どうしたニッポン!再論 ―中国産業技術の高度化、日本の沈没―

2、中国の国産飛行機C919の成功

 北京訪問中の5月5日、中国は一つの慶事があった。上海浦東空港で、中国の国産旅客機C919が初の試験飛行を実施し、成功した。C919は標準座席168席の中型旅客機で、すでに実用化している近距離向け旅客機ARJ21(90席、16年6月国内線運用開始)に続き、数年後の営業運航を目指している。C919 は中型機として、米ボーイング737や欧州エアバスA320の競合機である。既に570機の受注があり、半分は米国をはじめとした海外に輸出される予定である。数年以内に年間300機の生産を計画している。ただし、まだ欧米の型式証明は取れていない。

 一方、日本の国産旅客機は、三菱航空機㈱が国産初のジェット旅客機MRJ(70~90座席の小型機)を開発中だ。日米欧の航空会社など8社から447機受注している。問題は、欧米の型式証明が取れず設計変更が相次ぎ、初号機の納入が遅れていることだ。MRJの事業化が発表されたのは2008年、当時は13年に初号機を納入する計画だった。しかし、初号機は当初の13年から5回も延期され、いまは20年の予定である。

 日本の航空機産業の復活を託されて「国策」プロジェクトとして政府の支援を受けているが、なかなか成功しない。相次ぐ初号機の納入延期で威信は揺らいでいる。MRJの低燃費や居住性を評価する声もあるが、一方では、採算制等の観点から事業継続に疑問を呈する見方も出ている(例えば、中村智彦教授、毎日新聞5月12日付https://mainichi.jp/premier/business/articles/20170511/biz/00m/010/025000c、あるいはロイター4月18日配信http://jp.reuters.com/article/mrj-idJPKBN17J1OP参照)。

 5月9日、親会社の三菱重工業はMRJの機体組み立て従業員の削減方針を発表した。18年4月までに約570人減らす(全体の約2割、配置転換)。量産開始が先に延びているので、人員に余剰感が出ているためと見られている。一部には離陸できない危機を指摘する見方もある(例えば、ビジネスジャーナル編集部4月17日付http://biz-journal.jp/2017/04/post_18730.html)。

 いずれにせよ、日本の国産機開発は難航している。一方、三菱MRJの競争機種である中国の小型機ARJ21は既に開発を完了(14年12月)、16年6月には商業運転を開始している。約20の航空会社から300機以上受注している。中国は小型機のARJ21で日本より先行している。

バーリンフォー(80后)世代

 中国は、中型機でも試験飛行に成功した。C919は中国商用飛機公司(商飛)が開発を担っているが、商飛は国の資本に加え、軍用機の開発を手掛ける中国航空工業集団などが共同出資している。2008年設立の若い企業だ。C919の構造設計担当エンジニアは開発完了時点で33歳だった。商飛の従業員9600人の75%は1980年代以降生まれと言われる。

 「バーリンフォー」(80后)世代だ。中国の新人類と言われる1980年代生まれが中国航空機産業を担っている。80后は、大学の教育の質が劇的によくなったといわれる。また、社会に出るのは2000年代になってからであるが、中国の高度経済成長期に育ったのである。日本でも、高度成長期、工場建設に従事することが技術者を育てたといわれるが、中国も同じだ。市場の高成長が80后にチャンスを与え、市場が人材を育てた。中国はこの80后世代が2億人もいる。人材の層は厚い。

 もう一つ重要なことは、「坂の上の雲」を目指して育ったことから来る精神構造だ。日本人は明治維新から高度成長期1980年代まで100年余、「坂の上の雲」(司馬遼太郎)を目指して生きてきた。そういう時代の雰囲気の中で、気宇壮大な人材も生まれた。しかし、バブル崩壊後のゼロ成長時代に育った世代は、同じ日本人であってもかなり違うようだ。これに対し、中国のバーリンフォー(80后)は「坂の上の雲」を目指す社会で育った。この世代が中国社会の中核を担いつつある。しかも、2億人もいる。中国を理解するにあたって、この点を忘れてはいけない。

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