どうしたニッポン!再論 ―中国産業技術の高度化、日本の沈没―

3、C919の成功が示唆する中国の産業技術高度化

 中国の航空機産業の発展の背景には、世界の航空機製造の大きな構造変化があるようだ。航空機製造は、従来はボーイングのような完成機メーカーが設計から部品の調達、最終組み立てまで、一貫して担当していた。しかし、現在では、メガサプライヤーと呼ばれる大手の部品メーカーが、航空機の各ユニットを半完成品の状態まで作り上げ、完成機メーカーは最終組み立てだけを行うというのが主流になっている。完成機メーカーは、メガサプライヤーが提供するユニットを選択するだけという形である(注、この点はThe Capital Tribune Japan編集長大和田崇氏の所説および神谷雅行氏に負う)。

 航空機産業も、パソコンやスマホ生産と同じになってきた。コンピュータメーカーの米アップル社は、自らは部品等を製造しない。自らは研究開発とマーケティングに特化し、あとはロゴマークを付けるくらいで、生産はEMS(電子機器受託製造サービス)に任せている。20年以上も昔、1990年代から、そのような「選択と集中」が世界の普通のパターンだ(日本企業を除けば)。航空機のメガサプライヤーはパソコン産業のEMSのような役割を果たしている訳だ。(注)

(注)EMSについては、拙著『走るアジア遅れる日本』日本評論社2001年参照。

100万点の部品点数が裾野産業の高度化を引き出す

 旅客機の部品点数は約100万点と言われる。中国C919の装備品国産化率は50%、日本三菱MRJは30%と言われる。この差は、日本には競争力がある旅客機の装備品メーカーが育っていないからのようだ。

 メガサプライヤー(ほとんど欧米企業)は、エンジン、制御系、電装系など、それぞれの得意分野に集中し、コストメリットを提供している。日本がここに新しく参入することは、技術的には可能でも、コスト的には難しいようだ。メガサプライヤー以外の日本企業から部品を調達すると採算が合わない。日の丸ジェットといっても、欧米から多くの部品を調達することになる(大和田崇氏の所説に負う)。

 中国は装備品の50%を国内で調達している。競争力ある装備品メーカーが国内に育っていることを意味する。ただし、分野別にみると、機体、主翼、尾翼等は純国産で、サプライヤーは国内企業である。しかし、エンジン、制御システム等の基幹部品は、外国の合作会社の米GE等の名前が書かれている。内外で技術格差があるようだ。しかし、やがてこれも、中国企業への技術ライセンス、合弁などの形態で、国産化されていくとみられている。

 部品点数の多さは、裾野産業の広さを意味する。また、航空機の部品は自動車以上に、安全・精密を要求される。中国で旅客機が量産されていけば、広大な産業分野で製造技術の高度化が進むことになる。C919 の成功は、中国の製造産業の高度化を引き起こすであろう。

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 
みんかぶマガジン> 全ての記事> その他> どうしたニッポン!再論 ―中国産業技術の高度化、日本の沈没―