2017年情勢の基軸、強い米国経済、強い大統領、強いドル

 図表3は米国製造業製品の輸出比率(財輸出額/製造業付加価値額)、及び輸入依存度(財内需額/輸入比率)を示したものであるが、1970年ごろまでそれぞれ10%台であったものが、今日では80%前後に上昇していることがわかる。つまり40年前はほぼ自給自足であった米国経済が今は完全に国際分業依存に代わってしまっており、それは不可逆的であるといえる。この相互依存貿易の中で、米国企業はより高付加価値の非価格競争分野、ネット・金融などのプラットフォームビジネスなどに特化しているのである。多くの供給国が競う低付加価値かつ労働集約的部門を他国から買い、独占的高付加価値品を他国に売る。この産業構造にとって自国通貨高が有利であることは言を俟たない。
 
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トランプ氏がドル安論者だという誤解

 強いドルのデメリットは米国にとっては小さい。価格競争をしている品目が少ないので競争力低下が限定的である。よく海外利益のドル換算額減少が指摘されるが、それは基本的には値上げで対処可能であろう。卑近な例で恐縮だが、たとえばWSJ紙の販売価格は円建てで値上げされている。当社が払った年間購読料は2012年9万4500円から2013年11万2800円、2014年12万9600円と値上げされたが、それは円ドルレートと連動している。つまり2013年19%値上げ、円ドルは18%下落、2014年は14%値上げ、円ドルは8%下落となっている。

 またトランプ氏の為替スタンスが誤解されていると思われる。中国を為替操作国に認定する等の対中批判、NAFTA批判、TPP批判などの保護貿易的傾向からドル安論者と見られがちだが、それは彼の主張するポリシーミックスとは整合的でなく、結局ドル高を容認せざるを得ないだろう。金融引き締め、財政出動、加えて軍拡の経済+地政学ポリシーミックスはレーガノミクスと相似形であり、それはドル高を再現させる。レーガン時代のドル高は極端であった。1978年のドルボトムから1985年プラザ合意までの7年間で実質実効ドルレートは5割上昇したが、当時米国当局は華麗なる無視(benign neglect)を決め込んだ。しかしレーガノミクス下のドル高は米国企業の競争力を大きく低下させ貿易赤字が急拡大、財政赤字とともに双子の赤字が政治問題となり、1985年のプラザ合意によるドル高修正でトレンドは大転換した。今日とレーガン時代との相違点は、前述のとおり高付加価値分野の一部が米国企業のグローバル独占によって不完全競争状態になっており、ドル高でも米国の対外赤字が増加しにくい(マンデルフレミングモデルが働かない)と想定されることである。それはよりドル高圧力を一層強めることになる。

中国危機封印のためのドル安は終わった

 なおここで付言しておくと、2016年のドル安は米国経済のファンダメンタルズの弱さを反映したものでは無く、一過性のものであった。それは1998年のルーブル危機対応の米金融緩和・ドル流動性供給によってもたらされた一過性のドル安と類似している。2016年のドル安は新興国、特に中国危機に対応するものであった。ルーブル危機の時には、危機が鎮静化した1999年以降、米国は利上げを再開しドル高トレンドが復元された。今回も中国の景気底割れ回避策と資本規制強化により中国通貨危機は当分封印されたとみられるので、ドル高トレンドが復元されつつあると解釈される。
 
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