トランプ政権下の日本株投資戦略、壮大な上昇相場の始まりに

【5】ドル高でも米国の経常赤字が縮小する可能性

武者:米国のサービス収支と第1次所得収支の黒字を合計してみますと、2005年から2015年までの10年間、年率12.6%のペースで拡大してきました。このペースでの拡大が続き、貿易赤字が横ばいであれば、計算上はあと6年で米国の経常収支は黒字になります。

 レーガン政権の時と決定的に違うのは、今は最も成長している「第七大陸」で米国企業が独占的かつ圧倒的な産業競争力を持っているということで、これはドル高では揺るがないということです。ドル高によって、ドル以外の通貨で見れば「第七大陸」上のサービスの価格は上昇することになりますが、皆がこの値上がりを受け入れざるを得ないでしょう。

 米国の経常赤字が減るということは基軸通貨であるドルの供給が減るということですから、とてつもないドル高要因になります。したがって、こういった状況が続く限りドル安に転換することは無いでしょう。

 一方、米国がドル高になって困ることといえば、海外から安いものが入ってきて、あるいは輸出が減少して、米国の製造業がダメージを受けるということですが、既に米国は、必要なものは全部海外から買うようになっていますし、製造業での輸出産業の重要性は十分低下していますから、いまさら大きなダメージにはなり得ません。米国の輸入依存度を見ると、50年前は10%でしたが、今では80%以上になっているのです。ということは、ドルが強かろうが弱かろうが、それによって輸出・輸入が増減する余地はほとんど残っていないということです。
 
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 さらに言えば、ドル高で米国はもっと強くなる可能性があります。米国企業が海外で企業買収をするコストがどんどん安くなるわけですから、海外進出がもっと増えるでしょう。日本の優良企業も株価を上げなければどんどん買収されるかもしれません。また、米国は普段使うものを輸入に依存しているのですから、ドル高になれば物を安く買うことができるようになります。

 米国に製品を輸出している企業はドルでの輸出価格を変えない(輸出国通貨での価格を引き上げる)のではないかと思われるかもしれませんが、米国の輸入しているものの多くは競争の激しい製品です。例えば自動車は日本とドイツが競争していますし、衣料品だったら中国とベトナム、あるいはバングラデシュ辺りが競争していますから、結局、自国通貨で儲かった分は、ドル価格での値下げ競争に回さざるを得ないのです。そうすると、ドル高の歯止めはなくなります。こういったことに、ほとんどのエコノミストや経済学者は気が付いてないのです。

小祝:ドル高が相当長期間続くということになると、新興国経済へのネガティブな影響が気になります。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

武者:おっしゃるとおり、ドル高は新興国に大きなマイナスの影響を及ぼすことになります。まず、ドル建ての借入はその負担が大きくなることになりますから、これまでドル建ての借入を増やして、実力以上に経済規模を拡大してきた国は大変です。そのような国の代表が中国です。

 中国は、外貨準備高が多いからドル建て債務の返済に困ることはないと言っていますが、中国の対外債務は外貨準備高の1.4倍もあるのです。もちろん対外資産もありますから、それを返済に当てられればよいのですが、実は中国の対外資産は、直接投資や長期の貸付など流動化しにくいものが多い一方で、対外債務は比較的短期のものが多いと思われます。

 そうすると、ドル高が進むにつれ、ドルの借金を持っているのは危険だと言うことで、ドル建て借入金の返済が増加し、猛烈な資金流出が起きます。そうしてますます人民元が弱くなるという悪循環になっていくでしょう。ですから、長い目で見れば、中国経済の問題は相当深刻なものになる可能性があります。

 このように考えると、経済の主導権は中国を始めとした新興国から先進国に移っていくことは明らかだと思います。新興国の経済は基本的に労働集約型の製造業が中心ですが、そこで作られる製品は、代替可能で競争が激しいのです。近年の新興国の高い成長を見ると、何かすごいポテンシャルがあるのではないかと思われるかも知れませんが、実は、多くの新興国は誰でもできるものを、ただ安い労働力で作っていただけということです。

 そういう時代も、中国を始めとした新興国の人件費が上昇していることもあって転換点を迎えています。先進国は、米国が典型的ですが、例えばインターネットのインフラなどの分野は誰も真似できないですし、日本のロボットや自動車、ハイテク素材・部品・装置も、技術的には一歩抜きん出ていて、他は真似できない技術が多く蓄積されています。国際的な交易条件は、どんどん先進国有利になっていく時代に入ってきたと思います。

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