストは大きく低下し、なんとか競争力を維持できた。しかし日本の労働賃金はその犠牲となり、長期にわたって緩やかに低下し続け日本にデフレをもたらしたのである。

図表4は円ドルレートと購買力平価(円の実力)の推移だが、1970年代初頭の購買力平価220円の時、実際の円ドルレートは360円であった。日本企業は220円のコストで作ったものを輸出し360円稼げたわけである。それが1990年代に入ると200円の購買力平価に対して円ドルレートは100円以上の円高となった。日本企業が200円のコストで製造したものを輸出しても100円しか稼げなくなり著しい逆ザヤとなったのである。超円高が変わらない以上日本企業はコストを劇的に抑制し、購買力平価を200円から100円に引き上げる以外生き延びる道はなかった。そして日本企業は見事にそれを実現したが、それは労働賃金の引き下げ、雇用環境の悪化と日本のデフレという大きな副作用を残したのである。

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