新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~ 世界随一の米国経済の中長期展開力 ~

空前の企業資金余剰と株主還元

一方で、民間貯蓄は過去最高額の状態にあり、特に、企業の貯蓄額は、極端な資金余剰となっている。図表12に見るようにリーマンショックで景気が落ち込んだにもかかわらず、米国企業のキャッシュフローは顕著な増加を続けている。何故ならば、売上が落ち込んでも雇用の削減によりキャッシュフローを維持、一方で、設備投資を抑制したため、資金余剰がさらに進んだのである。企業はその余剰資金の多くを自社株買いに充ており、それは株式時価総額に対して4%と言う高い比率となっている。これに米国株式の配当利回りの2%を加えると、企業は時価総額の6%を投資家に対して還元していることになる(図表13)。また家計の貯蓄率もリーマンショック後大きく上昇し、その後低下傾向にあるものの、過去20年間の中では高水準が維持されている(図表14)。

このように見てくると需要が弱いのは、お金が無いわけはなく貯蓄を行って消費を抑制しているためであり、その心理状態に問題があるといえる。ただ、短期的な経済指標を見ると、新規受注DIや新規失業保険申請件数において、ようやく改善の兆しが見られるようになってきた(図表15、16)。2012年の春先の新規失業保険申請件数は35万件水準まで低下(リーマンショック後のピークは65万件)、これは過去から見ても、景気が力強く拡大する直前の水準に近いものとなっている。以上のことから、米国が景気後退の局面に再度向かう可能性は僅少といえる。

割安感強まる住宅

景気回復の推進力としては、住宅投資の改善が重要なポイントになる。対GDP比率で2.3%台にまで落ち込んだ住宅投資が、3~4%台へと回復するだけでも、米国経済への浮揚力は大きく高まる。住宅価格の回復の兆しは見られないが、割安であることは確かである。図表17によって名目GDPに対する家計保有不動産時価の割合を見ると、1990年代は1.2倍程度であったものが2000年代のピーク時で1.9倍程度まで上昇、現在は、再び1.2倍に戻ってきている。全米不動産業協会が出している住宅取得可能指数を見ると(図表18)、1990年代は120~140の間で推移、その後の住宅バブルにより100まで低下、現在は200台にまで上昇しており、取得能力から考えると著しく割安な状態にあることを示している。また、住宅ローンの金利も低下、長期的に考えれば、住宅を購入するチャンスでもあるといえよう。住宅価格に対する所有者賃借料比率の水準を見ても、過去最低水準にあり割安さが伺える(図表19)。回復の兆しが見られないのは、在庫水準が高いためである。抵当で差し押さえられた住宅物件が、大きな売り圧力となって住宅価格を引き下げる要因となっている。住宅ローン延滞率はピーク時から見ると低下したものの依然として高水準で、住宅抵当差押え比率を見ても抵当物件が減っていないことを示している。ただし、長期的に見れば転換の兆しも見られる。空き家件数を見ると、長期トレンドの傾向線から乖離していたが、その乖離幅が小さくなってきている(図表20)。

持ち家比率がいつ上昇に転ずるか

2010年の世帯増加数は、前年比114万戸であったが、2011年12月時点の住宅完成戸数は60万戸と新規件数は落ち込んでおり、在庫の改善を示唆している(図表21)。またピーク時には69%弱あった持ち家比率は、現在は66%へと急低下している(図表22)。クリントン、ブッシュ政権において、オーナーシップソサエティが推進され、住宅取得がブームとなったことから持ち家比率が上昇、そして、サブプライムローンが低所得者の持ち家取得を支えたのであった。その後、バブル崩壊により持ち家比率が急速に低下して、住宅需給が悪化した。一方、住宅保有による税制面や金融面のメリットに変わりはない。したがって、どこかで底入れし回復する状況に転じるはずである。過去を振り返ると1984年に持ち家比率が下げ止まり回復した局面があったが、2012年も同様の状況になると期待される。住宅には地域性があり、全国平均が停滞したままであっても、不足した地域での回復が見られれば新規での需要増につながるはずである(図表23)。劇的な回復は期待できないが、回復の条件が整いつつあると言える。バーナンキFRB議長が行っている金融緩和の最大の目的は、持ち家比率を引き上げるような需給環境を作ることである。以上のことから、米国経済の最悪の局面は終了したと考えられる。

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 

[PR] クレジットカード比較ランキング

んかぶピックアップ
ネット証券口座比較 ネット証券口座比較
証券口座選びを完全サポート
総合ランキング1位はこちら!
FX比較ランキング FX比較ランキング
みんためスタッフが独自調査で
おすすめのFX会社を紹介!
クレジットカード比較 クレジットカード比較
おすすめのクレジットカードを
ピックアップしてご紹介!
【株式投資初心者ガイド】 ネット証券会社選びお役立ち情報!
投資家に役立つ情報が満載
【株式投資初心者ガイド】
みんかぶマガジン> 全ての記事> 市場解説・相場展望> 新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~ 世界随一の米国経済の中長期展開力 ~