S&P 500月例レポート(2017年10月配信)

●住宅市場

 8月の新築住宅着工件数は118万戸(年率換算)となり、予想をわずかに上回りました。住宅着工許可件数は予想の122万戸に対して130万戸となりました。8月の中古住宅販売件数は535万戸で、7月の548万戸から1.7%減少しましたが、前年同月比では0.2%増加しました。8月の新築住宅販売件数は56万戸(年率換算)となり、予想の58万3000戸を下回りました。8月の中古住宅販売仮契約指数は予想の前月比0.2%低下に対して同2.6%低下となりました。ハリケーン「ハービー」の影響が予想されましたが、住宅販売件数は米国の大半の地域で減少しました。

 米連邦住宅金融局(FHFA)発表の7月の住宅価格指数は前月比では予想の0.4%上昇に対して0.2%上昇、前年同月比では6.3%上昇となりました。7月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は予想通りの結果となり、前年同月比で5.9%上昇(6月の5.8%から加速)しました。9月のNAHB住宅市場指数は予想の66に対して64となり、8月の67を下回りました。

●雇用関連

 8月の雇用統計は予想を下回り、非農業部門就業者数は15万6000人増(予想は18万人増)となりました。また7月の数値は20万9000人の大幅増から18万人増に下方修正されました(7月の当初予想は17万8000人増だったため、これで当初予想並み)。失業率は4.4%に上昇しました。これに対して予想は4.3%の横ばいでした(7月は前月の4.4%から低下)。労働参加率は62.9%で横ばいでした。週平均労働時間は(またもや)前月と同じ34.5時間となりました(予想通り)。平均時給は前月比0.1%増(予想は0.2%増)の26.39ドルで(前月は26.36ドル)、前年同月比では前月と同じ2.5%増でした。市場はこれにほとんど反応しませんでした。少なくともこの時点で市場参加者は、これは最近の上昇の調整であり、「一時的な」動きであると受け止めていました。

 ファミリー向け百貨店Target(TGT)は、年末商戦で増加する顧客への対応に備えるため(またネット通販に対抗するため)、臨時雇用を昨年の7万人から10万人に増やすと発表しました。Macy’s(M)は、年末商戦に向けて特定部門の臨時雇用を20%増やすものの、期間中の臨時雇用は全体で若干減少する(昨年の8万3000人から8万人に)と発表しました。ネット通販大手Amazon.com(AMZN)は、米国の第二本社(最大5万人を収容)を推定費用50億ドルで建設する計画を発表しました。これを受けて、複数の州が誘致に動いている模様です。

 レイオフ関連では、テクノロジー・ソリューションのHewlett Packard Enterprise(HPE)は経費削減策の一環として、グローバルで5000人(全従業員数は約5万人)を削減すると発表しました。医療用医薬品メーカーEli Lilly(LLY)は、2018年に従業員3500人(全体の8%)をレイオフし、工場1ヵ所(アイオワ州)と研究施設2ヵ所(ニュージャージー州と中国)を閉鎖すると発表しました。

●M&A関連

 航空機エンジン・機械大手United Technologies(UTX)は市場の憶測通り、航空機電子部品メーカーRockwell Collins(COL)を230億ドルで買収すると発表しました。防衛大手 Northrop Grumman(NOC)は航空・防衛メーカーOrbital ATK(OA)を現金78億ドルで買収すると発表しました。接着剤・シーラントの製造大手H.B. Fuller(FUL)は同業Royal Adhesives & Sealantsを15億8000万ドルで買収する契約を締結したと発表しました。

 報道によると、ソフトバンク傘下で通信サービス大手Sprint(S)とT-Mobile(TMUS)が再び合併交渉に入りました(両社はこの数年間断続的に交渉を行ってきたようです)。東芝(TOSYY)は、半導体事業を投資ファンドBain Capital率いる企業連合に180億ドルで売却すると発表しました。

 General Electric(GE)は産業ソリューション事業をABB(ABB)に26億ドルで売却すると発表しました。米投資ファンドHellman & Friedman率いる民間企業連合は、デンマークの決済処理会社Netsを53億ドルで買収すると発表しました。

●企業業績

 S&P 500指数構成企業の2017年第2四半期決算は総じて好調でした。株式数の減少を通じて1株当たり利益(EPS)を押し上げる自社株買いによる支援効果が減ったにもかかわらず、利益は会社予想のみならず、市場の非公式予測(whisper numbers)も上回りました。これはまさに市場参加者が求めていた支援材料でした。株価収益率(PER)は、企業がそれを正当化できるか否かとともに、大きな懸念要因となっていました。また、ワシントンの動き(あるいは何も動きがないこと)ならびに地政学問題をめぐる不透明感の継続が、依然として景気見通しに影を落としていました。

 決算発表を受けて、S&P 500指数は緩やかなペースで過去最高を更新し続け、PERは高水準にとどまりました。近く開始する2017年第3四半期決算発表シーズンに関しては、市場参加者の利益予想は底堅く、下方修正幅は6月末時点から僅か1.5%、2016年12月時点から僅か2.5%にとどまっています。本稿執筆時点で、市場参加者は前期比7.8%増、前年同期比14.7%増と予想しています。

 しかし、増益率は一様ではなく、また、数値だけですべてを判断できるわけではありません。エネルギーセクターは300%増と予想されていますが、依然として回復の途上にあります。同セクターのEPSは6四半期連続で減少した後、昨年第2四半期にプラスに転じました。今年第3四半期のエネルギーセクターの予想利益は、原油価格が1バレル100ドル近辺にあった2014年第3四半期の水準を71%下回っており、2017年予想PERは36倍と高水準となっています。

 ヘルスケアセクターの利益は前年同期比26%増で過去最高を記録すると予想されています。同セクターの今年の株価は全般的には好調ですが、サブグループごとに差があります。PERは19倍と、より妥当な水準にあるものの、やはりセクター内でかなり差が見られます。情報技術セクターには注目が集まっており、前年同期比で33%の増益で過去最高を付けると予想されています。さらに同セクターの業績が例年最も好調となる第4四半期については、過去最高益が予想される第3四半期を27%上回ると見込まれています。この予想は、Apple(AAPL)の新製品だけでなく、子供向けおよび大人向けのあらゆる電子機器に対する市場参加者の多くの見方を反映するものです。

 情報技術セクターがS&P 500指数に占める割合は23%と最も大きく、配当への寄与度は最も高く(16%)、第3四半期の利益に最も貢献すると(23%)予想されています。現在の2017年PERは21倍で、同セクターの株価は昨年の大統領選から年末までどうにか切り抜けた後、今年は全セクター中トップを付けています。

 全般的に、そして第2四半期と同様に、第3四半期には多くの出来事が予想されており、特に年初来で株価の上昇が積み上がる中、PERを正当化する必要があります。現在は利益確定のタイミングとして決して早すぎることはありませんが、特に所得税の見通しが織り込まれ始めることで、市場に資金がとどまる傾向がある中、マネーマネージャーや一部のリスク志向の投資家グループが恐れているのは、自分だけ時流から取り残されることです。

●個別銘柄

 保険会社のAnthem(ANTM)は、2018年にケンタッキー州でのオバマケアによる保険適用範囲を縮小する予定だと発表しました(同社はすでにサービスを提供している14州のうち10州で適用範囲を縮小)。信用情報会社のEquifax(EFX)は、米国で1億4300万人の顧客情報が流出したことを明らかにしました。同社の対応と事態への対処能力も問題視されており、同社の株価は9月に26.3%下落しました。下落率は一時36.9%に達し、年初来では11.2%の下落となっています。米証券取引委員会(SEC)は、2016年にハッキング攻撃に見舞われたことを公表、一部のデータが違法な証券取引に利用された可能性があるとしています。

 玩具販売大手のToys”R”Usは、債務返済に支障が生じため連邦破産法第11条の適用を申請しました。

 ソーシャルメディア大手のTwitter(TWTR)は、現在140文字の字数制限を240文字に増やすことに取り組んでいることを明らかにしました。米国政府は保険会社のAmerican International Group(AIG)を「システム上重要な金融機関(SIFI)」の指定から外し、同社に対する規制を解除しました。

 また、特筆すべき点として、2016年の米国の家計所得の中央値が(2015年から)3.2%上昇して5万9039ドル(インフレ調整後)となり、ようやく1999年の数字(5万8665ドル)を上回ったことが挙げられます。家計部門の純資産額は2017年第2四半期に過去最高となる96兆2000億ドルに達しました。

 ロシアでは爆破予告の電話が相次ぎ、各地で10万人以上が避難しましたが、爆弾は発見されませんでした。「テロ事件」はロンドンの地下鉄でも発生し、計画通りではなかったものの爆弾が爆発しました(死者は出ていません)。

 新たな会計ガイドラインは、米国の州や地方自治体に対して退職者の医療費を全額費用計上することを義務付けています。この結果、6450億ドルが新たに帳簿上で債務に加えられる可能性があり、これまで認識されていなかったコストが将来発生する費用として計上されることになります。

 配車サービスのUberはロンドン市内での営業に問題があると判断されて以降、同市交通局とサービス提供についての交渉を続けました。

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