ゲームのルールが違う~アナリストの対応はいかに

・7月に日本IR学会の年次大会(15回目)が開かれた。パネルディスカッションのテーマは、「2つのコード時代のIR」であった。SSC(スチュワードシップ・コード)とCGC(コーポレートガバナンス・コード)をめぐってさまざまな議論があった。その中で、筆者が注目した点をいくつか取り上げてみたい。

・西山ストラテジスト(野村證券サステナブル投資調査担当)は、SSCとCGCをベースに、企業と投資家がエンゲージメント(目的を持った対話)を深めていくと、「コンプライorエクスプレイン」ではなく、「コンプライandエクスプレイン」が重要になってくる、と述べた。まさにその通りであろう。

・2つのコードについて、建前としてコンプライする(受け入れて従う)だけでなく、実際にどのように実行しているかを知りたくなる。そのエクスプレイン(説明)を求める。従来からコンプライしないならきちんと理由を説明せよ、というorが基本であるが、コンプライの中身をandで問うて、エクスプレインの実効性を評価することが本来の姿であり、重要性を増している。

・アステラス製薬のCGはうまくいっている。これをどのように実感するのか。監査役会設置会社として、取締役6名中4名が独立社外、監査役会の5名中3名が独立社外である。諮問機関として指名/報酬委員会を設置し、委員長も社外である。

・アステラスの岡村執行役員(経営企画担当)は、取締役会に陪席して議論を聴いていると、経営の重要事項について活発な意見交換がなされており、社外取締役が守りではなく、もっと攻めを加速するような施策を求める場面も多々あるという。

・アステラス製薬は2つの会社(藤沢と山之内)が合併した当初(2005年)から、全く新しい会社としてのガバナンス作りに力を入れてきた。CGCが具体化してきた時には、すでにそれらのコード適合する体制を整えていた。CG改革は、アステラスの企業価値創造に明らかに役立っており、前期のROE 17.3%はできすぎとしても、新薬開発ビジネスで患者の価値に大きく貢献している。

・長期投資になるほどESGの重要性は増してくる。りそな銀行の松原GL(責任投資グループリーダー)は、企業の売上→利益→キャッシュ・フロー→戦略→企業文化というように、目先の財務価値から非財務的な企業価値へ、新しいESG型AM(資産運用)へ展開していく。時間軸は非財務に行くほど長くなる。財務的投資判断から非財務も巻き込んだ中長期的投資判断にいかに結びつけていくか。ここが腕の見せ所である、と強調する。

・DDM(配当割引モデル)は、P(株価)= D(配当)/〔r(割引率)-g(成長率)〕という式で簡略的に示されるが、ESGを重視した経営は、rに相当する資本コストを下げることに貢献するとして、一方では局面によってgの成長率を下げるかもしれない。ESG投資はこの〔 r-g 〕のバランスの中に機会(オポテュニティ)がある、と松原氏は説明する。1つの見方であろう。

・企業と投資家のエンゲージメントを、IR活動とどう結びつけるか。丸井グループの場合は、年2回の決算説明会を、企業価値についての対話の場と位置付けており、持株会社の社長・取締役が、短期及び中長期の展開力と業績について説明する。その2週間後の事業中経説明会(IR DAY、上期)では、小売事業とフィンテック事業の個々の会社の社長・取締役が中期的な事業戦略について、対話を行う。

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