ミャンマー 人口ボーナス再論-demographyよりhuman capital-

 中国の経済成長が爆発した2000年代初頭の生産年齢人口の増加率は、15~59歳で見ると、2000~05年は5年間で7.9%増、2005~10年は5年間で4.0%増の増加である。それぞれ、年率1.5%、年率0.8%である(注、膨大な「偽装失業」からの労働力供給があるので、労働投入の伸びは人口の伸びより大きい)。一方、実質GDP成長率(年率)は2000~05年11%、2005~10年12%であった。労働投入の“増加”が果たした役割は大きなものではなく、1人当たりアウトプットの増加の方が決定的に重要であった。

 1人当たりアウトプットの増加は、資本投入の増大と技術進歩の貢献である。労働力人口の動態よりも、技術進歩のほうが経済成長に大きく影響すると考えられる。

 (注)広東省など沿海地区の経済成長の要因分析を行った場合、労働投入の増加の効果はもっと大きいかもしれない。しかし、1国レベルで見た場合、それは低生産性の内陸から高生産性の沿海部への労働力移動、産業構造の変化による中立的技術進歩があったと捉えられる。

 中国経済の将来を考える時、今後の産業構造の転換・高度化、生産性の上昇の余地を考えると、人口動態要因が経済成長減速の理由になるとは考えられない。仮に成長減速があったとしても、それは人口構成要因で説明するのは難しいのではないか。国際経済の影響や産業構造の転換能力、技術進歩のスピード変化に原因を求めるほうが説明力が高まると思う。

3、直接投資か人口ボーナスか-東アジアの成長要因-

 人口ボーナス論が流行る前の通説は、「直接投資+輸出」が東アジア型経済成長のメカニズムと見立てた。筆者も賛成だ。東アジア諸国の雁行形態的テイクオフは、繊維の東レ、帝人、電機の松下、三洋、日立、東芝、日本電気、自動車のトヨタ、日産、本田技研、等々、日本の企業が資本も技術もマネージメント能力も束ねて現地に経営資源を移転(直接投資)した成果である。

 つまり、進出先の国に、資本の蓄積がなくても、技術の蓄積がなくても、各国経済はテイクオフしたのである。「人口ボーナス論」とは経済発展の説明原理が異なる。アジア諸国経済のテイクオフが人口ボーナス期と重なっているが、人口ボーナス期が国際資本移動が活発化した時期と重なっただけのことではないか。

 直接投資の呼び込みに成功した国が次々とテイクオフしたわけであるが、直接投資はHuman capital(人的資本)の蓄積が厚い国に来る。人口ボーナス期を迎えているかどうかに関係なく、治安が安定し、ヒューマン・キャピタルが豊富にあれば、外資が直接投資で進出した。現地生産は輸出に向けられ、輸出主導型の経済成長が始まったのである。

 人口ボーナス論がいうような貯蓄率が高くなくても、消費が活発でなくても、経済成長が始まったのである。資本は外資が持ってくる、現地生産は内需向けではなく、輸出向けであった。これが経済発展の始発点における状況であった。ヒューマン・キャピタルの蓄積が直接投資を呼び込み、経済発展の始発点を創ったのである。

 経済発展の要因としては、人口ボーナスよりも、Human capitalの方が説明力が大きいのではないか。発展途上国にあっては、経済成長の「始点」を形成するのは直接投資であろう。

 人口ボーナス論は、人によっては「決定論」のような響きを持って受け止められている。政治や経済政策の失敗で経済不振に陥っているのを、人口ボーナスの消滅のせいにするのは困る。

1 2 3 4

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 

[PR] クレジットカード比較ランキング

んかぶピックアップ
ネット証券口座比較 ネット証券口座比較
証券口座選びを完全サポート
総合ランキング1位はこちら!
FX比較ランキング FX比較ランキング
みんためスタッフが独自調査で
おすすめのFX会社を紹介!
クレジットカード比較 クレジットカード比較
おすすめのクレジットカードを
ピックアップしてご紹介!
【株式投資初心者ガイド】 ネット証券会社選びお役立ち情報!
投資家に役立つ情報が満載
【株式投資初心者ガイド】
みんかぶマガジン> 全ての記事> 外為・海外市場・先物> ミャンマー 人口ボーナス再論-demographyよりhuman capital-