【連載第4回】株主提案、プロクシーファイト、TOBに絡む買収防衛策

連載第2回の最後で、株主権の行使により何が変わったのかについて説明しましたが、今回は株主権の行使の代表的なものである株主提案およびそれに派生するプロクシーファイトなどについて具体例を交えて説明します。

1. 株主提案 パルコ(8251)VSイオン(8267)・森トラスト(8961)連合株主提案

株主総会に合わせて書こうと考えていたパルコ(8251)に対する「森トラスト(8961)・イオン」連合(注)の株主提案が、4/20パルコ側が株主提案で求められていた平野社長の退任などを受け入れたことにより、森トラスト・イオン連合は会社の取締役選任議案に合意し株主提案を取り下げたことが発表されました。
 (注)森トラストとイオン合計でパルコの株式の45%強を保有しており、正式には、森トラストが提出株主提案に対し、イオンが森トラストと共同して議決権行使をすることに合意したもの
この事例をもとに株主の共益権のひとつである「株主提案」について考えてみます。
4/21の新聞報道を見てみますと、
日経新聞は1面で

パルコ、社長退任受け入れ、森トラストとイオンが要求
業務提携を協議、

の見出しで、また13面で

パルコ・イオン、提携へ一歩、検討委員会設置、対立ひとまず収束、
実現にはなお壁、社長に牧山氏発表

の見出しで報道されています。

読売新聞は4/21の経済面で

パルコ、株主要求のむ、社長交代 イオンとの提携協議へ

の見出しで、
ともに株主の要求を一部受け入れ、イオンとの提携協議開始の第2段階へ移行する趣旨となっています。

もともと森トラスト・イオンの株主提案の議案内容は、

『平野社長の退平野社長の退任及び、森トラストから2名、イオンから3名の取締役を派遣、パルコ側からは牧山氏1名でその他4名の現社外取締役の重任、の合計取締役10名の選任』

であり、パルコとしては現任の4名の社外取締役を含む取締役会の全会一致により、株主提案には反対するとの立場を明確にしており、両者ともに譲らず5月の総会において、いわゆる委任状争奪戦(プロクシーファイト、Proxy Fight)に発展する見通しでした。
 この株主提案の賛否の判断に際しては、イオンが同時にパルコに対して提案している、

① パルコの執行役として現執行役13名に加えイオンから派遣する2名の合計15名とし、パルコの牧山氏をCOOに、イオンから派遣予定の松井氏をCEOに選任する、

② パルコをイオンの持ち分適用会社とし、さらにパルコとイオンの提携効果を最大化するために将来的にイオンの子会社化を含めた資本関係の構築に関する協議を行う、

③ 現在導入中の買収防衛策の非継続及び新たな買収防衛策の導入を制限する

という提案内容を踏まえ、実質的には、パルコ現経営陣が引き続き経営することが同社の長期的な企業価値を高めることになるのか、あるいはイオンとの提携を進めることによる方が長期的企業価値が高まるのかの判断をするということになります。
この判断は大変難しい判断ですが、総会前に資料などを読み込みかつ時間があれば双方の意見を聴取してJPG研究所の最終見解をまとめる予定でいました。こうした準備をしていたところに、4/20の記者発表による平野社長の退任の発表がありました。
 4/20にパルコが記者発表した森トラスト・イオン連合との合意内容をみると、

① 平野社長の退任、森トラストから2名、イオンから1名、パルコから2名、森トラスト・イオン派遣以外の社外取締役5名(内、重任1名)の合計10名の取締役の選任

② 牧山氏を代表執行役社長、平野前社長を専務執行役とするなどパルコ側の合計15名の執行役の選任

③ 業務検討委員会の設置と同委員会における業務提携についての協議開始

となっています。

当初の株主提案では、森・トラスト・イオン連合が、CEO を派遣するとともに、森トラスト・イオン連合で取締役会の半数である5名を派遣,パルコ側からは牧山氏1名の取締役で取締役会の主導権を握り、イオンとの提携をベースに企業価値を高めていくというもので、合意は当初の森トラスト・イオン連合の株主提案からは後退していますが、平野現社長の退任と、業務提携についての協議開始、加えて買収防衛策の非継続などが実現し現実的には提携関係の検討に一歩前に進んだということができます。

この合意についてはいろいろな見方がありえますが、議案分析・助言を行っている立場から見ると、株主提案がなされたからこそ、経営陣と水面下で色々な交渉が進められ「妥協」とはいえ一定の株主としての意見・意思が実現したといえます。

株主提案には、後述するような、提案の100%実現を狙って経営陣と激しく対立しプロクシーファイトを展開するというかつての「スティール・パートナーズ」のような全面対決型だけでなく、株主提案を行いながら、水面下で交渉を続け、一定の実利を得る合意ができた段階で株主提案を取り下げる交渉型もあります。株主提案のほとんどが現実的には否決されていることから考えると、株主の意思を少しでも実現する後者の手法は十分意味があることといえます。

株主提案にはこのようなもの以外に、株主オンブズマン(NPO法人)による取締役の報酬の個別開示や企業倫理の確立などの株主提案のほか、主として電力会社にたいして、反原発運動家による原子力発電所の廃止などの株主提案などが毎年出されています。特に、2011年6月総会は、東日本大震災の福島原子力発電事故の影響により、すでに東北電力にたいしては原子力発電所の廃止の株主提案が提出されていますが、ほかの電力会社に対する株主提案も従来以上になると予想され、各社においては十分な説明責任を果たす責務があると考えます。

一口メモ: 株主提案と提案権行使の条件:
株主提案権は共益権の中でも「少数株主権」に属する権利で、株主がだれでも行使できるわけではありません。株主提案を行うためには、その会社の発行済み株式の1%以上もしくは300個の議決権を6か月以上継続して保有していること、が必要です。
また、株主提案は株主総会の開催日の8週間前までに会社に書面にて提出しなければなりません。尚、実質的に同一の内容の議案が10%以上の賛成を得られずに否決された場合には、否決されてから3年間は提案できないことになっています。

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