新産業革命における米国の圧倒的競争力、最大要因は資本市場の効率性

(2) 米国の資本市場政策、金融政策が大体において適切であった

 1990年のS&L危機、2000年のITバブル崩壊、2008年の住宅バブル崩壊とリーマン・ショックと相次ぐ金融危機の勃発に対する政策対応は、以上に見た米国資本市場の相対的健全性、リーマン・ショックの打撃からの迅速な立ち直りから見て、妥当であったと評価できる。

●金融制度の二正面展開、バブルの反省に基づく規制強化

 ITバブルの崩壊と金融不正の横行、サブプライム住宅バブル崩壊とリーマン・ショックによる金融資本市場の崩壊という歴史的経験を経て、米国では危機回避のための二正面作戦が展開された。

 第一は、バブルの反省に基づく規制強化である。戦後の米国では規制緩和が長期趨勢であり、1980年代、1990年代の一連の金融改革と規制緩和(金利自由化=レギュレーションQの廃止、銀行の州際業務の認可等)は米国の金融イノベーションと新商品の開発を生んだ。しかし1999年のGS法の廃止とGRB法の制定(銀行と証券業務兼営の認可)を最後に、その後は規制強化がトレンドとなる。2000年のITバブル崩壊とエンロン、ワールドコムなど金融犯罪が明らかになって以降、新たな規制の導入が相次いだ。2000年には不正に結びつく安易な企業買収策pooling of interestが禁止された。また企業の粉飾決算や不正会計処理の防止、内部管理体制の強化を柱とするSOX法が制定(2002年)された。

 更に2008年にはサブプライム住宅ローンの焦げ付きに端を発した金融危機がリーマン・ブラザーズ、AIGなど大手金融機関の破たんと世界的信用不安の連鎖を引き起こした。世界金融危機に際しては、その再発防止のための包括的金融規制法DF(ドッド・フランク)法が制定された(2010年)。DF法は自己勘定での取引の禁止、PQやヘッジファンドへの出資制限、預金者保護のための高リスク事業の禁止などにより、投資銀行の収益を大きく抑制した。もっともトランプ政権はその弊害を認識し大幅な緩和を提起している。

●危機後のリスクテイク促進策

 二正面作戦の第二は、危機救済としての公的資金投入(bail-out、米国では2008年のTARP創設)とリスクテイクを支援する金融緩和政策である。TARP(問題資産救済プログラム)は金融機関、自動車メーカーなどへの7000億ドル予算規模による資金投入であり、実際には4546億ドルが投入され、対象企業の健全性回復によりそのほぼすべては回収された。

 一方、金融緩和策はQE、インフレターゲティング(2012年1月公表開始)として打ち出され、アニマルスピリットを喚起し資産価格を押し上げるものとして作用した。先に示した米国資本市場の一早いバブル崩壊の混乱からの回復、経済の正常化はこのリフレ策(新種の金融緩和政策)がなければ不可能だったであろう。

●BIS view vs. FED view

 米国の迅速な立ち直りは、バブル崩壊後の長期停滞とデフレ陥落を余儀なくされた日本と好対照をなしている。持続不能な資産価格上昇によりもたらされた金融上の不均衡の生成、その崩壊に際してどのような政策対応が望ましいかに関して、二つの見方が提示されている。「後始末論」と「事前抑制論」で、それを主唱していた機関により前者は「FED view」、後者は「BIS view」と呼ばれている。FED viewは「バブルが崩壊した後に金融緩和政策を強力に行うことでその影響は対処可能、事前のバブル抑制策は慎重にするべき」とリフレ策の重要性を指摘する。対してBIS viewは「バブル抑制のための事前金融引き締めを重視し、崩壊後も過度の緩和の弊害を強調する」(金融庁 氷見野良三氏「本邦のバブル対応— 対米比較と教訓」)。

 米国の金融危機に際してFRB議長として金融政策を指揮したバーナンキ氏はかねてから「日本は銀行システムに対する規制・監督が極めて弱いままで金融自由化を進めたためにバブルを引き起こした。その後の金融緩和は臆病すぎた」と批判していたが、米国のバブル崩壊に際しては自らの信念に即した、徹底的なリフレ政策を遂行した。3回にわたって打ち出されたQEは、中央銀行がバランスシートを拡大し長期国債やMBSを購入し直接資産価格に影響を与えるというもので、伝統的金融政策の枠を大きく超えるものではあったが、資産価格の底入れと押し上げに決定的役割を果たした。日本の金融当局がBIS viewに同調的な白川氏が日銀総裁の職を離れるまでリフレ策の採用に後ろ向きであったこととは好対照である。

 米国がFED viewにこだわる理由について、二つのモチベーションを強調しておく必要がある。第一はリスクキャピタル提供に金融の究極の目標が置かれているということ、第二は金融における国際競争力の強化である。

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