統合報告に学ぶ~エーザイのケース

・統合報告とは何か。その形をケーススタディとして学ぶには、医薬品会社エーザイのレポートが優れている。というのは、1)IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワークをそのまま使っており、2)価値創造の流れを、BSC(バランス・スコアカード)の視点で把握し、3)エーザイの企業理念「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)」が通常のCSR、CSV(Creating Shared Value)といかに違うかを明示し、4)中長期的なROE経営についてエクイティ・スプレッドを用いて明解に説明しているからである。

・IIRCのフレームワークによれば、企業価値は、①知的資本、②人的資本、③製造資本、④社会関係資本、⑤自然資本、⑥財務資本の6つの資本(キャピタル)を活用して創出され、それが蓄積されていく。この価値創造のプロセスがビジネスモデル(BM)であり、それを通してキャピタルが増減する。

・価値創造の流れ(フロー)については、従来から社内で用いていたBSCの4つの視点、すなわち1)学習と成長の視点、2)顧客の視点、3)内部ビジネス・プロセスの視点、4)財務の視点から捉えている。

・6つの資本の中では、医薬品開発のパイプライン(R&D)、イノベーションへの人材、ステークホルダーとの信頼関係、環境資源とのやりとりなどを重視する。また、BSCの活用では、社員の能力開発、患者満足度の向上のための行動、BMの優位性の創出、株主視点の財務戦略などの実行をかかげる。

・価値創造におけるプロセスについては、マテリアリティ(重要課題)を特定し、その優先順位をマテリアリティ・マトリックス(縦軸:長期投資家にとっての関心の度合い、横軸:エーザイの事業へのインパクトの度合)にまとめた上で、それを各ページで説明している。

・エーザイの企業理念HHC(ヒューマン・ヘルスケア)は何が違うか。1)社会貢献活動を中心にしたCSRではなく、2)社会的価値と経済的価値を同時に実現するというCSVとも異なり、3)患者満足という社会的価値創造を唯一の目的として、その結果として、経済的価値を創出されることを目指している。

・2025年度までの中期10カ年計画(EWAY2025)を立てているが、内藤CEOは、その根本として、①患者ニーズへの動機付け、②フロントランナーとなる立地(領域)、③中心的役割(センターライン)を果たすインべーションの遂行を掲げている。

・アルツハイマーなどのニューロロジー(アイバン・チャン常務)、がんなどのオンコロジー(井池常務)を集中すべき領域として、この2つのビジネスグループに各々プレジデント(両常務)をおいて、事業全体の推進を任せている。アイバン・チャン氏は内藤CEO(三代目)の娘婿である。

・財務的には、2020年度に営業利益で現在の2倍以上(2016年度見直し537億円)、ROE 10%以上、エクイティ・スプレッド 2%以上、DOE(株主資本配当率)8%をターゲットとする。そして、2025年度にはROE 15%を目指す。

・エーザイの財務戦略では、1)ROEマネジメント、2)投資採択基準、3)配当方針を明確にしている。ROEマネジメントでは、中長期的にグローバル水準のROE およびエクイティ・スプレッド(ROE-株主資本コスト8%)を目指す。投資採択基準(VCIC:Value-Creative Investment Criteria)は、リスク調整後のリターン基準を用いて、それを上回る時にのみ投資を実行する。配当は、150円の維持をベースにして、DOE 8%を指標とする。2016年度の予想ベースでみるとROEは7.5%レベルで、EPSが144.4円なので配当性向は100%を超え、株価7000円として配当利回は2.1%である。

・コーポレートガバナンス(CG)では、10年以上前の2004年から指名委員会等設置会社に移行しており、先進的に運営されている。取締役11人中、社外が7名(女性1名、外国人1名)であり、マネジメント報酬に関する業績連動性、取締役会の実行性評価についてもきちんと明示している。

・エーザイは内藤CEOのもとで、長年グローバルスタンダードの経営を推進してきたので、その仕組み、アカウンタビリティは明快である。2016年の統合報告書も教科書的手本として実に分かり易くよくできている。

・あえてもう一段のレベルアップを求めるならば、1)通常の説明ではなく、価値創造プロセスの実態に迫って表現してほしい、2)業界、競争優位、BMの戦略的遂行について突っ込んでほしい、3)マテリアティ分析が価値創造のプロセスにいかに結びついているか、このコネクティビティをもう少しはっきりさせてほしいと感じた。そうすれば、経営の実態が臨場感を持って伝わるようになろう。是非、統合報告説明会で一段と理解を深めたいと思う。
 

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