世界同時好況相場が始まった、円高懸念霧消で日本株も合流へ

(2) 日本株乗り遅れの原因、円高懸念は行き過ぎ

そうした中で日本株だけは、日経平均株価がここ3か月間19,000~19,500円のレンジでもみ合い、と停滞している。その理由は、トランプ政権が再び日米摩擦を引き起こすのではないか、それによって不当な円高圧力がかかってくるのではないかという不安であろう(図表16,17)。しかし、ファンダメンタルズを見ても、米国景気は世界で最も良好で、中央銀行はすでに3度の利上げを実施するなど、金融を引き締め途上にあるわけで、明確にドル高環境だと言える。
 
zu16-17
  
 であれば、なぜトランプ政権はドル安を志向する必要があるのか、いくつかの仮説が考えられる。第一は、ドル安で米国の競争力を強め、貿易赤字を減らす狙いがある、という仮説であるが、それは経済学的には間違いである。貿易収支、対外収支は各国の投資と貯蓄のバランスによって決まるもので、為替では動かせない。この狙いはいずれ消えていくだろう。第二の仮説は、米国への工場誘致という狙いであるが、これも筋違いと言える。保護貿易を導入すれば、米国の貿易赤字が減るということをマーケットが先回りして織り込んで、むしろドル高になってしまう。国境税を導入してメキシコからの輸入品に20%の国境税をかければ、メキシコからの輸入品の価格競争力が低下すると考えられているが、為替市場では先回りしてドルが弱くなるどころかペソが弱くなり、かえって米国の対メキシコの価格競争力が低下するということが起こり得る。為替を動かすことにより、米国に工場を取り戻すという主張は経済の理屈に合わないので、失敗に終わるだろう。とすると、最後に米国が短期的にドル安を求める理由として相手国への脅し・ブラフ、という仮説が残る。相手国との通商取引で譲歩させる手段として為替を使って相手を脅すのである。これが現在のトランプ政権のドル安に対する発言で唯一の整合的な理解ではないか。であればあまり深刻に受ける必要はないだろう。

 それにしてもなぜ見え見えのブラフを為替で使う必要があるのかだが、それはトランプ政権が世界の通商の秩序を作り替えたいからであろう。日本、メキシコ、ドイツがやり玉に挙げられているが、敵は本能寺つまり中国である。中国は知的所有権のコピー、盗用などの不公正な手段により、著しく競争力を強め、米国の世界における覇権に挑戦しようとしている。中国の過剰なプレゼンスを抑えるために為替を使おうとしているのではないか。米国の対中貿易赤字は3500億ドルと半分を占めている。トランプ政権がしきりに批判しているドイツ、メキシコ、日本に対する赤字は中国の5分の1程度である。またアメリカの経常収支の赤字は最悪期であった2006年の5.7%から今や2.6%に改善している。米国全体としては貿易収支の問題は全く深刻ではないのである。

zu18-19
 
 国家通商会議ヘッドのピーター・ナヴァロ氏は、中国の過剰な経済プレゼンスが中国台頭の背景にあり、それは深刻な不公正さによって支えられているので、これを是正しない限り世界の秩序は維持できず、いずれは米国と中国は戦争せざるを得ないと主張している。戦争を回避するにはアメリカが中国の軍門に下るか、中国が軍事的に巨大化できないように経済的フリーライドを止めるか、この二つしかない。ナヴァロ氏は中国の経済的プレゼンスを抑えるよう為替を使おうと考えていると思われる。それには中国だけでなく、他の国もやり玉に挙げて公正さを装う必要がある。

 日本人は1980年代後半から貿易摩擦と円高で手痛い打撃を経験しているので、また同じことが起きるのではないかという不安に捕らわれているが、それは杞憂であり、1ドル110円を超える極端な円高は想定しがたい。また日本企業の輸出行動が大きく変化し、円高対応力が強まっていることも重要である。

 かつての円安場面(例えば図表20に見る2000年以降)では、円安下で日本企業はドル建て輸出価格の値下げ(=円建て価格維持)により、輸出数量の増加を追求した。しかし、最近の円安場面(図表21に見る2010年以降)では、日本企業はドル建て輸出価格維持(=円建て価格引き上げ)により価格効果を追求し、数量増加は起こっていない。つまり最近は価格競争ではなく相手国が作れない技術品質商品に特化しているので、円安になっても輸出数量は増えないが、価格効果を享受している、ということが起こっているのである。このことがより知られるようになれば、対日貿易摩擦の手段として為替を使うことが無意味であるとトランプ政権は理解する。それは為替市場での円高圧力を弱めるものとなるだろう。
 
zu20-21
  
 結論は、米国の対日批判は限定的であり、現在以上の円高圧力が考えにくいとすれば、出遅れている日本株は今後急速に出直る、と想定される。
 

1 2 3

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 
みんかぶマガジン> 全ての記事> 市場解説・相場展望> 世界同時好況相場が始まった、円高懸念霧消で日本株も合流へ