東映アニメーション 高橋 浩社長インタビュー

海外戦略のキーワードは
「グローバル」「ボーダレス」「ローカライズ」


東映アニメーション株式会社
代表取締役社長
高橋 浩(たかはし・ひろし)

1943年、広島県出身。上智大学を卒業後、67年にNETテレビ(現テレビ朝日)に入社。編成部長、マーケティング室長、広報局長、BS朝日常務を経て、2002年テレビ朝日を退職。同年、東映アニメーションに専務として入社し、翌2003年、代表取締役社長に就任、現在に至る。趣味は音楽。
 
 

日本初のカラー長編アニメーション「白蛇伝」製作以来、半世紀に渡って日本のアニメ業界をリードする東映アニメーション。今回は、同社の高橋浩社長にご登場いただき、ヒット作を連発する秘訣を伺った。

御社の事業内容についてお話下さい

当社は1956年に誕生してから50年以上に渡り、わが国のアニメーション製作の第一線で多くの作品を製作してきました。その数は劇場作品200本以上、テレビ作品200本近く、総話数にして1万話を超え、日本最大、世界有数のコンテンツを有しています。
「狼少年ケン」や「魔法使いサリー」「銀河鉄道999」「ドラゴンボール」「セーラームーン」など、皆様がかつて心をときめかせた作品も多いと思います。これらの中には時代を超えて、親子2代で楽しんでいただいている作品も多く、アニメーション製作会社としてこれ以上の喜びはありません。

御社の経営理念はどのようなものですか?

「世界中の子どもと人々に『夢』と『希望』を与える“創発企業”となることを目指す」。そして「21世紀映像世界の主軸としてのアニメ業界No.1になることを目指す」。さらに「デジタル画像表現のディファクトスタンダードの位置づけとなることを目指す」としています。

事業の優位性はどのようなところにあるのですか?

1つは世界に誇る企画製作力でしょうか。当社は半世紀以上にわたる歴史に蓄積された製作ノウハウを持っており、ヒットメーカーとして魅力あるコンテンツを創造しています。そして日本最大・世界有数のライブラリーを保有しているコンテンツホルダーとして、それらを多方面で積極展開し、キャラクタービジネスではトップランナーであると自負しています。
しかも現在では、これまで蓄積してきたコンテンツの全てをデジタル化しています。これによりコンテンツの活用機会は飛躍的に伸びてきました。またアメリカ・フランス・香港・フィリピンに現地法人、上海に駐在員事務所を設置し世界6拠点体制で海外事業を拡大しています。

なぜ日本のアニメ作品は世界で評価されるのですか?

日本にはもともと「漫画文化」が根付いていて、静止画の素晴らしい作品が充実しています。アニメになる原作の豊富さは世界に類がありません。そして、原作者も静止画を動かしたいという動機を常に持ち続けているように思います。つまりベースがしっかりしているということでしょう。

人気作ヒット連発の秘訣は?

確かに「ワンピース」は13年、「プリキュア」は8年と息の長い人気作品となりました。実はアニメには長続きさせるコツがあるんです。
私は長い間テレビ局の編成を担当してきましたから今でも毎朝、朝刊のテレビ欄を見てその視聴率を予測していますし、その予測はほぼ当たります。その秘訣は、タテ・ヨコに番組を眺めること。横のライバル番組と縦の自社番組の流れを読むことが重要だと思います。
ヒット作というのは、例えば視聴率あるいは観客動員数ということで考えてみると、マーケット感覚を養うためには3つの視点が必要になってきます。1つは当然ながら「その作品をどれだけの人が見てくれるか」。2つ目は「その作品が感銘・感動・満足感を与えられるか」。そして最後に「営業収益が見込めるか」です。付け加えると、番組販売の可能性が大きいかどうか。キャラクターの知名度が高いかどうか、海外での販売が可能かどうかという点も考慮しなくてはなりません。
幸いなことに、アニメは子供たちが主たる視聴者層です。概ね4歳以上の子供たちですが、彼らがアニメを卒業したとしても、次の世代がまた新規視聴者層として誕生してきます。さらにアニメを卒業した親世代が、また視聴者層になってくれる可能性も大きいのです。ターゲット層は次々に変化するのですが、常に新規ターゲットが登場してくれるという世界なんです。今は男2人、女2人の小学生世代の4人の孫たちの評価が実に審美眼に溢れています。

御社の海外戦略についてはいかがでしょう

通常、海外戦略は「グローバル戦略」と言い換えられることが多いのですが、私はそれだけではなく、「ボーダレス戦略」でもあると言っています。例えば、東南アジア各国では日本での成功事例や作品をそのまま許容していただけることが多い。日本でヒットした作品は、そのまま受け入れられるということですから、まさにボーダレスなんです。
一方で、「ローカライズ戦略」ということも言っています。日本の手法が通用する東南アジアは別として、世界中の国々では興味の対象、感動の方法など、地域によって違うことも否めません。その意味では、映像も現地の風俗に沿って手直しして、現地風にしてみることなどがより効果的な海外戦略となり得ます。これらを絡めて展開していくのが当社の海外戦略であると考えています。

アニメコンテンツのデジタル展開については?

デジタルの語源はエジプト語の「デジット」から来ており、モノを計る尺度としての「指」を意味します。人間の体で例えると、指が登場することによって、より繊細で豊かな動きが可能になりました。現在の「デジタル化」にも語源のような効果があると思います。
指は1本では力が弱いですが、2本あれば物を摘むことができるし3本あれば字を書くことができる。5本あればさらに色々なことが出来ます。社会のデジタル化にも似たようなところがあって、技術が1つ増えるごとにできることが増えていくのです。
ですから、アニメ・コンテンツをつくる私たちとしては、そうしたデジタル化の流れに必ず付いていかなければならないと考えています。デジタル化によってアニメは、セル画の世界から脱却し、簡単にタバコの煙を消したり、畳を床にしたりといったことが可能になりました。SNS関連でもDeNAさんのモバゲー向けに「スラムダンクforモバゲー」などの事業を展開していますが、まだまだこの分野は拡大できる部分が多そうです。

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