新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~ 世界随一の米国経済の中長期展開力 ~

格差の原因と正しい対応

ただし、米国内での所得格差の拡大は気になるところではある。図表45によって教育グループ別の所得推移を見ると、学士や准学士・専門学校など高教育を受けた人の所得は上昇を続けており、高校卒業以下の所得との乖離が進んでいる。これもグローバリゼーションの結果である。単純労働は、海外の低コスト労働との競争や海外への雇用シフトによって賃金に引き下げ圧力が働きがちである。他方グローバル分業において競合先のない知的労働の賃金には上昇圧力が働き、所得格差の拡大に結びついている。高所得者に対する税率の引き上げ、最低賃金引き上げ、低所得者への財政的支援なども方法のひとつではあるが、そうすれば海外との競争に負けてしまう恐れがある。正しい解決策は、低所得者を教育によって「スキルドレーバー(熟練労働者)」に変えていくことであり、これが唯一の方法であろう。同一労働・同一賃金がますます貫徹していく国際労働市場において、高所得者から低所得者へ裁量的に所得を再分配することは困難であり、格差は現実として受け入れざるを得ない。そういう意味においては、米国経済は冷酷、非常に効率的といえる。グローバリゼーションの進展によって、米国内の雇用は、益々合理的になってきており、創造的破壊が極めてスピーディに展開されているのである。

インフレが産業間の所得配分を是正する

それでは生産性の伸びが高くはないが国民生活に必須の産業への資源配分はどのように行われるのだろうか。それには生産性の伸びの劣位を補完するインフレが必須となる。生産性が最も高いのは製造業であるが、賃金が最も抑制され、雇用が落ち込んでいるのも製造業である。他方非製造業は、生産性はそれ程高くないが故に、ユニットレーバーコストが上昇し、雇用も増加するという状況が続いている。

この辺りの事情を図表46の日米の物価比較をすることで観察してみよう全体では日本は長期デフレの状態にあり、米国は依然として物価上昇が続いている。しかしセクター別に日本と米国とを比較すると、衣料、自動車、通信に関しては、ほとんど同じように物価下落傾向で推移している。米国も日本と同様に、グローバリゼーションや技術革新の恩恵を受け、コストは下がっているのである。換言すれば日本がデフレに陥ったのは、IT革命やグローバリゼーションによるものではない。日本と米国の物価推移において違いがみられるのは、食品、輸送、住宅、医療、教育、教養娯楽、サービスなどの内需型の、あまり生産性の高まらない産業においてである。米国において、内需型産業の物価が上昇しているのは、生産性が上がらない産業の労働者でも賃金が生産性を高めているセクター並みに上昇するというメカニズムが存在するためである。40年ほど前に、日本で「生産性上昇率格差インフレ」という議論がなされたことがあった。異なる産業間において賃金水準が同様に上昇するためには、生産性の上昇率が低い産業においては賃上げを可能にするインフレが必要であり、実際低生産性セクターのインフレ率が高くなると、という議論であった。国民生活に必要な産業の生産性上昇が必ずしも高くないケースは多い。その場合、当該産業において十分に雇用を確保し国民にサービスを提供するためには、選択的インフレは必須である。生産性上昇率が低いセクターにおける所得配分を高めるために必要なことは、増税ではなく価格上昇(インフレ)である。これが、所得配分の最良のメカニズムである。米国では、生産性の上がらないセクターでの賃金インフレが生じて、従来にもまして教育や娯楽、医療、サービスが充実し、より豊かな消費生活がおくれるようになった。これに対して日本では、逆に、サービス業の価格が下がったことにより、サービス産業の賃金が低下し、サービス産業の質が低下し、国民生活レベルも低くなっているように思える。

以上をまとめると米国は、グローバリゼーションやIT革命、生産性の上昇により所得を一段と高め、国内の産業構造、雇用構造の変革、適度のインフレ等を通して、その果実を国民に配分するチャンネルを持っているといえる。サブプライム問題のような行き過ぎから調整に甘んじてはいるが、米国経済の転換能力や長期的な潜在能力をまでも疑う必要は全く無いと思われる。

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