☆ビジネス・レポート第四十四号☆

 次に、「辰」の字義に移りましょう。
 「辰」の金文を見ると、蜃(しん、おおはまぐり)の象形文字で陽気を受けて大蛤が足の肉を貝殻から出し、ひらひら動かしている形です。
古代では大きな二枚貝の貝殻は農具として用いられました。
ですから農具である「辰」の上に「曲」が乗ると「農」になります。
この「曲」は頭を使うという意味の漢字ですから、「農」は頭を使って収穫を上げるという意味です。
今年はTPPの議論が一段と深まりますが、本来の農の字義に帰って、農業の自由化が進んだら一層頭を使って生産性をあげねばなりません。

 また「辰」という字は、説文学上から言うと会意文字で、雁垂(がんだれ)の次に書いてある二は、上・天・神・理想を表す指事文字です。また「辰」は伸・振・震と相通ずる意味があります。
後漢末の辞書である『釈名』(しゃくみょう)によりますと、「辰は伸なり。物みな伸舒(しんじょ)して出ずるなり」とあります。
辰は伸に通じ、陽気が動き、草木が旺盛に伸長していく様を表わしています。
さらに、説文解字に「辰は震なり。三月陽気動き、雷電振るう。民の農時なり、物皆生ず。」とあります。
陰暦の11月の冬至(とうじ)の頃に、微かな陽気が萌し、それが春になり勢力を増し、秋冬以来の陰気を突き破る陽気の象徴たる春雷となってひびきわたります。
まさに、ここにおいて陰陽が逆転し、新しいものが芽生えます。

 易経の「震」の卦(け)にあるように、最終的には「震は亨(とお)る」で結果良しであります。
誰もがはげしい雷に恐懼(きょうく)するわけですが、よく戒慎(かいしん)すなわち言動を戒(いまし)め慎(つつし)み、泰然自若としてやるべきことをやれば、結果的には良くなるということです。

 では、過去の壬辰の年はどんな年であったかを見てみましょう。
 前回の壬辰の年は60年前の1952年です。
この年は、戦後日本を支配したGHQが廃止され、サンフランシスコ平和条約が発効した年でした。
ようやく、日本は占領地から日本国という国号を得たのです。
まさに、大きな時代の転換点になったのです。
日華平和条約や日印平和条約の締結、IMFや世界銀行に加盟と国際社会に本格的に復帰した年なのです。
 120年前の壬辰の年すなわち1892年は、第四代内閣総理大臣の松方正義が閣内分裂で辞職し、第二次伊藤内閣が誕生します。
松方総理は、在任中に増税や政府予算の圧縮などを行い、国内に深刻なデフレを起こし、世論の反感を買い、辞職に追い込まれたのです。
伊藤内閣は、2年後の朝鮮半島をめぐる日清戦争発端の種を蒔きました。
 上述のように、壬辰の年は、陰陽が逆転し、新しいものが芽生える年です。
これまでの常識・価値観が通用しなくなり、全く新しい発想や価値観が求められる年になるのです。
良きにつけ悪しきにつけ内在するものが増大して激しく振れる年ですから、人事に気を付け戒慎しながら、理想に向って様々な抵抗や妨害に動ずる事なく従来の社会・経済システムをより良きものに変える端緒を開くべく、一歩一歩前進すれば結果は良くなります。

 こうした年の年頭にあたり、我グループ全役職員は、次の三点を肝に銘じていただきたい。
 第一に、各社の組織全般に影響を与える新たな人事異動は必要最低限に。
 第二に、世界経済は当面混沌としており、その中で大きな業界の再編成なども起こりやすくなります。
とりわけ、金融業界は世界中で業界勢力が一変する可能性があります。我々のチャンスはそこにあるのです。
 第三に、我々は我々の掲げたビジョンと戦略を忠実に履行しなければなりません。
慎重かつ忍耐強く、その遂行を妨げる様々な困難を超克すべくあらゆる知恵と工夫と努力を惜しんではなりません。

SBIホールディングス株式会社 
代表取締役 執行役員CEO 
北尾 吉孝(SBI大学院大学学長)

 
このレポートは2012年1月24日に配信したものです。

このページのコンテンツは、SBIホールディングス㈱様の協力により、転載いたしております。

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