新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~ 世界随一の米国経済の中長期展開力 ~

第五章 成長制約、米国の債務問題をどう考えるか

過大視される米国債務問題

現在の米国には、過去の過剰な債務やバブルの崩壊による調整など成長を阻害する要因が残っていることは事実である。しかし米国債務問題は過大視されている。米国の実質負債成長率を見ると、景気サイクルと全く一致していることがわかる。図表32によってそれを観察すると、クレジットサイクルのボトムが景気サイクルのボトムになっている。そして現在の大きなクレジットサイクルの波は、ボトム近辺にあると思われる。

先ず連邦政府債務を見てみよう。図表33によって債務残高対GDP比を見ると、2010年にはほぼ100%と、第二次世界大戦直後に次ぐ水準に高まっている。但し、図表34によって債務の利払い負担対GDPでみると、その負担の重さは1980年代半ばの4%弱から2%弱へと大きく低下している。第二次大戦後と同様、成長とインフレ抑制による低金利が維持されれば、政府債務のソフトランディングは十分に可能の水準と言える。

大純債務国でありながら大幅黒字(所得収支)

次に対外債務を見てみよう。7、8年前のピーク時に、GDPに占める経常赤字の金額は7%近くにまで上昇、「ドルの垂れ流し」と言われた時があった(図表35)。現在も、累積経常収支が8兆ドル強と、GDP比で6割以上の対外純債務を保有している世界最大の債務国である。通常であれば、利払いに追われて輸入も出来ないような状況に陥るはずだが、一方で、所得収支の黒時幅の増加が続き、2011年は2,210億ドルという過去最高の黒字額を計上している(図表36)。

つまり、バランスシート上に膨大な借金を抱えながら、損益計算書の金融収支は大幅な黒字という矛盾した状況にある。企業のサステイナビリティーにとって重要なのは、バランスシート上の負債額ではなく、フローとして発生する債務に対するコストである。同様のことは各国の財政収支や対外収支に関しても当てはまり、金融収支が大幅な黒字であれば債務残高が大きくても問題ないと言える。米国では対外投資から得られる所得が多額である一方で、借金という対内投資に対して支払う金額が少ないというギャップが、金融収支(所得収支)の黒字をもたらしている(図表37)。そのため、借金の残高が融資残高より大きくても、収支は黒字になっている。米国の最大の収益源泉は、過去に蓄積した対外直接投資によるもので、その残高は4.5兆ドル(2010年末)となっている。そして、対外直接投資からの収入は4,300億ドル、収益率は9.8%と高い。また、外国人による米国への直接投資額は2.7兆ドル、それに対する年間の利息配当支払額は1,500億ドルで5.7%と収益率は低く、その差額が黒字としてもたらされている。これは、グローバリゼーションによる恩恵である。例えば、米国最大の時価総額のアップル社は、そのほとんどを海外で生産している。従業員数も海外のほうが圧倒的に多く、海外からの利益は、ライセンス契約や特許使用料もあるが、ほとんどが直接投資のリターンである。これらの投資収益は、米国の対外債務に対する支払いを遥かに上回る収入となって、米国に恩恵をもたらしているのである。

米国家計純資産は債務の4倍

家計部門の債務も大きい問題とされている。その際まず指摘されるのが家計の可処分所得に対する債務残高の割合で、50年ほど前は30%程度であったが、バブル時のピークで130%程度にまで上昇、現在は120%前後となっている(図表38)。しかし、この高い債務比率により、家計はどこかで破綻するという懸念は極めて一面的なものである。現在の家計の債務額は13.8兆ドルで、名目GDPを少し下回る程度である。可処分所得はそのGDPの約7割程度であるが、家計債務の大半は、資産取得のための借金である。したがって、負債よって取得した資産の価値がどのくらいあるのか、またその資産から得られる所得がどの程度あるかによってバランスシートの健全さは全く違ってくる。家計の総資産は71兆ドルであり、負債14兆ドルを差し引くと57兆ドルが米国家計保有の純資産、そして純資産は負債額の14兆ドルの4倍に上っており、問題にならない水準と言える(図表39)。

また家計の資産からの所得は年間2.2兆ドルで、労働所得(福利厚生を除く)6.7兆ドルの3分の1と巨額に上っている。71兆ドルの資産が2.2兆円の収入を生み、その資産を取得するための負債が14兆ドル(その借金の利払い費用は数千億ドル程度)と、全体的に考えれば、米国家計債務は何の問題もない水準といえる。低所得者の債務が増加し、住宅価格の下落によって負債を返せない階層が増加しているという状況はあるものの、それは限界的なものと考えることができる。他方、米国の企業部門は膨大な資金余剰を抱えている。このように米国の債務問題を詳しく見ていくと、多くの専門家、メディア、投資家等が共有している米国債務懸念と言うものの多くは、一知半解のものと言えるのでないか。特に日本人にその傾向が強いのでないか。

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