[ミャンマー産業予測の基礎知識]繊維貿易は成長産業か

4、中国のカントリーリスクとミャンマー経済のテイクオフ

 ミャンマーは過去にも縫製産業の発展が加速した時期があった。1997年の「アジア通貨危機」以降である。インドネシア経済が通貨危機で破たんし、直接投資で進出していた多くの外国企業が逃げ出した。その時、台湾や香港のアパレルメーカーは、バングラデシュやミャンマーに工場移転した。筆者は1999年3月にミャンマー経済調査を行ったが、インドネシアから移転してきた縫製企業が1,000人単位で雇用を増やしているのを見て、感動したことを覚えている。(拙著『走るアジア遅れる日本』日本評論社2001年、第10章参照)。

 インドネシアは人口2億人を擁し、巨大な経済力がある。そこからのちょっとした産業逃避でも、零細な経済のミャンマーから見れば、大きな効果があったのである。インドネシアの「偉大さ」を思ったものである。

 最近の国際経済の話題は、中国のカントリー・リスクである。賃金上昇が激しい、労働力不足、ストライキ等労働争議も増えている。そこで、「リショアリング」や「チャイナ・プラス・ワン」が話題になっている。モノづくりの拠点を中国から米国や日本に戻す動きを「リショアリング」と言っている。たしかに、一部そういう動きがあるのは事実である。また、チャイナ・プラス・ワンのひとつとして、「安価で良質な労働力」が売り物のミャンマーに目を向ける人が増えている。

 先に見たように、中国の繊維産業は巨大である。衣類の輸出額は1,433億㌦である(表2参照)。仮に、その「1%」がミャンマーに移転するようなことがあれば、ミャンマーの衣類輸出は14億ドル増える。つまり、現状8億㌦の3倍近い輸出額になる。たった1%の移転効果である。中国も「偉大な国」である。いずれにせよ、ミャンマーへの直接投資の増加、産業発展には追い風である。
 
 米国のミャンマー製品輸入制限の解除、中国のカントリー・リスクは、ミャンマー経済のテイクオフ要因となろう。

 ただし、逆は真ならずである。中国から逃避した工場の効果で、ミャンマーの縫製品輸出が2倍、3倍になった事を見て、すは「中国崩壊」と早合点してはいけない。99%は中国に残っているのである。国の大きさの格差からくる現象であって、直ちに「中国崩壊」説に結びつくわけではない。中国崩壊論者(狼少年)の希望的観測と経済学は別である。「脱中国」の雪崩が発生した時、それはアジア経済の崩壊の時でもあろう。

5、直接投資と貿易自由化を区別せよ

 -外国投資法の規制緩和が経済発展のメカニズムを創り出す‐
 
 中国のWTO加盟が決まったのは2001年末であった。その頃、これで中国は崩壊すると予言した「著名」なアジア経済学者(日本人)がいた。WTO加盟は世界のルールに従うことを意味し、資本・貿易の自由化を意味するからである。しかし、現実には逆に、WTO加盟で中国経済は大発展した。GDPはそれまでの8~9%成長から、2003~07年は二桁成長(10~14%)に高まった。中国が世界のルールに従うことが明らかになったので、外国企業の直接投資が一段と増え、工業生産力が急上昇し、中国は「世界の工場」の地位を不動のものにした。
 
 その著名なアジア経済学者は、理論の適応を間違えたのである。確かに、貿易自由化は、海外から家電製品や乗用車が怒涛のように中国に輸入され、国内の競争力の弱い国有企業は倒産し、大量の失業者が生まれ、経済は大混乱、共産党支配の体制危機に発展する危険もあった。しかし、上述のように、そうはならなかった。時代が変化し、貿易の時代から、直接投資の時代に変化していたのである。
 

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