ドルベアの根拠薄弱
外貨準備に占めるドル比率の低下をさして、ドルからの資金逃避が起こっているといわれるが、それは全くの間違いである。この間のドル安によりドルの比率が自動的に低下しただけである。図表に見るように、仮にドルとユーロの為替レートが変化なかったとすれば、世界の外貨準備高に占めるドルの比率は全く変化なかったと言える。また米国の巨額の対外赤字をドル悲観の根拠として指摘する向きが多いが、米国の対外所得収支は2008年2Qに至るまで、大幅な黒字であり、債務負担のコストは未だ発生していないのである(図表参照)。故に米国の長期金利は十分に低く、ドル債務を抑制するような市場圧力が高まる気配はない。
もっとも現在のドル本位制が完全な変動相場制の下で構築されているわけではない。あえて言えば、管理フロート制の下で、大幅な対外黒字国日本と中国が外貨介入の形でドルファイナンスを続けていることが、ドル基軸体制の必須の柱となっている。今回の20カ国サミットでは、日本と中国のドル基軸体制擁護が決定的な力となった。
ドル基軸体制に大きな不安はないと思われるが、現在世界はドル不足つまり、「ドル価値の維持に腐心すれば、ドル流動性不足により世界経済は悪化する、景気に配慮すればドル不安が高じる」、という古典的「流動性のディレンマ」に直面している。過去、「流動性ディレンマ」に直面した時には、米国は常に流動性の供給を優先してきた。今回もまた同様で、米国中央銀行はバランスシートを急拡大させており、うち約半分が通貨スワップによる海外に対するドル供給である。バブル破裂で大きな目詰まりを起こしたドルと言う血液の循環(ドル流動性)を建て直し、世界の隅々まで、行きわたらせる大作戦である。国際協調の金融緩和と米国の流動性供給で、このディレンマは解消に向かう、と予想される。








