S&P 500月例レポート (2018年6月配信)_後編

 5月は11セクター中7セクターが上昇し、上昇が6セクターだった4月や3セクターだった3月を上回りました。情報技術セクターが7.13%と断トツで上昇し、最も高いパフォーマンスを記録しました。iPhoneメーカーのApple(AAPL)が13.5%(5月のS&P 500指数の上昇分の21.3%に相当)、ソーシャルメディア大手のFacebook(FB)が11.5%(同8.7%に相当)、半導体メーカーのMicron Technology(MU)が25.3%値上がりしたことが背景にありました。情報技術セクターの年初来の上昇率は10.60%と、S&P 500指数のセクターの中で最高となりました。

 4月に9.29%上昇したエネルギーセクターは原油価格の下落にもかかわらず5月も2.53%上昇し、中でもExxon Mobil(XOM)は5月に5.5%上昇しました。エネルギーセクターの年初来の上昇率は4.68%となっています。消費者関連の2つのセクターでは対照的な値動きが続いています。一般消費財セクターは5月に1.87%(4月は2.27%上昇。年初来では7.06%上昇)値上がりしましたが、生活必需品セクターは4月の4.52%の下落に続き、5月も1.79%下落しました。年初来の騰落率は13.51%のマイナスと全11セクター中で最低のパフォーマンスとなっています。金融セクターは金利の低下とFOMCによる利上げが年内3回にとどまるとの観測から1.12%下落しました(これまでは4回との観測がありました)。同セクターの年初来騰落率は2.95%のマイナスとなっています。

 5月も値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を上回りました。ただし、指数全体の上昇が示唆するほど多くの銘柄が値上がりしたわけではありません。値上がり銘柄数は279銘柄(平均上昇率は5.95%)と4月の265銘柄を上回りました(3月は193銘柄)。10%以上上昇した銘柄数は49銘柄でした(4月は31銘柄)。5月は226銘柄が値下がりし(平均下落率は4.58%)、4月の240銘柄、3月の312銘柄を下回りました。10%以上値下がりした銘柄数は25銘柄となりました(4月も25銘柄)。年初来では引き続き、値下がりした銘柄数が値上がりした銘柄数を上回っており(とはいえ、先月に続いて改善)、5月末現在で230銘柄(4月末は220銘柄、3月末は208銘柄)が値上がりしました(平均上昇率は13.51%)。10%以上値上がりした銘柄数は113銘柄(4月末では81銘柄)で、そのうち36銘柄が25%以上値上がりしました。値下がりした銘柄数は275銘柄(4月末では285銘柄)で(平均下落率は10.28%)、年初来で10%以上値下がりした銘柄数は112銘柄(4月末では115銘柄)となり、そのうち16銘柄が25%以上値を下げました。

●企業業績

 97%の企業が第1四半期の業績発表を終え、好調な四半期であったことが明らかになった今、市場の注目は、またもや過去最高益が見込まれる第2四半期の企業業績に向かい始めています。本稿執筆時点で、第2四半期の利益は過去最高となった第1四半期を5.9%、2017年第2四半期を26.3%上回ると予想されています。2018年通年の利益見通しは力強さを維持しており、2017年を(同じく)26.3%上回る見込みで、2019年の(現時点での)予想利益も2018年を10.9%上回っています(今後が注目されます)。目下、493社が第1四半期の決算発表を終え、事前予想を上回った企業は376社(76.3%)、予想を下回ったのは88社、予想通りだったのは29社でした。詳細な売上データを発表した490社のうち、368社(75.1%)が事前予想を上回りました。今や市場の注目が集まる第2四半期の業績予想に関しては、第2四半期中では変化はなく(0.08%上昇)、年初来では7.1%引き上げられています。

 市場は引き続き、現在のPERを懸念しています。3月時点の12ヵ月予想EPSに基づくPERが、営業利益ベースでも公表利益ベースでも20倍を上回っているためです。PERは2018年末が17-18倍、2019年末は15-16倍という水準が予想されており、現時点で市場は前払いを良しとしているようです。ただし、利益の順調な伸びが続かない場合、前払い分の調整が必要になり、PERが許容可能な水準になるまで株価は下落する可能性があります。

 原油価格は月の大半を通じて上昇しました。トランプ大統領が2015年のイラン核合意から離脱し、90~180日間の猶予期間の後に制裁が再開されることになったことが背景にあります。制裁が発動されれば、最近署名された米国の契約は無効になります。既に上昇基調にあった原油価格は一時1バレル=72ドルを超えましたが、ウィーンでの次回OPEC会合(6月22日)で原油増産の発表が予想されたため、それを大幅に下回る66.93ドルで月を終えました。

 マイク・ポンペオ米国務長官が北朝鮮を訪問し、北朝鮮は拘束していた3名の米国人を解放しました。トランプ大統領と金正恩氏の会談が6月12日にシンガポールで開催されることになりました。この会談は米国の軍事演習を巡るやりとりの結果、中止される可能性がありましたが、再び開催の方向で進んでいるようです。両国の非難の応酬が続き、5月後半には、北朝鮮が最近「怒りと敵意をあらわにした」ことを理由に、トランプ大統領が米朝首脳会議の中止を発表しましたが、実現の可能性は残されている模様です。本校執筆時点では会議は公式に中止となりましたが、開催に向けた交渉のために、米高官が北朝鮮を訪問し、北朝鮮高官が米国を訪問しています。

 トランプ大統領は中国の習近平国家主席とともに、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)の支援に取り組んでいると述べました(米国と中国が高レベルで影響の大きい貿易交渉を行う中で、このような動きがとられています)。ポンペオ米国務長官はイランに対して、新たな条約締結に関する要求を発表しました(トランプ大統領は5月上旬にイラン核合意を離脱しました)。

 米国の上院銀行住宅都市委員会が金融規制改革法(ドッド・フランク法)を修正しました。これにより、小規模銀行は負担が軽減されますが、大手銀行には影響はありません。米連邦準備制度理事会(FRB)はすべての銀行に対して高リスクの取引規制(ボルカールール)を緩和する案を支持しました。米上院はトランプ大統領によるジーナ・ハスペル氏の中央情報局(CIA)長官指名を承認し、その結果、史上初の女性長官が誕生しました。

 大統領は薬価問題についての演説で、米国は政府の処方箋薬給付プログラム(メディケア・パートD)の薬価を引き下げる必要があると主張しました。ただし、演説では、より安価な医薬品の輸入を認可することや、薬価の引き下げ交渉を容認することには触れなかったため、ヘルスケア業界にとっては幸いでした(演説当日にヘルスケア関連銘柄は1.47%上昇)。

●貿易戦争

 北米自由貿易協定(NAFTA)を巡る交渉が続きましたが、自動車分野を中心に加盟国間での意見の隔たりは埋まりませんでした。ポール・ライアン米下院議長が設定した2018年5月17日の交渉期限は過ぎましたが、最終的に妥協が見出されるというのが一般的な市場の見方でした。継続された交渉がその後行き詰まりの様相を呈したのは、米国が「アメリカ・ファースト」に基づいて国内生産のために要求した条項がメキシコの抵抗に会い、自動車生産分野が大きな障害となったためでした。ただし交渉は続けられています。

 米国は中国からの輸入品に対する1,500億ドル相当の関税賦課(まだ導入されていませんでした)を保留しました。交渉は継続され、米中は中国の通信機器メーカーZTEによる経営陣(取締役会を含む)の交代と罰金の支払いと引き換えに、米企業によるZTE社製品の販売禁止を米国が解除することで大筋合意しました。米国は商務長官の貿易交渉に向けた訪中を前に、中国に対する関税計画を進めました(輸入製品500億ドル相当に25%)。

 EU、カナダ、メキシコからの輸入(鉄鋼とアルミニウム)に対する米国の関税賦課が発効する2018年6月1日を前に、瀬戸際の交渉が続けられ、欧州諸国、カナダ、メキシコは米国製品に対して独自の関税を導入しました。現時点では貿易戦争が再燃しています。

●利回り、金利、コモディティ

 米国10年国債の利回りは、2011年以来の高水準となる3.13%に一時達したものの、月末には4月末の2.95%を下回る2.87%となりました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。英ポンドは4月末の1ポンド=1.3767ドルから1.3294ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロも4月末の1ユーロ=1.2081ドルから1.1695ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は4月末の1ドル=109.29円から108.82円に上昇し(同112.68円、同117.00円)、人民元は4月末の1ドル=6.3337元から6.4104元に下落しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 原油価格は月の大半で上昇し、2014年以来となる1バレル=72ドルを一時突破したものの、最終的には4月末の68.45ドルから2.2%下落して66.93ドルで月末を迎えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は4月末の1ガロン=2.961ドルから、5月末は3.039ドルに上昇しました(同2.589ドル、同2.364ドル)。金価格は4月末の1トロイオンス=1,316.10ドルから下落して1,303.00ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 VIX恐怖指数は10.91まで低下する局面もありましたが(1990年の指数開始以来の終値での最低は2017年11月の9.14、最高は2008年11月の80.86)、最終的には4月末の16.05から低下して15.43で5月を終えました(月中の最高は18.78)。

 中央銀行関連のニュースでは、FOMCは予想された通り政策金利を据え置きました。6月12-13日の会合での0.25%ポイントの利上げが見込まれており、2018年9月か12月にもう一回行われる可能性があります。利上げは過度に先走ってはいません。FRBは段階的な利上げの軌道にあることを確認し、インフレは目標に近づいている(雇用は既に目標を達成)と述べました。懸念すべき点として、2018年第1四半期の経済成長の弱さが指摘されました。FRBはインフレを説明するのに「対称的」という新たな文言(私たちにとっても)を用いています。月の後半に発表されたFOMC議事録では、肝心な点として、6月12-13日の会合での利上げを予想していることが示されました(「利上げが近く適切となる」ようです)。議事録ではメンバーが、インフレ率が2%をオーバーシュートすることを許容する用意があることが示唆されました。

 イングランド銀行(英中銀)は政策金利を据え置き(0.5%)、2018年の経済成長率予想を3ヵ月前に発表した1.8%から1.4%に引き下げました。トルコリラ安が続いたため、トルコ中央銀行は緊急会合で後期流動性金利(貸出金利)を3.0%ポイント引き上げて16.5%としました。国際通貨基金(IMF)がアルゼンチンに対する支援(ベイルアウト)交渉を開始しました。

 FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)では、経済は依然として拡大しているとFRBはみており、6月12-13日の会合での利上げを予想していることが示されました。報告では熟練労働者の人手不足が続いているものの、賃金上昇圧力は限られていることが指摘されました。FRBは6月と年内もう一回の利上げを予想しているというのが一般的な解釈です。市場関係者の間では現在、今年の利上げが3回になるか4回になるかが議論されていますが、この解釈に基づけば3回ということになります。
 

 

 

 

 
 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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