農業総合研究所 及川智正社長インタビュー

農業×ITベンチャーを展開
未来永劫、農業の無くならない仕組み作る

●及川智正氏
農業総合研究所  代表取締役社長

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 昨年6月に東証マザーズへ新規上場した農業総合研究所<3541.T>。「農業ベンチャー初の上場企業」である同社は、地方に多い農産物直売所を提携先の都会のスーパーに再現した「農家の直売所」を運営。ITを駆使し、新たな農産物流通市場を創造している。同社を創業した及川社長は「農業をありがとうと言われる産業にしたい」、「未来永劫、農業の無くならない仕組みを農家と一緒に作っていきたい」と述べ、農業を軸にした成長を目指している。

――まず、農業総合研究所の事業内容を教えてください

及川 9年前に現金50万円で設立したのが「農業総合研究所」です。学生時代から日本の農業に危機感を感じており、農業の生産と流通をコーディネートしないと、農業は良くならないと考えて会社を設立しました。それまでに会社員と農家、八百屋を経験しています。現在の主力事業は「農家の直売所」です。「道の駅」や「農産物直売所」は全国に2万カ所ぐらいありますが、地方にあるこのファーマーズ・マーケットを都会に持ってきてスーパーマーケットの中に、売り場を構えました。野菜でも果物でも、米、花でもジュースでも何でも自由に販売でき、農家は何をいくらでどのスーパーで売るかを自分で決めることができます。我々は、そのITと物流プラットフォームを農家とスーパーマーケットに提供しています。
 
 現在、約6000人の生産者が登録し、約900店舗のスーパーに導入しています。全国に61カ所の農産物を集める「集荷場」があるのですが、ここで集めた農産物を翌日の朝までに都会のスーパーに配送します。新鮮でおいしい野菜や果物を、安いコストで運べる物流システムが我々の強みのひとつです。また、農家と消費者が直接コミュニケーションできる仕組みも作っています。

――会社設立に至った経緯をもう少し詳しく教えてください

及川 私は東京の生まれで、東京農業大学に進学しました。卒論を書くにあたり農業のデータを集めると「農業は日本の国の礎」なのに自給率の低下や後継者不足など悪い話しか出てこない。これは誰かが、何かをしないといけないと考えました。しかし、卒業後は農業関係の仕事には就けず、ガスを扱う専門商社で6年、会社員をしました。ただ、農業の仕事をやりたいという気持ちは強く、結婚を機に私が「寿退社」で会社を辞め、妻の実家の和歌山で農家を始めました。

 そこで実際に農家を3年間やりました。しかし、農家をやって感じたことは、「誰が自分の作った農産物を食べてくれて、おいしいと思ったのか、まずいと思ったのかが分からない」「ありがとう、という言葉が聞こえてこない」ということでした。私が感じたことは、これから農業をやろうと考えている若い方も同様に感じるのではないでしょうか。2年目から独立して販売を行ったのですが、一農家が日本の農業を変えるのはハードルが高いと考え、その後、大阪で八百屋を1年間やりました。

――農業の生産と流通に携わったわけですね

及川 そうです。この経験から分かったことは、農作物は作るのもしんどいが、売るのもしんどいということでした。この生産と流通という「水」と「油」の関係のコーディネートは両方を経験した者でないと分からないと考え、農業の流通関係の仕事を探したのですが、そんな会社はなく、そこで自分で会社を設立したのです。会社を作って最初に手掛けたのは農家の営業代行コンサルティングでした。和歌山のみかんを営業代行して良く売れたのですが、目に見えないコンサルティング料は払ってもらえませんでした。仕方なく、例えばみかん50箱とかを現金代わりに譲り受けて、それを和歌山や大阪の駅前で売りました。こんなことをやっていると、「東京からきた兄さんはみかんを高く売ってくれる」と評判となりました。そんな頃、田舎には「道の駅」があるが、「土日でなければお客がこない」「車を持ってないと来づらい」という話を聞きました。そこで、農家の直売所を都会でできる仕組みはできないかと考えました。

――ようやく、農家の直売所のアイデアにたどりついたわけですね

及川 それからは、農家の直売所の実現に向け1人でスーパーや農家と交渉し農産物を集め、トラックを運転し運び、売れた後はひとつ一つメールで農家に連絡するという作業をこなしました。その過程で、ひとつ一つをIT化していきました。泥臭いことをIT化していったことが我々の強みだと思います

――当初から株式上場は考えていたのですか

及川 まったく、考えたことはなかったですね。起業したいという意識はなく、もちろん資金計画もありませんでした。VC(ベンチャーキャピタル)のことは「ビタミンC」と読んでいたくらいです。あったのは、流通を変えない限り、農業は良くならないという気持ちだけでした。日本の農業を変えるにはもっとスピード感をもってやらなくてはならない。1人でできることには限りがあるけれど、人間が1000人いれば、すごいスピードで物事が実現できる。今回の上場も、このためのものだと考えています。また、農業ベンチャーでも上場できる。農業も素敵な産業だとアピールしたい気持ちもありました。我々は、農家を助ける会社ではありません。食べる人がいて、彼らを幸せにするためにも、「未来永劫、日本から農業がなくならない仕組みを農家と一緒に作っていく」。これが当社の務めだと考えています。そのためにも、農業を「ありがとう」と言ってもらえる産業にしなければならないと思います。

――農業総合研究所の今後の展望は

及川 当社の事業で、いま一番喜ばれているのは農家の直売所です。まずは、ここを伸ばすつもりです。農家の直売所もスーパーに限らず、ドラッグストアやコンビニや、ホームセンターで展開するとか、やれることはたくさんあると思います。また、海外マーケットでの展開も考えたいですね。日本の農家の農産物が、例えば香港のスーパーで直売できれば、面白いでしょう。「農業」を縦軸のドメインとして、この深掘りをしていきたいと考えています。また、横軸には「委託販売」を置き、農薬や種、苗を農家に売ることができるかもしれませんし、外食事業なども可能かもしれません。当社のプラットフォームを活用することで、リアル店舗での販売が可能です。60歳までは力いっぱいやりたいと思います。

(聞き手・岡里英幸)

●及川智正(おいかわ・ともまさ)
1975年生まれ。97年に東京農業大学農学部農業経済学科卒業。同年、巴商会入社。2003年和歌山県で新規就農。ハウス施設できゅうり、トマト、青ネギ、米を栽培。06年エフ・アグリシステムズ株式会社関西支社長に就任。野菜ソムリエの店エフ千里中央店開設。07年農業総合研究所設立、代表取締役に就任。

●農業総合研究所
2007年に和歌山県で会社設立。全国の生産者および農産物直売所と提携し、地方の集荷場で集めた農産物を都会のスーパーマーケットで委託販売する「農家の直売所」を主力事業として展開。「Passion for Agriculture(農業に情熱を)」が合言葉。

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