メイ英国首相訪日の画期的意義

~英国が模索するグローバリゼーションの新潮流

(1) メイ英国首相が追及する新たな国際連携

●日本重視鮮明に

 8月末メイ英国首相が突然に来日し、安倍首相とともに、安全保障や経済協力をうたった日英共同宣言を発表した。北朝鮮による弾道ミサイルが日本の頭上を通り越した直後であり、同時に対北非難の共同声明も発表された。メイ氏は首相就任後初めてのアジア訪問に中国ではなく日本を選んだ。過去10年にわたってほぼ毎年中国を訪問しながら日本には洞爺湖サミット(2008年)やミュンヘンサミットの下準備(2015年)という便宜的理由で2回立ち寄るだけであったドイツメルケル首相とのコントラストが際立つ。

 EU離脱後の英国にとって、日本の戦略的重要性が大きいとの認識によるものであろう。経済面では約1000社の日本企業が英国に進出しており、16万人の雇用を生み出している。EU離脱後も日系企業が英国にとどまってくれることは極めて重要である。また日本とのEPA(経済連携協定)締結は、EU離脱後の英国の世界戦略の基軸にもなり得る。

●EU離脱のメリットは軽視できない

 EU離脱の国民投票結果が意外でありIMF、オバマ大統領をはじめ世界の識者の推奨とは逆であったこと、EU離脱交渉が難航していることなどから、「Brexitという誤った選択をした英国はますます落ちぶれていく」という印象を持ってしまいがちだが、それは必ずしも正しくない。

 メイ首相には英国がEUの枠に戻るという意思はなく、脱EU後の世界戦略を志向し始めたといえる。以下に詳述するように、英国は世界で最も開放経済化・グローバル化した国であり、保護主義や孤立主義とは最も縁の遠い国であり、グローバリズムなしにはやっていけない国である。

 BrexitはEUの枠に縛られたグローバリズムから、自由なグローバリズムへと選択肢を広げるものであると理解するべきであろう。英国にとってEU離脱は、ドイツが影響力を強め、選挙では選ばれていないブリュッセルの官僚が巨大な権限を持つEUのくびきから自由になる、というメリットがある。

●安保重視の姿勢

 今回のメイ首相訪日で際立ったことはその安全保障重視の姿勢であろう。滞在中、海上自衛隊横須賀基地を訪れ護衛艦「いずも」に乗艦した。また安倍首相が主催する国家安全保障会議(NSC)の特別会合にも出席した。さらに共同宣言では英国の空母のアジア派遣、2020年に運用が開始される新鋭空母「クイーン・エリザベス」を南シナ海に派遣するなど、アジア太平洋地域に対する英国関与の強化をうたった。南シナ海などへの中国の海洋進出をけん制する狙いがあることは明白である。

●リベラルデモクラシー擁護の国際連携の萌芽になるか

 日本と英国は法の支配、自由と民主主義、人権擁護などリベラルデモクラシーの価値観を共有している。また日本と英国は航海の自由を尊ぶ海洋国家である。トランプ政権により米国の国際的プレゼンスが一時的に低下している中での日英協力は、大きな意義を持つのではないか。グローバリゼーションの主要素、資本主義、市場経済、民主主義と英語、諸法体系とビジネスプロトコルなどの母国は米国とともにイギリスである。イギリスは米国とともに世界秩序の主柱であり、依然として英連邦の主宰国であり、多様な国際関係の中核国である。

 この歴史的遺産を総動員してグローバリゼーションの新たな潮流を作り出そうとしている。その端緒がメイ首相訪日であったと考えられる。

 トランプ政権の世界戦略軸が定まれば、米、日、英という戦後のリベラルデモクラシー擁護の国際連携が見えてくる。メイ首相訪日は、国際秩序を書き換えようとする中国、ロシアなどの勢力に対する対抗軸の構築として歴史的意義を持ってくるかもしれない。

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