[ミャンマー産業予測の基礎知識]繊維貿易は成長産業か

 世界経済は、1970年代に戦後のブレトンウッズ体制が崩壊し、国際資本移動が活発化、1980年代後半以降は「直接投資」が加速した。「貿易」の時代から「直接投資」の時代に移ったのである。輸出ではなく、現地に行って工場生産を行う。特に中国の場合、安価で豊富な労働力、そして人口10億以上の巨大な消費市場を有しているので、日本や米国でモノを作って中国に輸出するのではなく、中国に工場進出し、中国国内でモノを作るのが合理的な経営判断になったのである。市場開放は失業増大を意味せず、むしろ雇用創出につながったのである。
 
 直接投資の時代になっているにもかかわらず、貿易の理論を適応したのが、間違いの元であった。時代の変化を考えず、理論の適応を間違えるのはよくあることである。さて、改革開放に直面しているミャンマーの場合はどうであろうか。
 
 ミャンマーは現在、経済改革を急ぎ、外資企業を誘致するため、「外国投資法」(外資法)の改正に着手している。しかし、改正作業は難航しているようだ。外資導入は従来からの地元企業を圧迫する、地元企業を保護せよという反対の声があるためである。テイン・セイン大統領は外資導入を今後の経済発展の牽引役にしたいのであるが、国内地元企業の既得権益擁護(特に下院)が外資法の規制緩和を阻害している構図である。
 
 外資法を改正しても、外国から縫製製品が大量に流入し、既存縫製企業の倒産を招くわけではない。むしろ、外国企業の導入は、近代的な技術、資金、マーケティングなど、従来ミャンマー国内に不足していた経営資源を持ち込むことになるので、ミャンマー縫製業の発展要因になるであろう。

 ミャンマーの労働市場は流動的である。筆者が9月にヤンゴンで行った縫製工場調査では、月間離職率が20%と高かった。外資企業が増えると、競争から賃金は上昇するであろう。個別の経営者からすれば、これは辛い事であろう。しかし、労働力の企業間移動の激しさは、既存の国内企業にも離職者の採用を通して新技術移転のメリットをもたらす。労働市場のメカニズムで新技術が波及し、ミャンマー全国の技術水準が高まる。こうした競争システムの下で、ミャンマーの縫製業は国際競争力を高め、世界市場でシェアを高め、大発展する可能性を秘めている。既存の地元企業の中からも、経営能力さえあれば、大企業に発展するものが現われるであろう。

◇2015年ASEAN市場統合問題
 ミャンマーの縫製業が問題にすべきは、むしろ、2015年のASEAN市場統合であろう。ミャンマー縫製業の現状はCMP(cutting,making and packing)という委託加工方式の経営である。主な原料(生地)を輸入し、これを国内で裁断(cut)、縫製(make)、梱包(pack)して、製品を全量輸出するという委託加工貿易である。
 
 ミャンマーの現状の技術水準、及び市場規模であれば、市場統合になった時、隣国タイから、原料(生地、付属品)が無税で自由に輸入され、ミャンマー縫製業は半永久的に付加価値の低いCMP方式が続くであろう。
 
 逆に、外資規制が緩和され、ミャンマーの縫製業の競争力が高まり、より大規模な市場規模(生産規模)になったほうが、現地で原料(生地)を供給しようとする動きも出てくるのではないか。外資導入は縫製業のCMP方式からの脱却を導く可能性さえある。

 経済の自由化は、巨視的に見れば、その国に利益をもたらす。経済改革、外資法改正におけるテイン・セイン大統領の勝利が、ミャンマーの経済発展をもたらし、国民を豊かにする道であろう。

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