価値向上のための対話~アナリストの役割

・欧州では、運用会社のコストと手数料をはっきりさせ、それを情報開示するように定められた。来年から始まる。運用会社から証券会社へのオーダー(売買の注文)に伴うフィーのうち、いくらがベストエグゼキューション料で、いくらがアナリストの情報料であるかが問われる。厳密には、アナリストの情報料を別立で支払うことになる。

・セルサイドのアナリストレポートはいくらの価値があるのか。そのプライシングが注目される。コストプラスフィー的にいえば、アナリスト1人の総コストが2000万円として、20社を担当しているなら、1社100万円。それを運用機関20社に販売するなら1社5万円のコストなので、価格としては10万円がほしいところである。

・運用会社にすれば、日本株のユニバースを300社として、1社10万円なら3000万円となる。1人では不十分である。正反合からみて、最低3人のアナリストの見方は必要であろう。とすれば、9000万円の情報料が必要になる。これを支払うだろうか。

・証券会社のアナリスト部門にすれば、アナリスト30人をかかえて、600社カバー、1社100万円で、コスト6億円となる。これをカバーできるだろうか。たぶん難しい。もっと稼ぐには、質の高い情報を創って、顧客を増やし、価値に見合った価格で販売する必要がある。そのビジネスモデルが確立できるだろうか。できないところは淘汰されていくことになろう。

・AIやロボットは運用においても調査においても、有能な道具として使われるようになってくる。すでに一部で活用が始まっている。新しい技術はどんどん取り込んでいく必要があろう。その上で、アナリストの分析力、洞察力とは何か。対話はどのレベルで行っていくのか。

・対話(エンゲージメント)に、どこまで関わるのか。1)会社の理解を深めれば十分なのか、2)会社に意見をいうのか、3)会社に改善を要求するのか、4)会社の中に入り込むのか。レベルはいろいろありそうだが、通常のアナリストは互いに意見を述べ合って、気付きを深めるという建設的対話が基本であろう。

・カギはビジネスモデルの理解にあり、それを支える非財務情報をどこまで財務情報に落とし込めるか。ここが腕の見せ所であるが、財務情報に落とし込めないものをどう扱うか。ROICを経営の基本に据えるとして、それは非財務情報とどう結びつくのか。ここのコネクティビティ(つながり)が重要である。

・PBR=ROE×PER。これにROICを入れると、PBR=ROIC×L×PERとなる。Lはレバレッジである。PBRはバランスシートに表れない無形資産を反映し、ROICは事業の収益性そのものである。Lは財務バランスを、PERは利益の成長性を示す。

・会社のビジネスモデルを、これら4つの視点から頑健なものにしてほしい。アナリストはここを議論したい。投資家は自分のポートフォリオのオーナーである。独自のポートフォリオを組み合わせて作ることができる。機関投資家はアクティブ運用で特色を出してほしい。それを支えるセクターアナリスト、ESGアナリスト、ファンドアナリストなどの活躍に大いに期待したい。
 

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