不発のtax selling‥‥
すべての悪材料を織り込む年末の株価調整は今年は驚くほど小さい。例年のごとく10月以降米国市場では年末の株価調整(tax selling )が進行した。特に今年は、(1)根強い景気回復に対する懐疑、(2)半年で60%という急騰の後の、決算を前にした利益確定の必要性、という2大調整要因があったために、警戒感が強まっていた。しかし、それにしては調整は、驚くほど小さく、ニューヨークダウは11月5日に再度10000ドル乗せ、11月9日は暴落の3月安値以降の高値を更新した。好調な企業業績が牽引、経済指標も着実に改善している。しかしより重要なのは旺盛な株式投資意欲、リスクマネーの復活であろう。
バフェットの鉄道買収、なぜ今か
その象徴はウォーレン・バフェット氏の北米鉄道首位のバーリントンノーザン・サンタフェの100%買収(今まで23%保有、今後77%を取得へ)であろう。新規投資額260億ドル(債務として100億ドルの引き受けを含む総投資時価は440億ドル)は、彼の過去最大そして最後の大規模買収になる。バリュー株式の底値買いの名手である彼が、30%のプレミアムをのせた100ドルでオファーである。二つの疑問がある。なぜ今急いで(高いプレミアムをつけて)、なぜ鉄道を?
バフェット氏はこれまで短期的には米国景気の悲観論者であった。であれば最も景気に敏感でかつ世界経済から取り残されてしまいそうな米国の鉄道株をなぜ今買うのか。氏は「これは来月、来年の成果に賭けたものではない、永遠にこの株を保有するつもりだ」と説明したが、それでは説得力がない。実際S&P社による「このディールによりバフェット氏の会社であるバークシャー・ハサウェイのAAAレーティングを引き下げるかもしれない」とのコメントが伝えられている。当然割高な買収はバークシャー・ハサウェイの既存株主価値を毀損する。これまでのバフェット氏のバリュー投資方針が示す通り、買収の成否はいかに安く買うかである。ベアマーケットが続きこれからもっと安い価格で買収できるチャンスがあるとすれば今は買い時ではない。まして鉄道株は最も景気に敏感なセクターと言われている。とすればバフェット氏は、中長期的のみならず目先的にも米国株高を想定しているのでは、と考えられる(それは米国景気回復と潤沢な資金需給いずれかまたは両方に支えられる)。
劇的に変わる事業素質
タイミングは別として、バフェット氏は米国経済の将来性、鉄道事業の将来性に自信を持っている。バフェット氏は「America’s best days lie ahead no doubt about it」と述べている。また鉄道事業は、(1)省エネルギー輸送手段(原油価格上昇やさらなるエネルギー規制で有利に)、(2)海外低賃金からのプレッシャーへの抵抗力、(3)規制により競争が少なく収益安定的、などの投資魅力を説明している。確かに鉄道事業は100年前には花形であったが、前世紀後半は成熟・衰退を続けた産業であった。しかし、今産業素質は劇的に変わりつつある。グリーン・ニューディールの潮流に乗る省エネかつ、今後販売価格が上昇し長期的な安定キャッシュフローが読める数少ない産業である。またグローバル化で米国がますます海外生産に依存するようになれば、ますます長距離輸送のニーズが高まる、という時流にも合っている。








