ミャンマー 労働力資源を考える

4、賃金

 労働力の価格である賃金を見ると、東南アジアで一番低い(表6参照)。
 縫製業C社の事例で見ると、下記のとおりである。(2012年9月現在)
   ワーカーA 89,376Ks(90㌦)/月額 〈1円≒12チャット(Kyat) 〉
       B 82,940Ks(80㌦)
       C 70,200Ks(70㌦)
   スーパーバイザー 17万Ks(170㌦)
   リーダー     16万Ks(160㌦)
   マネージャー   15万Ks(150㌦)

 無尽蔵とみられるワーカーは月額7千円であるが、職階による賃金格差は大きい。なお、非製造業のスタッフ賃金は製造業のワーカーより高いようだ。
 
 中国と比較しよう。中国の縫製業ワーカーの賃金は月額3~4万円である。ミャンマーは中国の5分の1の安さだ。ただし、ミャンマーの労働生産性は低く中国の7割程度なので、単位労働コストは3分の1である。逆に言うと、中国の賃金はミャンマーに比べ5倍も高いが、実質賃金は3倍高である。ミャンマーの生産性が低いのは、ミシンなどの機械の性能が低いからだ。生産性向上の余地は大きい。なお、品質は中国より良いといわれる。

 今後、賃金(名目)は上昇していこう。2000年代の中葉まで激しいインフレ-ションに見舞われた。消費者物価指数は年間で3割、5割の上昇だ。2009年以降は小康状態にあるものの、それでも年率5~10%の上昇が続いている。そのため、2012年4月には公務員賃金が引き上げられた(月3万チャットの生活手当支給)。また、2011年10月の法改正で、労働組合の結成やストライキの権利が認められた。

 企業経営者にとっては賃金上昇のリスクはある。今後は、経済発展と共に賃金上昇が進むであろう。しかし、その場合でも、高能率機械の導入等で生産性が向上するので、その分単位労働コストの上昇は抑制され、国際競争上、実質賃金の有利性は続くであろう。

 ところで、300万人とも400万人とも言われる、海外流出の出稼ぎ労働者の賃金はどのくらいか。タイやマレーシアで合法的に雇用されている労働者の場合(縫製業)、月額20万チャット程度(2万円)のようだ。ミャンマー国内の約3倍である。

5、人口ボーナス論の限界

◇ミャンマーの人口ボーナス期は2005~2050年
 本稿の前半で“生産年齢人口”の大きさを強調したが、これに関連するが、日本では10年前くらいから「人口ボーナス」論が流行っている。ミャンマーの実態に照らして、この仮説を検証したい。

 「人口ボーナス」とは、子供と老人が少なく生産年齢人口(15~64歳)が多い状態を指し、子供の扶養が減り、労働人口が増え、高齢人口の割合が高い水準に達する前の、労働力資源が豊富で扶養負担が軽い経済発展に有利な時期を言う。(注、0~14歳+65歳以上を「従属人口」という)。
 
 通常、一国の出生率が急速に低下し高齢化が進む過程で現われる(ただし高齢人口の割合が高い水準に達する前)。そして、生産年齢人口がそれ以外の人口(従属人口)の2倍以上になる状態を指す(従属人口指数の逆数で2.0以上、つまり従属人口指数が50を切った期間)。(注、従属人口指数が低下し始めた時点を人口ボーナス期の始点とする議論もある)。

 日本は1960年代の高度成長期に人口ボーナス期を迎えた(注、日本の従属人口指数は1950年68、1960年56から、1965年47、1970年45に低下した)。国連の人口推計によると、アジア諸国では、韓国は1990~2030年、タイ1995~2030年、中国2000~2030年、ベトナム2005~2040年、インドネシア2010~2040年に人口ボーナス期を迎える(定義:生産年齢人口が従属人口の2倍以上の期間)。

 ミャンマーは、生産年齢人口が従属人口の2倍を超えるのは2005年である。そして老齢化により2倍以下に低下するのは2050年頃である。つまり、人口ボーナス期の始点は2005年、終点は2050年である。「人口ボーナス論」に従えば、この期間、人口構成は経済の成長要因になるということだ(図1表7参照)。

図1 各国の従属人口指数

表7 ミャンマーの従属人口指数の長期推移(単位:%)

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