S&P500月例レポート(2016年10月配信)

 その他のニュースとしては、ドイツで行われた地方選挙でメルケル首相率いる与党が敗北し、同国の政治的変化が続いていることが示唆されました。州議会選挙で与党が敗北したのはこの2カ月で2回目となりました。サウジアラビア政府は、石油収入への圧力が続いていることを受け、総額690億ドルに上る投資プロジェクトを見直して200億ドルの削減を検討していると報じられました。米国議会では多くのCEOが公聴会で証言しました。Wells Fargo(WFC、同12.8%安)のCEOは顧客に無断で口座を開設した問題で厳しく非難され(元行員が同社に対して26億ドルの損害賠償をめぐる集団訴訟を起こしています)、Mylan(MYL、同10.0%高)のCEOもEpiPenの価格設定をめぐり追求を受けました。米司法省はDeutsche Bank(DB、同11.3%安)に対し、モーゲージ担保証券(MBS)をめぐる140億ドルの和解金を求めています(ドイツ政府は同行への支援を行わないと表明しました)。その後の情報では、司法省は当初報道の半分以下の金額で和解に応じたとみられています。シリアでは米国とロシアが仲介した停戦合意が発効し、さまざまな結果が現れています。国際エネルギー機関(IEA)は月次報告で世界石油需要見通しを下方修正し、2016年は日量10万バレル引き下げて前年比同130万バレル増に、2017年についても同20万バレル引き下げて同120万バレル増(2016年を下回る)としました。米国の2015年の家計所得は前年比で2007年以来の上昇となる5.2%増となりましたが、中央値(5万6,500ドル)は依然として2007年実績(インフレ調整後)を1.6%下回っています。宅配大手FedEx(FDX、同9.8%高)は、航空貨物運賃を平均3.9%、陸上運賃を4.9%値上げすると発表しました。同業のUPS(UPS、同5.9%高)も4.9%の運賃値上げを発表しています。イタリアは、「政治の安定」を目的とした憲法改正を問う国民投票が12月4日にが12月4日に実施されることが決まりましたが、レンツィ首相は国民投票で否決されたら辞任すると表明しました。米国大統領選挙では、3回行われる討論会の1回目(2回目は10月9日、3回目は10月19日、副大統領候補者による討論会は10月4日、投票日は11月8日)が行われ、民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補が対決しましたが、これまでのアプローチと大きな変化はなく、互いの攻撃やデータが示すものとは異なる事実の応酬が行われ、自分こそが国民を救うことができるとの信念の訴えが繰り広げられました。米議会では12月9日までの政府予算を確保する暫定予算案が可決されましたが、期限後の予算については11月8日の選挙で選出される新たな議会で審議されることになります。米国議会はまた、2011年の9.11同時多発テロに関連して犠牲者遺族がサウジアラビア政府を提訴することを認める法案を可決しました。本法案では、オバマ政権下で大統領の拒否権が初めて覆されました。9月28日には、世界の産油量の40%を占めるOPECが減産する見通しであるとの報道を受け、石油およびエネルギー関連銘柄の株価が急騰(いずれも4%以上上昇)しました。しかし、今回の合意は、原油価格を下支えする方法について11月の次回OPEC会合で協議することで合意したにすぎません。それまでに、サウジアラビアとイランは生産量をめぐっての交渉をまとめる必要があります。Harvard University基金は2016年6月までの1年間で2.0%減(2009年以来の低パフォーマンス)の357億ドルとなり、同期間のS&P500のトータルリターンである4.0%を大きく下回りました。それでも、2.0%減は大学基金の平均(2.7%減)よりは高いパフォーマンスですが、大学以外の人材を招く潮時ではないでしょうか。

 利回り、金利、コモディティは引き続き活発な動きを見せました。米国10年国債の利回りは8月末の1.58%から上昇(価格は下落)して1.60%で9月の取引を終えました(2015年末は2.27%、2014年末は2.17%)。30年国債の利回りは2.32%と、8月末の2.23%から上昇しました(同3.02%、同2.75%)。外国為替市場は活発な動きを見せ、ユーロは8月末の1ユーロ=1.1159ドルから1.1240ドルに上昇して9月を終えました(2015年末は1.0861ドル)。英ポンドは8月末の1ポンド=1.3143ドルから9月末は1.2976ドルに下落しました(同1.4776ドル)。円はドルに対して8月末の103.31円から上昇して101.34円で月を終えました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して8月末の6.6791元から9月末は6.6711元に上昇しました(同6.4931元)。金価格は8月末の1,312.00ドルから9月末は1,318.80ドルに上昇しました(2015年末は1,060.50ドル、2014年末は1,183.20ドル)。原油価格は足元の需給状況やOPECによる増産凍結観測を受けて大きく変動しましたが、最終的には8月末の1バレル44.82ドルから48.05ドルに上昇して9月を終えました(同37.04ドル、同53.27ドル)。米国内のガソリン価格はわずかに下落し、8月末の1ガロン2.237ドルから9月末は2.224ドルに下落して月の取引を終えました(同2.034ドル、同2.299ドル)。VIX恐怖指数は8月末の13.42から9月末は13.29に低下しました(2015年末は18.21)。

 9月は年間で最もパフォーマンスが低調な月ですが、今年のS&P500は経済面、金融面、政治面でのイベントの影響で激しく変動しました。しかし、少なくともVIX指数を見る限り「市場に恐怖感はなく」、同指数は月内に一時18.14まで上昇しましたが、最終的には8月末の13.42からわずかに低下して13.29で9月を終え、月間平均でも14.18でした。投資家が乱高下に慣れたのか、それとも夏の薄商いから目が覚めていないだけなのかは分かりませんが、いずれにしても、市場は10月の「惨敗相場」を前に9月を乗り切りました。

 9月のS&P500は0.1234%下落し、5カ月続いた上昇(累計で12.49%上昇)から8月の0.1219%下落に続いて2カ月連続の下落となりました(配当込みのトータルリターンはプラス0.2%)。年初来では6.08%(同7.84%)、年換算では8.18%(同10.57%)上昇となっており、足元のリターンに市場は概ね満足していると思われます(第4四半期を残すのみと考えるとなおさらです)。同指数は8月末の2,170.95ポイント、7月末の2,173.30ポイントから下落して2,168.27ポイントで9月の取引を終えましたが、昨年末の2,043.94ポイントは依然として上回っています。これは、8月15日に付けた終値での過去最高値2,190.15ポイントを1.00%下回る水準です(ウォール街は夢の街なのです)。

 9月は、11セクター中(9月に不動産セクターが11番目のセクターとして追加されました)で月間騰落率がプラスとなったのはわずか3セクターにとどまり、8月の4セクター、7月の7セクターを下回りました。エネルギーセクターは2.95%上昇して月間騰落率がトップとなりました。9月末にアルジェリアで開かれたOPEC会合で、11月のウィーンでの次回会合で最終合意をまとめることで合意したことが減産への第一歩と捉えられました。同セクターの年初来リターンは16.04%で、これも全セクターの中で最高のパフォーマンスですが、2014年末の終値と比べると依然として11.25%安の水準にあり、セクターとして最も低いパフォーマンスです。情報技術セクターも好調で、9月は2.40%上昇、第3四半期ではS&P500の3.31%上昇に対して12.44%という力強い上昇となりました。年初来リターンは11.12%となりました。8月の月間騰落率が3.57%でトップだった金融セクターは、世界的な銀行問題が浮上したことで9月は2.87%下落し、最も低いセクターパフォーマンスとなりました。年初来リターンはマイナス0.28%となり、セクターとしては唯一のマイナスとなりました。新たに設定された不動産セクターは9月に1.18%下落しましたが、年初来では5.57%とプラスのリターンを維持しています。

 9月は値上がり銘柄より値下がり銘柄の方が多く(8月に続き)、S&P500構成企業のうち、値上がりは233銘柄(平均上昇率は3.61%)と8月の243銘柄から減少し、一方で値下がり銘柄は270銘柄(平均下落率は3.35%)と8月の262銘柄から増加しました。10%以上上昇した銘柄が12銘柄だった一方(平均上昇率は15.40%、8月は31銘柄)、10銘柄が10%以上下落しました(平均下落率は13.52%、8月は19銘柄)。また、2銘柄が25%以上の上昇を記録した一方(8月は1銘柄)、25%以上下落した銘柄はありませんでした(7月と8月もゼロ)。年初来でみると、差は縮小していますが、依然として値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回っています。値上りした銘柄は341銘柄で(8月は355銘柄)、229銘柄が10%以上上昇している一方(同242銘柄)、値下がりした銘柄は162銘柄(同148銘柄)、うち70銘柄が10%以上下落しています(同64銘柄から増加)。

 9月に続き10月もイベントが多く、S&P500構成企業の70%以上が第3四半期決算、第4四半期の最新見通し、2017年に向けた事業計画(および業績予想)の概要を発表する見通しです。さらに政治も盛り上がりに花を添え、11月8日の投票日を前に選挙キャンペーンは最高潮に達するでしょう。選挙では大統領だけでなく、下院議員と一部の上院議員も選出されます。選挙見通しが変われば市場は即座に反応し、投資先の見直しが行われるとみられます。

 S&Pダウ・ジョーンズは9月にS&P500構成銘柄を6銘柄変更しました。美容製品メーカーのCoty(COTY)、医療用レンズを手掛けるCooper Companies(COO)、精密医療機器を製造するMettler-Toled○International(MTD)を組み入れた一方で、海洋掘削企業のDiamond Offshore Drilling(DO)、ビル管理システム大手のJohnson Controls(JCI、旧Johnson ControlsはTyc○International(TYC)に買収され、Johnson Controlsが新社名となった)、ホテルチェーン大手のStarwood Hotels & Resorts Worldwide(HOT)を同指数から除外しました。

 
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