ミャンマー 労働力資源を考える

◇直接投資か人口ボーナスか/東アジアの成長要因
 マレーシアは21世紀半ばまで人口ボーナス期は訪れない。フィリピンも然りだ。マレーシアの従属人口指数は2010年54.1、2050年時点でも54.8だ(フィリピンは2010年64.1、2050年51.3)。人口ボーナス論に従えば、マレーシアは2050年まで経済成長できない。しかし、こうした所見はおかしいのではないか。
 
 現状、マレーシアはタイと共にASEANの優等生と評され、早くから経済成長期に入っている。また、所得水準はシンガポールに次いで高い。1人当たりGDPは10,085㌦(2011年)だ。これに対し、いち早く1990年代後半~2000年代前半に人口ボーナス期を迎えたタイは5,395㌦、中国5,417㌦、ベトナム1,374㌦である。人口ボーナス論ではマレーシアの経済発展を説明できない。

 日本の1990年代、バブル崩壊後の長期停滞も、人口ボーナス論(「人口オーナス論」)で説明するのは無理ではないか。生産年齢人口が減少局面に入ったとはいっても(ピークは1995年)、失業者が大量発生しており、労働力の制約はない。そもそも、人口ボーナス論は“完全雇用”を前提とした議論であろう。

 人口ボーナス論では説明できない現象が多すぎる。「100年安心」の年金制度の設計などには有効な議論であろうが、数年タームの経済成長や、10年、20年という経済発展の説明には無理がある。

 また、人口ボーナス期が終了間近いとして、中国の成長鈍化を予想する人達がいる。この場合の人口ボーナスの判定基準は、生産年齢人口比率が低下し始めた時期(従属人口比率が上昇し始める時)を人口ボーナスの終点とするのであれが、中国は早くも“2010年代後半”には転機を迎える(中国の従属人口指数は2000年48.1,2005年41.7、2010年38.2、2015年37.5、2020年40.3)。しかし、今後の産業構造の転換、生産性の上昇の余地を考えると、人口動態要因が成長減速の理由になるとは考えられない。仮に成長減速があったとしても、それは人口構成要因で説明するのは難しいのではないか。

 人口ボーナス論が流行る前の通説は、「直接投資+輸出」が東アジア型経済成長のメカニズムと見立てた。筆者も賛成だ。東レ、帝人、電機の松下、三洋、日立、東芝、日本電気、自動車のトヨタ、日産、本田技研、等々、日本の企業が資本も技術もマネージメント能力も束ねて経営資源を移転(直接投資)した成果である。つまり、進出先の国に、資本の蓄積がなくても、技術の蓄積がなくても、各国経済はテイクオフしたのである。「人口ボーナス論」とは経済発展の説明原理が異なる。アジア諸国経済のテイクオフが人口ボーナス期と重なっているが、人口ボーナス期が国際資本移動が活発化した時期と重なっただけのことではないか。

 ミャンマーは、先述したように、これまで経済発展できなかったのは欧米による経済制裁の影響であって、ミャンマーに発展能力がなかったからではない。ミャンマー産品輸入禁止措置があるため、輸出できない。いくら安価で良質な労働力の国であっても、輸出できないのに直接投資で進出することは意味がない。こうした政治要因がミャンマーの経済発展を遅らせていたのであって、人口動態が主たる要因ではない。

 ミャンマーは、今後、大いなる経済発展が期待できる。それは2005年頃から人口ボーナス期に入っているからではなく、民主化に伴い欧米の経済制裁が解除された効果が大きいと思われる。

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