好調な日米経済、トランプ政権の進化に期待

~ バノン氏の政権離脱が政策進展の引き金になるか

●好調なファンダメンタルズ

 世界同好況はいよいよ明らかになっている。米国では年後半の成長加速が見えてきた。1~3月期には大幅な在庫調整により前期比年率1.2%増と急ブレーキがかかった米国の実質GDPは4~6月期には消費と設備投資の大幅な改善により同2.6%増と加速した。特に個人消費が力強い。7月の小売り売上高は前月比0.6%と鋭角拡大、不振であった5、6月のデータも大幅に上方修正された。同時に消費者心理と家計所得も大きく上昇しており、今後の消費堅調持続が想定される。

 米国以上に日本の景況改善も目覚ましい。日本では2017年4-6月の実質GDPは前期比年率4.0%増と想定以上の成長(エコノミストのコンセンサスは1.9%)を見せた。民間消費が3.7%増、設備投資が9.9%増と民需が極めて好調であった。今回の景気拡大は輸出主導との評価が強かったが、牽引車はむしろ内需であることが明らかにされた。

 民間設備等投資対GDP比率は16.0%とバブル崩壊以降では最高水準に達し、投資主導の景気拡大がはっきりしつつある。また消費の背景をなす雇用者報酬総額は、賃金の伸び悩みが指摘されているのとは裏腹に、着実な雇用増加によって拡大している。中でも好調なのは企業利益で、GDP統計上の営業余剰は対GDP比11.3%と過去最高に達した。

 そして過去20年間500兆円で停滞していた名目GDPは2017年4-6月545兆円と、これまでのトレンドを破って力強く拡大を始めた。2020年600兆円の政府目標が視野に入ってきた。アベノミクスは着実に成果を上げているといえる。
 
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 日米ともに物価上昇率の低さが問題として指摘されるが、低インフレは懸念すべき要因ではない。利上げを急ぐ必要はなく、それは景気拡大より長く持続させるものとなる。

●株式市場が抱く懸念、トランプ政権の無能化

 こうした好ファンダメンタルズにもかかわらず株式市場が乱調気味なのは、ひとえに政治・地政学上の不安があるからと言っていい。焦点とされる北朝鮮問題は、砲火を交える公算はごく小さく、市場は売りの口実としてこれを指摘しているだけである。もっと大きな懸念はトランプ政権の不能化である。

 バージニア州シャーロッツビルの白人至上主義者と反対派との間での衝突の際、トランプ大統領は双方を非難することによって、白人至上主義者を容認するかのように発言をした。これまでトランプ批判を繰り返してきた民主党、メディアだけではなく共和党の指導部や国防省指導部からも批判が飛び出した。またトランプ氏が組成した産業界の首脳の糾合による政策アドバイザー組織「製造業評議会」「戦略・政策フォーラム」参加メンバーからも批判が続出し、大統領は両助言組織の解散を余儀なくされた。

 トランプ政権の急速な孤立化は、米国政治がしばらく機能不全に陥るリスクを強めている。オバマケア代替法案が立ち往生したことから財源ねん出難に陥り、期待された税制改革やインフラ投資の具体化が先送りされ続けている。また国境税の導入も立ち消えとなった。そして9月末には伸ばし伸ばししてきた連邦政府の債務上限問題の最終期限がやってくる。議会との折り合いがつかなければ、米国政府のデフォルト(債務不履行)も起こり得る事態となる。

 トランプ大統領のロシアゲート疑惑による弾劾は考えにくいとしても、ここまで政策が機能不全化すると市場も安泰ではいられなくなる。むしろホワイトハウスと米議会の覚醒を求める市場からの警告が必要とされる場面がやってくるかもしれない。

●バノン氏更迭がトランプ政権の進化をもたらすか

 そしてとうとう先週末、トランプ大統領は最も信頼していた大統領首席戦略官スティーブ・バノン氏を罷免した。バノン氏は白人至上主義、孤立主義、保護主義といった米国の内向き政策の司令塔であり、トランプ政権の摩擦の発信源であった。バロン氏が去った後のトランプ政権の大きな変質が注目される。トランプ政権の政策の進化と議会との関係改善が進展し、滞っていた経済政策が動き出せば、低迷している株価は大きく反発する要素を秘めている。

 当社は2月13日の ストラテジーブレティン177号(「トランプ政権の本質、保護主義ではなく帝国主義~守りではなく攻撃~」)で、以下のように主張していた。「(トランプ氏が目的としている) ①強いアメリカ、②安全な世界、③強い国内雇用を実現するためには、孤立主義や保護主義が全く逆効果であることは論を待たない。また世界で最も民主的な米国において、過激な差別主義が定着するとは思われない。トランプ政権の政策の成長進化、メディアの曲解是正により、トランプ政権の3つの負のイメージ(孤立主義・保護主義・差別主義)は急速に是正されていくはずである。」

 また4月10日のストラテジーブレティン179号(「進化するトランプ政権、トランプラリーはまだ終わらない」)で、以下のように述べた。「米国によるシリアアサド政権の軍事基地爆撃は、トランプ政権の進化と信頼性の高まりと評価されるのではないか。トランプ氏は「非人道的化学兵器を使用し罪のない子供や赤ん坊を殺すような行為はレッドラインをいくつも超えている」と主張し、それまでのロシアとの連携の下でアサド政権を追認してイスラム国(IS)に対処するという戦略を、大きく転換させた。同時に米国第一主義を主唱し、対外関与やシリア攻撃に反対したとされるスティーブ・バノン氏が国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーから外された。また米中会談では、対北朝鮮政策で中国が協力しないなら米国の単独行動も辞さないとの意思が示された。トランプ政権が孤立主義的傾向を拭い去り国際主義に回帰する画期となるのではないか。トランプ政権が一度はオバマ政権によって捨てられた世界の警察官の任に戻る意思の表れと考えられる。」

 バノン氏更迭の背景には、アメリカファーストに基づき、北朝鮮に対する軍事攻撃の可能性を排除したバノン氏の主張がトランプ政権主流と相いれなかったことがある。バノン氏がこだわった孤立主義、排外主義、保護主義的傾向がトランプ政権のアジェンダから消えていけば、株式市場にとっては好材料となろう。それよりにトランプ政権の経済政策が進展すれば、ここ数週間以内にトランプラリーが再開される可能性も大いにあると考えられる。
 

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