良いアクティブ運用とは?

本当のリスクを計測していないトラッキングエラー

 はじめに述べたように対ベンチマーク運用が全盛期であった時代は、アクティブリターンをトラッキングエラーで割った値で運用の良し悪しを評価していました。アクティブリターンは大きい方が、トラッキングエラーは小さい方が良かったのです。

 先に述べたようにハイリーアクティブ運用はベンチマークに比べて小さい触れ幅になることが多いです。しかしながら、図6に示すように、触れ幅の大きいベンチマークに対しての触れ幅であるトラッキングエラーは大きくなってしまいます。
 
zu6
 

 一方、ベンチマークと同じように大きく振り回される対ベンチマーク運用のトラッキングエラーは小さくなります。需給などにベンチマークと同じように振り回される対ベンチマーク運用のほうが、トラッキングエラーが低く、リスクが低いとみなされ、需給などに振り回されにくいハイリーアクティブ運用の方が、リスクが高いとみなされるという、不思議な評価がなされていました。

対ベンチマーク運用では避けられない悪循環

 さらに、この評価値は、図7のような避けられない悪循環を生み出します。すなわち、アクティブリターンが低下すると、リターン向上は一朝一夕ではできないため、すぐにできるベンチマークへ近づけてトラッキングエラーを減らし、評価値の向上を目指してしまいます。アクティブシェアが低下しベンチマークに近づいた結果、ますますアクティブリターンの向上が困難になり、ますます評価値の低下を招いてしまいます。
 
zu7
 

 そして、最後にはベンチマークと全く同じ運用を行うパッシブ運用とほとんど変わらない隠れパッシブという最悪の運用となってしまいます。この悪循環は、対ベンチマーク運用では避けられません。

改めて良いアクティブ運用とは?

 はじめに述べたように過去の運用成績よりもベンチマークからの乖離度合いを示すアクティブシェアの方が将来の運用成績を予測できます。これは、最悪である隠れパッシブを取り除くだけで良いアクティブ運用を選べる可能性が格段に高まることを示しています。確かに、アクティブシェアが高いからといって良いアクティブ運用とは限りません。徹底した企業調査をしたうえで、ハイリーアクティブ運用をしていることが大事です。

 そして、実態価値の成長への投資を実践していればしているほど、短期的なアンダーパフォームから逃げずにしっかりと良い銘柄を持ち続けます。場合によっては1~2年ほど信念を持って、持ち続けることもあるでしょう。なので、短期的にベンチマークに対してアウトパフォームしているかどうかは、良いアクティブ運用と関係ないといえます。

 対ベンチマーク運用の全盛期が到来したとき、企業調査を徹底していなかったファンドの中には対ベンチマーク運用へ逃げたものもありました。そして、ハイリーアクティブ運用の時代が来た数年前にハイリーアクティブ運用に戻ってきたファンドもあるでしょう(*5)。一方で、2000年~2010年ごろの対ベンチマーク運用全盛期時代もベンチマークに逃げず、1990年台から現在に至るまでずっとハイリーアクティブ運用を一貫して継続しているものは、良いアクティブ運用といえるのではないでしょうか?

(*1) 実際この時期には、例えば以下の資料のように、アクティブリターン/トラッキングエラーを大きくすることがアクティブ運用の目的であると述べられることが多かったです。(以下の資料ではトラッキングエラーのことをアクティブリスクと表記)
投資スタイルとベンチマーク,野村證券金融工学研究センター,2005年
http://www.fe-nomura.kier.kyoto-u.ac.jp/katou/05.05.17.pdf
(*2) Cremers, KJ Martijn and Petajisto, Antti, ”How active is your fund manager? A newmeasure that predicts performance”, Review of Financial Studies, vol. 22, no. 9, p.3329-3365,2009.
http://rfs.oxfordjournals.org/content/22/9/3329.short
また、この研究が与えた影響について「まいこばなし」第101号(2014年10月31日)で述べられています。
https://www.sparx.co.jp/report/uploads/pdf/maiko101.pdf
(*3) アクティブシェア=(保有ウエイト-ベンチマークウエイト)の絶対値の合計/2
(*4) 國島佳恵、篠潤之介、今久保圭「わが国資産運用ビジネスの新潮流―「貯蓄から投資へ」の推進に向けて―」日銀レビュー,2016年9月
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/rev16j16.htm/
(*5) 以下の論文では、実際に対ベンチマーク運用全盛期のみアクティブシェアが低かったファンドの一例を示しています。
Petajisto, Antti,”Active Share and Mutual Fund Performance”, Financial Analysts Journal, vol.69 no. 4, p.73-93, 2013.
http://www.cfapubs.org/doi/pdf/10.2469/faj.v69.n4.7

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。

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