新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~ 世界随一の米国経済の中長期展開力 ~

第六章 米国の長期成長構造は健在

国際分業の進展と高まる対外依存

今後の中長期的な米国のポテンシャルを探るためにも、過去の経緯を見ることは重要である。1970年代以降の米国経済は、空洞化の歴史であった。米国企業が世界に舞台を移すことによって、大きく体質を変えていったのである。図表40によって製造業の輸出比率と輸入依存度を見ると、1960年代までは、どちらも10%台で推移していたが、現在は70~80%台にまで上昇している事が分かる。米国で使われる製品のほとんどが輸入品であり、また米国で製造された物のほとんどが輸出されている状況にある。つまり、完全なグローバル分業の時代になったといえる。これは、米国だけでなく日本においても同様である。
米国の産業別の雇用を見ると(図表41)、教育・医療や専門サービス、観光・娯楽などの雇用が増加しており、製造業から内需型の雇用にシフトしていったことがわかる。産業別のGDP構成比を見ると、製造業は長期的に低下しており、その分、金融や不動産、教育サービス、医療などの非製造業が増加、やはり産業の構造が変わったことを示している。その中で成長産業であるはずの情報産業の雇用が減少しているのが特徴的である。技術革新による生産性の上昇と海外への雇用移転の影響と思われる。

低生産性内需型の比重が高まる雇用構造の変化

分業構造が変われば、経済構造が変わり、生活や消費スタイルも変わり、雇用構造も変わっていく。図表42に1980年を起点とした製造業と非製造業の雇用数推移を示すが、両者の好対照の動きが鮮明である。グローバル分業による空洞化で、製造業の雇用が一貫して低下する一方で、非製造業の雇用は継続的に増加してきた。日本では、バブル崩壊後の1990年代から製造業の雇用が大幅に減少、非製造業も1990年の後半から減少に転じている。グローバリゼーションに対応して国内の産業構造をシフトさせた米国と、対応が遅れている日本との違いがはっきりと見られる。

消費比率上昇はマイナスではない

その他、経済構造上のトレンドとして注目される変化は、消費比率の上昇である(図表43)。民間の消費支出のGDPに対する比率を見ると、第二次世界大戦後、60%前後で推移してきたものが2000年代に入って70%を超えてきている。消費比率の上昇は即、投資比率の低下であるので、この現象を捉えて米国は、投資をさぼり消費ばかりを行う国という批判が横行している。しかし詳しく見ると、これも適切評価ではないことが分かる。グローバル化により、工場などの設備投資を国内で行うことは少なくなる一方、人材を投入したソフトウェア等の知的投資は増加し、それがアップル、グーグル、フェースブック等新世代の知的産業、企業を生み出している。問題はそうした知的資産に対する支出が、会計計算、国民所得計算上、ほとんど投資としては認識されないことである。会計上の投資とは支出額を資産計上(capitalize)し、費用を将来に繰り延べることである。そして資産計上できる知的支出は外部から購入したソフトウェアパッケージなど、極めて限られ、大半の知的支出は国民経済計算上、消費として計上される。知的集約が進み、教育・技術開発、ソフトウェアなどへの投資の比重が高まれば高まるほど、経費として認識される支出が増加する。

帳簿上人的投資は資産として残らないものの、目に見えない知的資源として、国民経済の大きな財産になっていることの重要性は、非常に大きいといえよう。
図表44によってGDP計算上のIT投資の推移を見てみよう。民間設備投資(非住宅)における情報機器とソフトウェア投資の比率は、1980年代初めまで10%台で推移していたが、現在は40%近くにまで上昇、米国では圧倒的に情報関連の設備投資が多くなっている。また、情報関連の設備投資のうち、ソフトウェアが占める割合は、1960年以前はゼロであったものが、現在は50%程度となっている。しかも先に見たようにソフトウェアに対する支出でも、他社から購入したものは資産として計上できるが、自己使用の場合は消費となり費用として計上される。現在のような高度な情報化社会において、知的に蓄積された資産を正しく計測できる手段はないのであるが、このように考えると、先進国においてハードの投資の割合が低下し、ソフトつまり知的資産への支出の比率が高まり、会計計算上消費の比率が上昇するのは当然のことである。しかし、それは決してマイナスのことではない。グローバリゼーション、空洞化、ソフト化などで、頭脳を米国に残し、手足を海外にシフトするという構造的な大きな変化の結果、輸出・輸入比率の上昇や製造業の位置づけの変化、消費比率の上昇などを引き起こしたものの、これらは米国の衰退の兆しではなく、海外を舞台に広く経済活動を行ったことによる成果の現れといえよう。米国は、日本や成長著しい中国と比べても、未だに、格段の活力のある経済大国であり、その地位は全く揺るぎないものであることは確かである。

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 

[PR] クレジットカード比較ランキング

んかぶピックアップ
ネット証券口座比較 ネット証券口座比較
証券口座選びを完全サポート
総合ランキング1位はこちら!
FX比較ランキング FX比較ランキング
みんためスタッフが独自調査で
おすすめのFX会社を紹介!
クレジットカード比較 クレジットカード比較
おすすめのクレジットカードを
ピックアップしてご紹介!
【株式投資初心者ガイド】 ネット証券会社選びお役立ち情報!
投資家に役立つ情報が満載
【株式投資初心者ガイド】
みんかぶマガジン> 全ての記事> 市場解説・相場展望> 新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~ 世界随一の米国経済の中長期展開力 ~