投資家との対話~会社の誰が担うのか

・投資家との対話は会社の誰が担当するのか。一義的にはIRの責任者であり、当然社長とCFOの仕事である。しかし、もっと広がりが欲しいと投資家は思う。会社の執行担当役員は各々の役割を担って、企業価値の向上に取り組んでいるはずである。そのマネジメントに話を聞きたいと考えるのは当然であろう。

・会社サイドからみると、こうした投資家の要求はどう受け止められるのだろうか。投資家はうるさいな。そんなことに時間を費やすヒマはない。自分の仕事を全うするのが本来の筋である。IR部門が責任を持ってまとめて対応すればよいという考えの会社は多い。

・対話をして、投資家の声をマネジメントにフィードバックするのは重要であるが、IRの責任者からマネジメントに伝えるだけでは、臨場感を持って伝わることにならず、具体的なアクションに結びつかない場合も多い。社長やCFOが投資家の声に接しても、それを現場に伝えていくという点でギャップを抱えている。

・投資家といっても多様である。機関投資家が対話の主軸であるが、その機関投資家も投資哲学や投資スタイルによって言動が異なる。国内と海外でも違いは大きい。現在、対話というと機関投資家中心である。大手上場企業にとって議決権の鍵を握っているのは機関投資家であるから、彼らを重視するのは当然である。

・一方、個人投資家はどうであろうか。個人投資家が減って、外人投資家の比率が上がり過ぎている大手企業もある。中小型の企業にとっては、オーナーの持株比率を除くと個人投資家が中心である。個人投資家中心から早く機関投資家に株主になってもらえるように、企業の成長を加速させたいと願っている企業も多い。

・では、個人投資家との対話はどのように行うのか。大企業からは砂上に水を撒くようで、効果が全くわからないという声も聞こえてくる。本当だろうか。個人投資家への対応、対話という点ではこれから相当工夫をして、力を入れていく必要があろう。

・日立製作所の溝口健一郎氏(ブランド・コミュニケーション本部長)の話を聴く機会があった。企業の各事業を担当するマネジメントの責任者が投資家とどのように対話するのか、という点で大いに参考になる。IR DAYを設けて、事業部門のトップが機関投資家と対話を行う。

・こうしたスタイルは、ソニーなど他社でも行われているが、効果的な方法であろう。従来なら投資家の前に出てこないマネジメントの話を一同に揃って聴ける。マネジメントサイドも投資家との対話で何らかのコミットメントを実感せざるを得ない。それがPDCAを回してマネジメントに活かされるのであれば、企業価値向上にはプラスに働こう。

・日立のIR DAYは、年に1回、14事業のトップが投資家にプレゼンする。9時から17時までの1日がかりである。会場には200名近い投資家・アナリスト、100名強のマスコミ関係者がくる。ネットでの配信ではリアルタイムで4000人がみている。後の動画配信では、累計2.1万人が見たという。会社の実態を知るという点で、大いに役立っている。

・社長以下プレゼンを行った20人のマネジメントに対して、予め指名し依頼しておいたアナリスト(20人)に評点をつけてもらう。1~5点の評点と具体的なコメントである。平均点でみると、3点を下回るところから4点を上回るところまで、それなりにバラつきがでる。20人に聞くと、アナリスト間の個人差があるとしても、平均値が一定の意味を持って参考になるという。これがフィードバックされ、マネジメントに活かされる。

・溝口本部長は、次の施策として、1)非財務情報を企業価値向上へよりビルトインする、2)フェアデイズクローズを徹底しつつ、普段からホットな情熱を発信する、3)情報にはいつでもアクセスできるように、スマホでも見聞できるようにする、4)情報のやりとり、Q&Aにフレキシブルに対応する、5)情報のフィードバックを一層マネジメントに活かすようにする、という点を強調する。

・日立はIoT、AI、BD(ビックデータ)をリード役して、社会イノベーション事業を推進していく。投資家との対話においても、IoT、AI、BDを大いに活用して、新しいプラットフォームを築いてほしい。それも活かしつつ、世界で優位に戦えるトップクラスの企業にのし上がっていくことを期待したい。
 

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